ドクターZは知っている

「農地バンク」結局はただの看板の書き換え

2014年11月23日(日) ドクターZ
週刊現代
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農地の大規模化を促すため、政府が農地を借り受けて、これをやる気のある農家などに貸し出す―そんな「農地バンク(農地中間管理機構)」構想に暗雲が垂れ込めてきた。

朝日新聞(11月6日付)が、農地バンクが今年8月までに集めた農地が、来年3月までに集める予定の目標値の0・4%にまでしか達していないと報じた。記事中で農水省は、「農地の貸し借りはコメの収穫後の冬に本格化する。これから大きく増えていくと考えている」と話しているが、もちろんそううまくいく話でもないだろう。

農地バンクは安倍政権の農業改革の目玉の一つである。こうした政策を農水省が持ち出すときには、ポチのマスコミを集めて、特ダネだとしてリーク、懇切丁寧に説明する。農水省担当のマスコミも、日頃から他の経済官庁に比べていいネタが少ないので、ここぞとばかりに飛びつく。両者の関係は、とにかく目玉政策をうまくプレイアップすることで協力関係になっていて、マスコミのほうに政策を批判的に取り上げようなんていう気持ちはサラサラない。

となると、過去にすでに行われていて手垢にまみれた政策でも、新たなネーミングを付されて、素晴らしく、これまでにない画期的なものに見せかけることは可能になる。

実は、農地バンクと同様な政策はこれまでに何度もあった。

まず、農地保有合理化事業である。これは、離農農家や規模縮小農家などから農地を買い入れまたは借り入れし、農地の売り渡しまたは貸し付けを行うものだ。農地バンクと同様の農地保有合理化法人が47都道府県に設置されている。それらを束ねる親玉の全国農地保有合理化協会は、農水事務次官の天下り先だ。

天下り機関のようなところが、農地の仲介をするのには無理があったのだろう。さしたる実績を上げられないまま、今度は5年ほど前から農地利用集積円滑化事業が始められた。仲介するのは農地利用集積円滑化団体といい、市町村、農業公社、農協などがこれになることができる。この仲介実績も、今回の農地バンクの目標よりはるかに少ない。

そして、今回の農地バンク。屋上に屋、その上に屋を架したようなものだ。

なぜ、これまでたいした実績もないにもかかわらず、農地バンクのような公的な仲介機関を作ればうまくいくと思うのかが不思議でならない。そんな機関は重要な貢献をできずに、役人の天下り先になってしまうのがオチであろう。

しかも、仲介しようとしても、肝心の情報をもっていない。国からの指令で何か組織を作れば、仲介情報が容易に入ってくるわけではない。さらに、農地の固定資産税はほぼタダだ。これでは、所有者も農地を貸し出して何とかしようなどとは思わない。

もっと農業法人の新規参入を自由にして、その際、農地取得や貸借も自由にしたほうが、よりよい結果になるだろう。そして、農地の固定資産税を少し高くする。その代わりに農地の転用にかかっている制限を自由化すべきだ。

この20年間で、耕作放棄地は約40万ヘクタールと滋賀県全体とほぼ同じ規模に倍増し、担い手のいない農地が全農地の5割と異常になっている。過去の失敗政策の看板を書き換えて、これを打開できるほど甘いものではない。TPP参加で農業予算の増加が予想される。農地バンクはその予算獲得のために画策されたのではないだろうか。

『週刊現代』2014年11月29日号より

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