安倍政権解散の真実 ~奇襲的解散総選挙に持ち込めば、議席は減っても、過半数確保は確実だという安倍政権の読み~
『古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン』vol109(2014年11月14日配信)より
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1.アベノミクスの失敗

アベノミクスの限界がますます明らかになってきた。当初の宣伝では、最初に潤うのは一部の輸出企業などに限られるが、時間の経過とともにそのおこぼれが末端に及ぶようになり、2年ほど待てば、一般庶民の給料が上がって生活が徐々によくなるという話だった。

しかし、それが全くの嘘だったという実感が、庶民の間に広まっている。また、海外のメディアもそれを明確に指摘していて、安倍政権も遅ればせながら、このままでは大変なことになるということに気づいたようだ。

2.北朝鮮拉致被害者返還問題の頓挫 足下を見られて切り札がなくなる

安倍政権のシナリオでは、来年9月の総裁選が一つのターゲットになっている。ある意味当たり前のことだが、来夏までには、集団的自衛権の行使容認のための関連法案の成立、日米防衛ガイドラインの改訂、川内原発のみならず、いくつかの原発の再稼動など、不人気政策が目白押しだ。そこで、来年の通常国会終了直後の7月に、北朝鮮の拉致被害者の調査の締め切りをわざわざ設定していた。不人気政策を6月一杯でやり切って、支持率ががくんと落ちた後に、安倍総理が7月にも訪朝して拉致被害者や日本人妻などを何人も連れ帰ってくるというシナリオだ。

そうなれば、日本中は大フィーバーで落ちた支持率が急回復し、総裁再選は確実なものとなる。場合によっては、その前後に解散総選挙ということも考えていただろう。

しかし、前述のとおり、経済カードが完全に頓挫して、安倍政権には、この「北朝鮮カード」しかなくなってしまった。そこに気づいたのが北朝鮮だ。自分たちが安倍政権の命運を握っていると考えた北側は、急に交渉のハードルを上げてきた。そこで、一気に困難な状況に追い込まれてしまったのが安倍政権だ。

経済と北朝鮮、2枚のカードを失って、来年夏の支持率回復が極めて難しくなったのだ。

3.自民党内抗争対策としての解散

そうなると、今まで磐石に見えていた安倍政権の基盤が揺らいでくる。来秋の総裁選で対抗馬になりそうなのが谷垣自民党幹事長だ。この人は、消費税増税派。財務省の信頼も厚い。

自民党の議員には消費増税に期待している議員が多い。何故なら、消費税を増税すれば財源が増えて、バラマキする予算が増えるからだ。また、増税をする時には、必ずそのショックを和らげるためという名目で、さらにバラマキが行なわれるので、二重の意味でおいしい。ここへ来て、財務省にたきつけられた議員たちが、解散反対の動きを見せ始めたが、この動きが反安倍勢力の結集になる怖れがある。

そこで、解散総選挙に持ち込めばどうなるか。選挙の時に不人気政策の増税を掲げたい政治家はいない。解散と同時に、皆増税延期と叫び始める。そうなれば、増税をめぐる党内対立は雲散霧消し、反安倍の勢力結集は、ひとまず収めることができる。つまり、消費税は、与野党の対立軸ではなく、自民党内の対立軸であり、解散は、その対立を収めるためのものだという見方もできる。

600億以上かけて、安倍さんの自民党内での地位固めに使われる選挙。政治を私物化するにもほどがある、という批判がされることになるだろう。

・・・・・・(略)

6.総選挙の真の争点

結局のところ、安倍政権としては、このままでは、来年夏には非常に危険な状況に陥る可能性が高いので、それなら今やった方がいいのではないかと考えたということでしかないことがわかる。

とりわけ、民主党をはじめとして各野党の態勢が全く整っていない現時点で、奇襲的解散総選挙に持ち込めば、議席は減っても、過半数確保は確実だという安倍政権の読みが背中を押している。

しかし、そんなに計算どおりにことが運ぶのかどうか。
その鍵は、国民が握っている。安倍政権の言うとおり、消費税を上げるかどうかばかりに関心を持ってしまい、安倍政権が増税を止めてくれるなら投票しようという勘違いになる可能性がある。特に、マスコミが、その戦略にうまく載せられているようであるのが怖いところだ。

一方、政権誕生から2年を迎える安倍政権のこれまでの政策に関する事後評価が主たる争点だという観点が浸透すれば、集団的自衛権、NSC、特定秘密保護法、武器輸出、原発再稼動、再エネ買取停止、派遣法改正など多くの論点が並ぶ。国民には不人気な政策も多い。

これらの政策を正当に、争点として扱えるのかどうか。
争点を決めるのは安倍政権ではない。あくまで国民が決めなければならない。マスコミを使った安倍政権の世論操作に乗らずに国民が賢明な考察をしてくれることを期待するしかない。

7.第4象限の党がないことの問題

ところで、ここでまた問題になるのが、どの党に投票したら良いのかがわからないという有権者の声だ。本当なら、「改革はするけど戦争はしない『第4象限の党』があれば良いのだが、この選挙に間に合うタイミングで作られる可能性はない。このままでは、各党の中に少数の第4象限勢力がバラバラに存在するという状況の中で投票を余儀なくされることになる。

では、有権者はどう対応すべきなのか。

まず、絶対にやってはいけないのは、政党が信頼できないから投票しないという行動だ。これは、自民党に対する間接的な信認になってしまう。一連のタカ派的な政策も原発再稼動も全部信認されたということになって、選挙後、それこそ、文字通りの「国家の暴走」が始まるだろう。それに手を貸してはいけない。「棄権」はまさに「危険」な行動なのだ。

そこで、各選挙区で、まず、自民党には投票しないということが大事だ。その上で、消去法で、「よりましに見える候補」を探すことになる。

民主党では、連合に応援してもらっている候補は、確実に選挙後は原発推進に寝返るだろう。大きな改革には反対する可能性もある。維新では、ほとんどの候補がタカ派だと思って間違いないが、旧結いの党の議員を中心にハト派的な議員が多いので、そうした議員を発掘することが大事だ。維新は、概ね改革派が多いので、そちらはあまり心配しなくてもよいだろう。ただし、原発は、橋下氏が大飯原発再稼動に舵を切ったとおり、原発推進を内心思っている議員が多いことには注意が必要だ。

みんなの党も大半はタカ派だ。ただ、離党を検討している議員が何人かいて、かれらはハト派である。

共産・社民はハト派だが、問題は、弱者対策という名目でやたらと予算のバラマキをしそうなことだ。その点では実は自民党に近いところもある。公明党もその点では近い。日本の経済の停滞をもたらす可能性があるので、そこを心配して支持できないという人も多い。

生活の党は、はっきり言って、小沢代表次第の党で、彼の言動はかなりの程度政局目当てだと考えて良い。自民党時代と言ってることがかなり代わっているし、民主党の幹事長時代には、各種の既得権グループとの癒着を進めて、民主党のイメージダウンにつながったことは記憶に新しい。本当の改革ができるとは思えない。

だらだらと書いてしまったが、結局、自分で努力して「よりましな議員」を探すということだろう。

なお、今挙げた、中央の政党の他に、地域政党というものが各地に誕生している。地方議会中心の活動をしているところがほとんどだが、できればそういうところに国政にも候補者を出して欲しいと思う。東京生活者ネットワークなどは、過去の実績もあり、現在も50人以上の都議会や市区町村議会議員を擁するのだが、残念ながら国政進出の準備はできていないようだ。今後は、こうした地域政党が、国政の候補者を推薦したりして良質な候補者選びに貢献してもらえると面白くなるのではないかと思う。

・・・・・・(略)

9.言論統制が始まった

選挙が始まると、テレビ局の方から、様々な圧力がかかってくる。出演の時に「公正・中立」でなければならないという要請が来るのである。

しかし、これは実は表向きの要請で、要は、時の政権を批判するなという趣旨であるということが、テレビを見ていればわかる。

例えば、原発再稼動などは、ほとんど取り上げられなくなるだろう。国民の大多数が反対しているのだから、最も中立公正ということであれば、原発再稼動反対の方向の議論をすることが正しい。世の中の真ん中の議論をするということだからだ。集団的自衛権や特定秘密保護法も世論は反対が多いから、反対の議論をするのはバランスの取れた人だ、ということになるはずだ。

ところが、絶対にそうはならない。何故なら、テレビ局の「中立」の基準は時の政権が中心軸に置かれるからである。そうなると、近年でもまれに見る右翼的政策を掲げる安倍政権が中心軸となるので、極めて偏った報道にならざるを得ない。

世界の主要紙が、「スーパーナショナリスト」と呼ぶ安倍氏を、中心軸において議論しろなどと言うのは「偏向報道」そのものなのだが、現実には、それが中立公正な報道だとされるのである。

政権に利用されている御用政治評論家達が出演するのは全く問題にされないが、私のように、安倍氏のタカ派政策を批判していると「偏向している」から気をつけろとなる。

しかし、例えば、TPPに賛成だと言うのは、何の問題にもならない。おかしな話だ。

これからは、気をつけて下さいといわれたら、どう気を遣えば良いのか聞いてみることにしたい。多くの場合、局の幹部はずるくて、責任を逃れるために、「選挙も近いので、中立公正を旨として気をつけてやるように」などという抽象的な話しかしない。そのくせ、実は裏ではいろいろと間接的な圧力をかけながら、失敗するなよ、と言って、現場を萎縮させるのである。サラリーマンの悲しさで、現場は思い切り発言を規制したり、出演者を差し替えたりする。仮に出演者から苦情が出たら、幹部は、俺はそんなことまでしろとは言ってない、現場の暴走だと言って逃げるのである。

これはほぼ全てのテレビ局に当てはまることのようだ。

本当に日本のマスコミは大事な時に役に立たない点では一流といえるのではないか。福島事故の時に、うそを流し続けて、いまだに検証も訂正もしない会社ばかりだ。国民の生命が脅かされている時に間違った報道をして、その結果、無用な被爆をした人が大量に出たのも、もう忘れてしまったようである。・・・・・・(以下略)

古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン
vol109(2014年11月14日配信)より