「エボラ出血熱」をめぐり感染症と命がけ闘った人々の姿を描いたノンフィクション---『ホット・ゾーン 「エボラ出血熱」制圧に命を懸けた人々』

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol048 読書ノートより

●リチャード・プレストン(高見浩訳)
ホット・ゾーン 「エボラ出血熱」制圧に命を懸けた人々
飛鳥新社、2014年9月

エボラ出血熱について、厚生労働省のHPでは、こう記している。

<エボラ出血熱は、エボラウイルスによる感染症です。エボラウイルスに感染すると、2~21日(通常は7~10日)の潜伏期の後、突然の発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛、咽頭痛等の症状を呈します。次いで、嘔吐、下痢、胸部痛、出血(吐血、下血)等の症状が現れます。現在、エボラ出血熱に対するワクチンや特異的な治療法はないため、患者の症状に応じた治療(対症療法)を行うことになります。>

本書は、今から20年前に刊行された。エボラ出血熱という感染症の存在を広範に広める役割を果たした。

<まずダン・ダルガードに電話を入れなければならない。それに、ヴァージニア州の厚生当局にも通知しなければ。

「責任者の名前もウロ覚えでな」ラッセルは言った。「しかし、グズグズしてはいられんぞ」いまはちょうどみんな、勤めから帰宅する時分だった。「必要なら、彼らの自宅に電話してもかまわん。こいつはあちこち電話をかけることになりそうだ」

そのモンキー・ハウスの所在地は、どこの郡だったかな? ヴァージニア州のフェアファックス郡か。これはこれは、またなんと素晴らしい住宅地じゃないか。フェアファックス郡とはな――あそこは美しい住宅地だ。湖があり、ゴルフ・コースがある。高級住宅とレヴェルの高い学校がある。そしていま、エボラまで棲みついているわけだ。「とにかく、郡の公衆衛生課に通報しなければな」と、将軍は言った。それに、輸入サルを統括している農務省にも連絡しなければならない。甚大な微生物災害による環境汚染問題を統括する、環境保護庁にも連絡する必要がある。ラッセル将軍はまたぺンタゴンに通報すべく、国防次官に電話を入れることも決めた。

将軍をとりまいていた面々はいっせいに部屋を出て、各自ガランとしたオフィスにもどって電話をすべく、廊下に散っていった。いまや特別対策チームの指揮官に決まったC・J・ピーターズは廊下の奥のオフィスに入って、まずダン・ダルガードのオフィスに電話を入れた。ピーター・ヤーリングが親子電話を耳に押し当てていた。ダルガードはすでに帰った後だった。で、すぐに彼の自宅に電話を入れると、細君が出て、ダンはまだ帰宅していない、という。六時半頃にもう一度電話を入れると、こんどは彼をつかまえることができた。

「わたしはユーサムリッドのC・J・ピーターズ大佐という者だ。疫病分析部門のチーフなんだがね。ああ、こちらこそ、よろしく。さっそくだが、こうして電話を入れたのは、二番目のウイルスがマールブルグではない、ということをお伝えするためなんだ。二番目のウイルスはエボラであることが判明したんだよ」

「エボラとおっしゃると?」ダルガードは訊き返した。エボラという名前を耳にするのは初めてだったのだ。その言葉を聞いても、彼には何の感興も湧かなかった。つとめてさりげない風を装って、C・Jは独特のテキサス訛りのある声で言った。「非常に稀なウイルス病なんだがね、この十年か十二年間に、ザイールとスーダンで犠牲者が出ている」

ダルガードは安堵を覚えはじめた。とにかく、マ-ルブルグでなくてよかったと思いつつ、彼は訊いた。「で、そのエボラ・ウイルスとやらの性質は?」

C・Jは比較的曖昧な表現でウイルスの特徴を説明した。「これはマールブルグに近いんだ。感染の仕方もほぼ同じで、感染した組織や血液との接触を迎じてうつる。症状や徴候も、かなり似ているな」

「で、人間にとっては、どれくらい危険なんです?」

「致死率は、五十パーセントから九十パーセントだ」

それが意味するところは、ダルガードにもはっきり認識できた。そのエボラとやらは、マールブルグよりも性悪なのだ。・・・・・・以下略

このテーマについて深く知るための「連読」3冊
・池上彰『おとなの教養 私たちはどこから来てどこに行くのか』NHK出版新書、2014年4月 
・村上陽一郎『ペスト大流行 ヨーロッパ中世の崩壊』岩波新書、1983年3月 
・ダン・ブラウン(越前敏弥訳)『インフェルノ 上巻』角川書店、2013年11月
・ダン・ブラウン(越前敏弥訳)『インフェルノ 上巻』角川書店、2013年11月

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol048(2014年11月12日配信)より

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