APECにおける日中首脳会談
~尖閣諸島をめぐる日本の立場の後退が決定的になった~ ほか

佐藤優「インテリジェンスの教室」vol.048 インテリジェンス・レポートより

分析メモ No.105「APECにおける日中首脳会談」

〔PHOTO〕gettyimages

【事実関係】
APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議出席のために中国・北京を訪問中の安倍晋三首相は、11月10日11:50(日本時間12:50)ごろから約25分間、習近平・中国国家主席との間で日中首脳会談を行った。日本側同席者は加藤勝信官房副長官、谷内正太郎国家安全保障局長、木寺昌人駐中国大使ほか、中国側同席者は楊潔チ(ヨウ・ケツチ)国務委員ほか。

【コメント】
1.
日中首脳会談が行われたのは、2012年5月以来2年6ヵ月ぶりであり、安倍政権が成立してからは初めてのことだ。

3.―(1)
外務省は、総花的に会談結果を発表し、今回の首脳会談で尖閣諸島問題をめぐって日本が中国に大幅な譲歩をしたことを隠そうとしている。

3.―(2)
カギになるのは、外務省発表でも言及されている「4項目の一致点」という外交文書だ。11月7日に発表されたこの文書は、秘密裏に準備がなされ、最終的な調整は、6日に訪中した谷内正太郎国家安全保障局長と楊潔チ国務委員(副首相級)の間で最終調整がなされた。

3.―(3)
「4項目の一致点」の第2点で、「双方は、尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識」との合意をしたことにより、日本政府は、尖閣諸島をめぐる領有権問題の存在を事実上認める道を開いた。これは、日本の大幅な譲歩である。日中首脳会談で「4項目の一致点」について首脳レベルで確認したことにより、尖閣諸島をめぐる日本の立場が後退したことが決定的になった。

3.―(4)
<中国側は首脳会談開催の条件として、尖閣諸島をめぐり領有権問題が存在すると認めた上で「棚上げ」することと、安倍首相が靖国神社に参拝しないと確約することの2点を求めていた。一方、日本側は「会談に前提条件はつけない」との立場で、2点については「譲歩」は受け入れられないとの姿勢は堅持しつつ、中国側と折り合える文言を調整した。

文書では、中国側が領有権の存在にこだわってきた「尖閣」を明記し、両国間に「異なる見解」があるとする一方、歴史について靖国参拝には一言も触れなかった。日本外務省幹部は「異なる見解」について、「『緊張状態が生じている』にかかっている」とし、尖閣の領有権をめぐるものではないと説明。「日本の立場が後退したとか損なわれたとかは一切ない」と強調した。>(11月10日 朝日新聞デジタル)

ということであるが、匿名の日本外務省幹部による<「異なる見解」について、「『緊張状態が生じている』にかかっている」とし、尖閣の領有権をめぐるものではないと説明。「日本の立場が後退したとか損なわれたとかは一切ない」>という釈明は強弁で、説得力がない。彼我の力関係に鑑みて、尖閣問題で日本が譲歩し、その代わり安倍首相の靖国参拝については中国が譲歩したというのが、今回の日中首脳会談における取引の本質だ。・・・・・・以下略

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol048(2014年11月12日配信)より

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