サッカー
二宮寿朗「遠藤保仁が貫くマイペース」

「アジア(AFC年間最優秀選手)でも、今年はJ2(J2 Most Exciting Player)でもMVPを取ることができたし、あとは……。コンプリートできたらいいですね」
 これは昨年のJリーグアウォーズで遠藤保仁が語った言葉である。ガンバ大阪を1年でJ2からJ1に引き上げた彼は、2014年のJ1MVP獲りに意欲を見せていた。意外や意外、日本代表歴代最多の148キャップを誇り、Jリーガーとして3度W杯に参加した遠藤だが、J1でのMVP受賞は一度もない。だが、今年は意欲を示したMVP獲りに一気に近づこうとしている。

“鉄人”がこだわる時間の使い方

 ガンバ大阪はJ1復帰1年目の今季、ブラジルW杯の中断時点(第14節終了)でJ2降格圏内の16位に沈んでいた。しかしJリーグ再開以降は白星を順調に積み上げていき、現在では2位にまで浮上。11月22日には、勝てば優勝の浦和レッズをアウェーで撃破し、勝ち点2差に肉薄したのだ。第15節から14勝2分け2敗のハイペース。残り2試合、レッズ有利の状況に変わりはないとはいえ、このガンバの勢いは「ひょっとして」の雰囲気を漂わせている。8日にはヤマザキナビスコカップを制し、天皇杯も4強に残っている(26日に清水エスパルスと準決勝)。この“後半戦の主役”ガンバをけん引しているのがキャプテンの遠藤なのである。

 彼には鉄人という言葉がふさわしい。
 34歳の遠藤は、リーグ戦ここまで32試合すべてに出場。ガンバのフィールドプレーヤーではただ一人で、途中交代も終了間際に退いた2試合のみだ。優勝を誓ったブラジルW杯では“スーパーサブ”の起用で不完全燃焼のようにも見えたが、モチベーションを落とすことなくJリーグの戦いに臨んでいる。

 遠藤は技術、戦術眼という武器を、何故こうもコンスタントに発揮できるのか。
 彼は物事に一喜一憂することなく、好不調の波があっても「小さい幅」にとどめている。つまりマイペースを決して崩さないことが、パフォーマンス維持の大きな要因にある。

 昨年、J2でプレーした時もそうだった。
 戦うステージのレベルが落ちることで、ザックジャパンの中核を担う遠藤のプレーに影響が出ることも懸念されていた。W杯に向けて海外組が欧州のリーグでレベルアップを図ろうとする一方で、自分は国内の2部でレベルを引き上げていかなければならなかった。だが本人はまったくそのことを気にしていなかった。J2時代の2013年にインタビューした際、彼はこのように言っている。

「J2で戦ったこともなかったし、時には遠回りしたっていいとも僕は思っていますから。
 個人のレベルはもちろんJ1のほうが高いし、J2は単純なミスも多いです。それに慣れたらダメだし、判断のスピードを落としてしまうこともしてはいけない。でもこういうのは、意識の問題じゃないかな、と。
 試合はACLもないし、ナビスコ杯もないからほぼ週1ペース。つまり練習時間のほうがはるかに長い。そこをいかに大切にするかだし、自分の時間がすごく増えるわけです。今までJ1の日程ではやれなかったことをやろうって思いました」
「J2」はあくまで外的要因であり、どんな環境にあろうとも自分次第でどうにでもなる――。筆者にはそう聞こえた。

 空いた時間を下半身強化に充てた。筋トレを精力的にこなし、スピードと耐久力をつける。体幹バランスも一から見直した。
遠藤はこうも語っている。
「時間の使い方という意味では、自分の弱い部分をいかに見つめられるかだと個人的には思うんです。強い部分というのは自分で勝手に気づくものだけど、弱い部分は目をそむけがち。それに自分が見るのと周りが見るのとでは違うところもある。だから僕の場合はフィジカルコーチに僕が見た弱い部分を言った上で、『このへんもこうしたほうがいい』とアドバイスをもらって、自分と外の目を照らし合わせるようにしているんです」
 1年間、弱い部分にフォーカスして取り組んできたことが、2014年に入って成果として表れているのである。