読書人の雑誌『本』より
2014年11月29日(土) 室伏謙一

野党の役割をかなぐり捨てていいのか---『仮面の改革派・渡辺喜美』著・室伏謙一

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先月出版した『仮面の改革派・渡辺喜美』を執筆した目的は、みんなの党や渡辺前代表については、憶測や断片的な情報に基づいて語られることが多いが、渡辺前代表に仕えた政策担当秘書として見聞した事実、自ら考えたこと等を、有権者や改革を考える議員達、政治の世界を目指している人々に詳らかに伝えることで、より適切な判断をして欲しいということである。

本書については、8億円借入問題に関し、特捜部による複数の関係者からの任意の事情聴取が行われたとの報道や、みんなの党の分裂の危機に関する報道と相俟って、また「仮面の改革派」という題名も影響したのか、刊行が公になると、「暴露本」であるとの誤った情報が流れた。

刊行後、そうした認識は消えていると思うが、念のため解説しておくと、本書は「暴露本」ではなく、みんなの党が平成24年の衆院選での大躍進からなぜ翌25年末には分裂してしまったのかについて、通常国会、日本維新の会との協力関係解消、東京都議選、参院選、江田幹事長の更迭、柿沢議員の追放、政界再編に関する党内対立、特定秘密保護法案を巡る攻防といった出来事に焦点を当て、政策的観点から整理・分析した、いわば「政策本」である。

併せて、意外と知られていない「政策担当秘書」とは何かについても簡単な解説を加えている。近年の政治状況を理解する上での一つの参考資料としてお読みいただければと思う。

健全な民主主義の発展には「健全な野党」が必要である。その役割は、単に与党を批判してその間違いを明らかにするのみならず、与党と国民・有権者の双方に対案や選択肢を分かりやすく示すことである。これが第三極の核としてのみんなの党に期待された役割のはずだったが、特定秘密保護法案を巡る攻防に象徴されるように、実際にはそれとは異なる方向に行ってしまった。

渡辺前代表は政策の実現を前面に出して野党の存在意義を語られることが多いが、野党である以上、まして現在のような一強他弱の状況下では、野党が主張する政策の実現は容易ではない。だからといって政策の実現をないがしろにしていいわけではないが、政策実現を重視するあまり与党と過剰に歩調を合わせるというのでは野党の役割をかなぐり捨てるようなものだ。

野党の支持率低迷の状況を打開するのは、与党の挙げ足を取り、足を引っ張ることではなく、国民や我が国にとって真に必要な政策を作り、それを分かりやすく説明し、国民の期待や支持を集めることであるはず。そこに向かって真摯に取り組んでいくことができるか、それが野党、特に第三極にとっての分水嶺となるものと思う。

秋の臨時国会はその提出法案を見ると、与野党の大きな対立軸となるようなものは見られず、再び安全運転に戻った印象を受ける。そうした中で、小渕経産大臣と松島法務大臣が「政治とカネ」を巡る問題で辞任した。改造安倍内閣が目玉として起用した女性大臣のうち二人が就任から短期間で辞任したことは、安倍政権にとって大打撃であり、臨時国会は空転、永田町の関心も政策から政局にシフトしていくのは確実であろう。

野党は久々に与党への攻勢を強めているが、「攻撃は最大の防御」とばかりに、野党側の「政治とカネ」を巡る問題が指摘される可能性もある。そうなった時、「政治とカネ」を巡る問題へ国民の注目が集まり、それが二大臣の辞任につながったという状況下にあって、8億円借入問題等がいまだに燻っている渡辺前代表に関して検察はどう対処するのだろうか。渡辺前代表には、国民が納得するような毅然とした対応を期待したい。

次ページ さて、みんなの党が分裂へと至っ…
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