歳川隆雄「ニュースの深層」
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黒田東彦発言は大問題、なぜ新聞・TVは報じないのか

2014年11月15日(土) 歳川 隆雄
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「消費税10%を前提に金融緩和した」と重大発言  photo Getty Images

何故なのか分からないが、『日本経済新聞』(11月13日付朝刊)本紙に掲載されずに電子版(同日)だけが報じた「黒田発言」は看過すべきではない。

ほとんど報じられなかった黒田総裁の重大発言

日本銀行の黒田東彦総裁は12日午後の衆院財務金融委員会(委員長・古川禎久前財務副大臣)に出席し、維新の党の伊東信久議員の質問に対して「(10月31日に開いた金融政策会合で決めた追加緩和について)2015年10月に予定される消費税率10%への引き上げを前提に実施した」と答弁した。

安倍晋三首相が消費税率8%を10%へ引き上げる再増税決断を行えるよう援護射撃として追加金融緩和を決めたという「告白」である。重大発言である。

急浮上した年内の衆院解散・総選挙報道があるにしても、金融政策を担う日銀のトップが財政政策の根幹に関わる消費再増税の実施を後押しするため「異次元緩和第2弾のバズーカ砲」を撃ったという黒田発言を、なぜマスコミ各社は報道しないのか理解に苦しむ。

安倍晋三首相の側近、菅義偉官房長官は同日午前、東京・内幸町の帝国ホテルで開催された日米財界人会議での基調講演で「安倍政権はデフレからの脱却と財政再建という二兎を追って二兎を得る政権だ」と語った。

安倍首相が外遊から帰国する17日に発表される国民総生産(GDP)速報値が予想以上に悪い数字になることは間違いなく、さらに18日には再増税の可否に関する有識者会合最終日を迎える現在、永田町では「11月19日衆院解散・12月2日衆院選公示・14日投開票」(同26日解散・12月9日告示・21日投開票もあり得る)が確実視されている。

官邸・経産省Vs.財務省・日銀

いずれにしても、消費再増税の先送り決断とアベノミクス改訂版(「第3の矢」の成長戦略をバージョンアップ)を争点とする総選挙で国民に信を問うというのだ。では、再増税を前提に追加金融緩和を決めた黒田・日銀は、日経平均株価1万7000円という屋根に駆け上がり安倍首相の再増税決断を待っていたのに梯子を外されたということなのか。

黒田総裁が官邸サイドに不信感を強めているという。他方、菅官房長官は一言多い黒田総裁に不満を抱いているとされる。

ここで浮上するのが、いま永田町と霞が関で囁かれている官邸・経済産業省vs財務省・日銀の対立構図である。先述の有識者会合を所管する甘利明経済財政・再生相が夏過ぎに再増税派から慎重派に転じたことは周知の通りだ。経済産業相を歴任した甘利氏はもともと商工族(IT業界)である。総務省を掌握する菅官房長官が経産省マターのエネルギー業界に食指を伸ばしているとされる。安倍首相の最側近である今井尚哉首相秘書官(政務担当)は経済産業省出身。

他方、安倍内閣の要であり首相とは盟友の麻生太郎副総理・財務相は再増税実施の確信犯であり続けた。自民党では谷垣禎一幹事長、野田毅会長を筆頭に党税調のコアメンバーは税率再引き上げを強く主張してきた。第1次安倍内閣時の首相秘書官(事務担当)の田中一穂財務省主計局長もバリバリの財政規律派である。そこには黒田総裁も控えている。

だが、安倍首相の判断は先送りだ。では、いつ先送りを決めたのか。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産運用比率変更(国内株式と外国株式を各25%へ引き上げ)発表とのダブル・サプライズ(通称「ハロウィン・サプライズ」)の10月31日時点で、財務省(香川俊介事務次官)は安倍首相が既に先送り判断に傾いていることを承知していた。

財務省は今、安倍首相の再増税是非判断そのものの先送りを官邸側に働きかけているという。最後の抵抗というか、無駄な抵抗である。菅官房長官はこうした財務省に不快感を隠さない。

「自民党敗北」なるか?

気が早いと言われるかもしれないが、最後に衆院選の予測。

現有55議席の民主党(海江田万里代表)はもちろん議席増が確実である。どのぐらい上乗せできるのかが焦点である。80議席まで期待できるという見方と微増でしかないという予測に分かれている。

事前に年内解散を伝えられ準備ができていた公明党(山口那津男代表)、そして安倍批判票を取り込める共産党(志位和夫委員長)は議席増が確実だ。維新の党(江田憲司、橋下徹共同代表)、みんなの党(浅尾慶一郎代表)、次世代の党(平沼赳夫党首)、生活の党(小沢一郎代表)は軒並み減らす。

問題は、議席減が不可避の自民党の減り具合である。現有の295議席が単独安定過半数割れとなる44議席減の可能性は低い。結局、投開票の翌日の各紙朝刊には、「自民党敗北」の大見出しは載らないのではないか。
 


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