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あきらめない 無理はしない がんを受け入れる「余命宣告」より長生きする人の生活習慣
これがすべての「がん」の5年生存率ナマ数値だ

同じ60歳で体格もほぼ変わらない2人の男性。同時期にステージⅣの大腸がんが発覚した。手術で可能な限りがんを切り取り、抗がん剤治療を受けるという治療法も一緒。だが、それから5年後—一人は再発もなくピンピンしていたが、もう一人はがんが再発してすでに亡くなっていた。

「同じ病名の患者でも、平均的な生存率を超えて長生きする人もいれば、それより短い期間で命を落としてしまう人もいます」

東京慈恵会医科大学附属病院副院長で腫瘍・血液内科教授の相羽惠介医師はこう話す。性別、年齢、病状がほぼ同じがん患者が、同じ治療法を受けたとしても、当然ながら予後は人によって異なってくる。

前章で紹介した5年生存率の「ナマ数値」は、患者のビッグデータに基づく「現実」だが、患者個人を見れば、余命宣告より長生きする人は確実に存在する。彼らは、何が違うのか。

「治療を受ける上では、やはり体力・気力が大事です。生き続ける可能性を追求すること。あきらめたら終わりだと思うのです」

北海道大学大学院医学研究科特任准教授・西原広史医師はこう言う。医学的にその根拠をはっきりと示せるものではないが、じつは、患者自身の「気持ち」が予後に大きく関係してくるのだという。

思いつめるのは逆効果

肝臓がんを患い、6年前に余命宣告を受けた坂本雅一さん(仮名・71歳)は、自らの経験をこう語る。

「慢性肝炎が気付かぬうちに進行し、10年前に病院へ行ったときにはすでに肝臓がんのステージⅣでした。すぐに治療を受けたのですが、再発を繰り返し、徐々に病状は悪化していきました。そして6年前、肝臓がんが門脈という太い血管にまで広がっているのが見つかり、医師から『このままでは3ヵ月持ちません』と言われたんです。そう宣告されたときはショックを受けました。でも、現実を受け入れるしかないと思った。できることはやろう、と治療を続けました」

坂本さんは、その後も再発を繰り返したが、そのたびに治療を受け続ける。それも闘病中に、娘に子供が生まれ、初孫といつか一緒に趣味の山登りをしたいという夢があったからだ。

すると治療の効果が現れ、「余命3ヵ月」と言われた日から6年が経過。現在も、元気に過ごしている。

「病院の先生からも、驚かれますが、いまは、発病前と変わらない生活を送っています。何度も再発してつらかったですが、できる治療法があるのなら生きられる可能性はあるのだろう、そう思っていました。孫ももうすぐ小学生なので、一緒に山に行く計画を立てています。本当に、ありがたいことです」(坂本さん)

最初に診断されたときの病状や治療がうまくいったかどうかも大きな要素だが、坂本さんのように、現状を受け止め、厳しい状況であっても前向きにがんと向き合う—これが、がんになっても長生きする人の特徴と言えるだろう。