ニュートン、ダーウィンをはじめ、世界が認める理系の功績を生み出してきたケンブリッジの研究環境
オックスブリッジの社会的意義Ⅰ
篠原肇(しのはらはじめ)
1988年兵庫県生まれ。明治大学付属中野高校、慶應義塾大学理工学部・修士卒。修士在学中、ITPプログラム(日本学術振興会)の支援を受け、ケンブリッジ大学へ夏期研究留学。同大学キャベンディッシュ研究所博士課程入学、同在学中。カレッジはジーザスカレッジ。専攻は実験系材料物理学・化学。Winton Programmeに日本人で史上初めて採用され、ウィントン特待生として持続可能エネルギー問題にも取り組む。これまでに大学バスケットボール部・アルティメット部・コーフボール部に所属。日本人会(十色会)2013年度会長。

今週と来週の二週にわたって、「オックスブリッジの社会的意義」と題して、オックスブリッジが社会に貢献してきた実例をお届けする。

世の中に溢れるオックスブリッジの功績

オックスフォードとケンブリッジは、お互いをThe other placeと呼んでいることからもわかるように、切っても切れない関係にある。決して仲が悪いわけではなく、両校は毎年行われるオックスフォード・ケンブリッジ定期戦であるVarsity Matchを中心に交流が盛んである。人材もお互いに行き来しており、両方を卒業している人も珍しくない。両校は強いライバル関係にありながらも、800年の歴史の中で互いに切磋琢磨し、高みを求めてきた。その結果、現在までに他分野に渡り、数え切れないほどの功績を残してきた。哲学や童話から、生物の起源、最新のテクノロジーに至るまで、オックスブリッジ発祥のものが実は世の中に溢れている。

『ALSアイス・バケット・チャレンジ』でも話題になったALS(筋萎縮性側索硬化症)を学生時代からわずらっていながら、70歳を越えた今でも現役で研究をしている宇宙物理学者のスティーブン・ホーキング氏は、オックスフォード大学の学部出身で、大学院はケンブリッジ大学。現在はケンブリッジ大学教授である。本人もキャンペーンに参加していた。

現在でも大学の施設内を電動車いすで移動している様子を見かけることもある。彼の功績である宇宙の研究や彼自身については、これまでも映画化されてきた。彼の半生を描いた映画 "The Theory of Everything"も11月に全米で公開されたばかりである(日本では2015年上半期公開予定)。本映画の撮影風景も、筆者にとっては日常の風景であるケンブリッジの街中で何度か目にした。

私たちにより身近なもので言えば、ディズニー作品としても有名な『不思議の国のアリス』の著者であるルイス・キャロル氏は、オックスフォード大学クライストチャーチカレッジ出身で、かつ数学の教師として教鞭をとっていた。彼が見て、特徴的なキャラクターであるチェシャ猫を思いついたといわれている大木が、今でも残っている。このカレッジの食堂は、映画ハリーポッターのメインの舞台となった『ホグワーツ魔法学校』の食事会場の撮影モデルとなっている。その他にもオックスフォードには文学作品の舞台となった場所が多く残っており、街中を歩くだけで物語の中に入ったような気分に浸ることが出来る。

オックスフォード大学クライストチャーチ、グレートホール。映画ハリーポッターの撮影も本ダイニングをモデルとしている。向かって手前側の長いテーブルには学生が、奥側の一段高くなっているハイテーブルと呼ばれるエリアには一般的にはフェローや教員が着席する。By chensiyuan via Wikipedia

一般的に「研究」というと、物理学や化学、生物学などいわゆる「理系」のものを連想することが多いであろう。傾向として、オックスブリッジの中でもオックスフォード大学は文系、ケンブリッジ大学は理系に強いことが知られている。主に理系の研究の功績を称えるノーベル賞数は、オックスフォード大学よりもケンブリッジ大学の方が多い。ケンブリッジの強みである理系の主な功績について詳細に見ていきたい。