SPEEDIに予算をつけない政府の意図
『古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン』vol108(2014年11月7日配信)
〔PHOTO〕gettyimages

古賀: 福島第一原発がまだ事故処理が全然、進んでいないわけですけれども1号機ですかね。1号機はまだ爆発していなくて建屋が残っているんですね、屋根もあって。そうすると原子炉を処理していくときにそのままじゃできないわけで、今、初めてそこに手をつけるということが数日前から始まりました。

前に1回、がれきを撤去するというのをやったときに、非常に放射性物質が大量に飛散しまして、福島県内の農地でかわいそうなところはお米が汚染されちゃって出荷できないというようなことが起きてしまったんですけれども、東京電力はそれをやったときにワーッと飛びましたっていうのを隠していた。農水省が調べているうちにまずいんじゃないのということになって、この辺は汚染されたかもしれませんよといって初めていろんな検査が行われて、実際に被害が出ていたということが1回、あったんですけれども、今回はさすがにそういう批判もあったので相当慎重にいろんな作業をやってはいるようであります。

農水省はそういう被害が起きているんじゃないかということをやっていく過程では、SPEEDIという事故のときにいろんな放射性物質がどこに飛んでいくかというのを予測するようなシステムがあるわけですけれども、これを去年は農水省は活用してるんですね。それでこの辺は危ないぞというようなこともちゃんと考えた上でいろいろ調査をして、やっぱり危なかったということになったわけですけれども、今、このSPEEDIをなるべく使わないようにという方向で政府は動いているんですね。来年度のSPEEDIの予算は大幅に削られて事実上、動かさないという方向になっています。

このSPEEDIというのは予測なんですけれども、今、政府の規制委員会とかが言っているのは予測というのは外れる可能性が高くて当てにならないからあまり使えないんです。したがって実際にどれだけ放射性物質が降ったか、あるいは放射線量がどれぐらい上がったかという実績を見ながら刻々とそれを見て避難とか、そういうことについて判断をしていくというほうがより確実なんで、そっちにお金を使うんですという説明をしてるんですね。
実績から見ても、この間の福島第一のときの予測なんかもかなり的確なものが出ているわけですね。そういうものがあるのにわざわざそれはやめましょうということを言っているというのは何か、非常に意図を感じるなと思うんですね。

放射能が漏れましたというときにSPEEDIの情報が常に公開されていれば、きっとここら辺が危ないぞとパッと検査ができるというようなことを逆にさせないという意図があるのかな。わかりにくくしておけば、うまくいけば、みんなであちこち調べたけど、たまたまそこにモニタリングポストがなければわからないわけですから、そうするとたぶん発表としては、放射性物質は多少漏れたようですけど大したことはありませんでした、周りのモニタリングポストであまり変化がありませんでした、というようなことになってしまうので、ちょっとそういう意図があるんじゃないかということを感じるんですね。

(九州電力の)川内(せんだい)原発の再稼働が秒読みになっていますよね。地元はこの間、薩摩川内市という川内原発がある市の市議会が陳情というのを出してもらって、そこでは動かしてくださいという陳情が住民から出ました。陳情というのは採択するかどうかというのを決めなきゃいけないんですけど、それをわざわざ審議を早めにやって採択をしちゃったということで事実上、市議会が再稼働に同意をしたという形にまで来ていますね。もう来週には市長は正式に同意するだろうと。そうすると県議会あるいは県知事としてもいつでも同意できるというような状況になるわけですけれども、この川内原発にはいろんな問題があるんですね。

1つは火山の問題が非常に言われていますけれども、それ以外にもとにかくいろんな問題があって避難計画というのが非常にずさんだというふうにいわれているんですが、その避難計画をつくるべき対象というのはどこまで広げるのかとか、あるいは同意を得る自治体というのはどこまでなのかとか、これは法律で決まっていないわけですね。

これはSPEEDIを動かしてSPEEDIというのはある程度、当てになるんですよ。これを参考にしなくちゃいけませんよということにすると非常にそこに大きな影響が出ます。というのはSPEEDIはすべての原発についていろんなシミュレーションをもうすでにやっていますけれども、それによると例えば薩摩川内市で今、5キロとか30キロとかいう議論をしていますけれども、それをはるかに超える広範囲な地域に放射性物質が降るということはSPEEDIのシミュレーションでははっきり出ているんですね。そうするとそこまでちゃんと対策をとらなくちゃいけないじゃないか。あるいはそういう人たちにまでちゃんと説明をして同意を受けるべきじゃないかという議論につながるわけですよ。

ところがそんなことをしたら、もうとてもじゃないけど収拾がつかなくなって避難計画もそんなに大きなものはできないし、そんなにたくさんの地域の同意をとることもできないということで、ものすごい障害になるわけですね。そこで規制委員会が考えたのはSPEEDIというのはとんでもなくいい加減なものなんです。こんなものは信じちゃいけないんですと。ずっと今までSPEEDIというのは政府はこれは当てになるものですということでお金をかけてつくって、かつ運用してきたわけです。もう再稼働の議論になった途端にこんなものはだれも使えないんですみたいなことをやるっていうのは非常におかしな話だなというふうに思います。・・・・・・以下略

古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン
vol108(2014年11月7日配信)より

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