経営改革を進める第1の鍵: ビジョンと戦略の変更、全社員への浸透
ソニーのウォークマンはかつて市場を支配した 〔PHOTO〕gettyimages

以前、「経営改革を進めるには7つの鍵を同時に開けること」( http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36859 )という提案をさせていただいた。そのうちの第1の鍵について、詳しくご説明したい。

経営改革を進めるには、現実を直視し、顧客、自社、競合の最新状況を踏まえて会社のビジョンと戦略を考え直すことが出発点になる。見たくないものを見ることになるので、苦痛を伴う。

これまでの成功のもとになった過去の事業基盤がどう変わったのか、新たにどうすべきなのか、これらをゼロベースで考え、再構築することなくして組織のベクトルの方向を変えることはできない。

社長は、自社が今後どうやって大きな利益を上げるのか、どうやって再度成長するのかを整理し、強力に打ち出す必要がある。業界1位に安住しているうちに、ドル箱だった市場セグメントが急減したり、新たな競合が出現したり、多くの脅威が生まれている。

失われた競争優位性をどうやって取り戻すのか、どういう戦略転換をするのか、社長自ら既存概念を打破し、新しい方向を示して全社員への浸透を図る。

現実を直視し、最新状況を整理すると?

長年そこそこに続いていた利益が近年、急降下した場合、社長は強い危機意識を持つ。ただ、危機意識は持つものの、為替変動による売上減少、原材料高騰、業界全体の不況、顧客自身の不振、ヒット商品の不足、代替品の伸び等、利益低下要因がどう絡んでいるのか、正確に把握できていないことが実は多い。特にどの部分が急降下したのか、いつから悪化したのか、ということになると、かなり多くが闇に包まれている。

事業を率いる社長の立場からは、問題があまり目立たず進行し、気づいた時には手の打ちようがなくなっていることがいちばん怖い。ほかの事業が一時的に伸びていたために強いと思っていた事業、顧客セグメントが実は急降下していることに気づくのが、何ヵ月も、場合によっては何年も遅れてしまうことだ。

そうやって気づいた時には、かなり手遅れで、何をやろうにも負の状況からのスタートになる。事業を多数抱える中堅・大企業の社長には、特に「正確な情報」「経営の舵取りという意味での重要情報」が意図して隠されたり、あるいは意図したわけではなくても見過ごされて上がってこなかったりすることが多いのではないか。中堅・大企業にかぎらず、中小企業でも、社長が「お山の大将」になっていることが多いので、残念ながら似たような問題が起きる。

企業規模がどうであろうと、経営改革を進めようとする社長は、まず第一歩として、少なくとも過去5年間の事業収益の中身がどういう構成比になっているか、いくつかの軸で切った時の特定のセグメントが急激に落ちていないか、何かの変化をほかの数字が一時的に隠していないかを自分の目ではっきり確認する必要がある。

「見たくない」あるいは「面倒くさい」と思うものが、まずはあやしい。「大丈夫だ」と思っていたことをまず疑ったほうがいい。思考停止になった部分には必ず何か間違いが起きる、と考える癖をつけたほうがいいくらいだ。

一番の問題は、過去に輝かしい業績を上げた社長が長年そのポジションにとどまり、耳の痛い話をする取締役や経営幹部を排除してきた場合に起きる。本当のことを言ってくれる部下はもう社内に残っていない。皆、自分が首にしたか、嫌気がさして辞めてしまっている。今残っている経営幹部や部長が勇気を出して言おうとしても、社長の耳にはきわめて入りづらい構図ができあがっている。社長自身、嫌なことを言う部下を排除し続けて何年、という感じなので、「嫌なこと」「耳に痛いこと」を聞く我慢ができなくなっている。

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