特集 火山と向き合う
戦後最悪の御嶽山噴火
改めて知る火山国・日本の厳しさ

噴火直後、すさまじい噴煙が上がる御嶽山の山頂付近=9月27日、江田敦典さん撮影(提供写真)

戦後最大の犠牲者を出した9月27日の御嶽山(長野・岐阜県境、3067メートル)の噴火は、火山と向き合うことの厳しさと難しさを改めて浮き彫りにした。世界に約1400ある活火山のうち110が集中する火山国・日本。気象庁が24時間体制で監視を続ける活火山は47あるが、そのうち具体的な避難計画が策定されている火山は数山に過ぎないという。大規模な火山噴火は経済活動や国民生活に深刻な打撃を与える広域被害につながる。国と自治体、地域住民が緊密に連携した対応策が求められる。

御嶽山噴火による救助活動は10月16日に打ち切られ、これまでに57人の死亡が確認され、さらに6人が取り残されている可能性がある。

世界有数の火山国である日本だが、総噴出量が10億立方メートルを超える大規模な噴火は1914年の桜島(鹿児島)以来ない。1億立方メートルは東京ドーム約80杯分に相当する。特に活動が盛んな47火山を、気象庁は地震計や衛星利用測位システム(GPS)などを使って常時監視している。

そのうち、富士山や阿蘇山など30火山では、5段階の「噴火警戒レベル」が適用されている。住民の避難が必要な5から、特別な行動を求めない1まである。御嶽山は1だったが、今回の噴火で入山規制が実施される3に引き上げられた。このほかに3は桜島と口永良部島だけだ。気象庁によると、1の火山の状況は基本的に静かな状態で、火口内で火山灰の噴出などが見られることもあるが、火口内が危険でも登山者の入山自体は規制されない。御嶽山でも規制がなかった。

昨年5月に内閣府の検討会が、広域被害をもたらす火山の大規模噴火について、監視体制の強化や避難計画の早期策定などを盛り込んだ初の提言をまとめている。検討会は、溶岩や灰などの総噴出量が1億~数十億立方メートルの大規模噴火を想定した。その噴火では溶岩流や火砕流による被害が生じるほか、火山灰が1~2センチ積もると道路通行に支障が生じるなど影響が大きいとした。提言は気象庁が常時監視の対象としている47火山のうち、10火山(当時)で周辺自治体がハザードマップ(災害予測地図)を整備していないなど対応が遅れていると指摘した。

山中で新たに発見した登山者を担架に乗せる捜索隊=御嶽山頂上付近で10月4日

提言はハザードマップの早期策定を求めるとともに、大噴火の可能性が高まった場合に対応できるよう知事や市町村長に避難指示を発令させる権限を持たせることや、観測体制で複数の機関に分散している専門家の知見を集める仕組みを構築するよう求めた。さらに、火砕流や降灰の発生直後は住民の一斉避難は困難になるため、状況に応じて避難対象地域を順次拡大し、円滑な避難誘導が行えるよう訴え、避難手段の確保や交通規制の方法を検討しておくべきだとした。

御嶽山の災害では、直後から国土交通省が現地に災害復旧・支援車両を投入、周辺市町村を支援するリエゾンを派遣した。また、大規模自然災害に対応する「緊急災害対策派遣隊(TEC―FORCE)」を派遣し、火山灰を含んだ土石流に対応するため、監視カメラやワイヤセンサーを設置したほか、降灰状況の調査や砂防専門家による調査などを実施した。

常時観測火山の3分の1が関東

気象庁が監視する47の活火山のうち、その3分の1の14が関東1都6県に集まっている。その中で群馬県には草津白根山や日光白根山、赤城山、榛名山、浅間山の5火山があり、気象庁は常時観測している。

レベルは草津白根山が火口周辺規制の必要な2で活発な動きをみせている。気象庁火山課によると、3月上旬ごろから火山性地震の回数が増え始め、6月ごろには1日20~30回の地震を観測。6月3日に1から2に引き上げた。その後も、火山性地震は増加し、7月下旬には1日約150回を記録した。現在は10回以下に落ち着いているが、火口から半径1キロ以内が立ち入り禁止で、通過する国道292号の8・5キロ区間は夜間通行止めとなっている。

東京工業大火山流体研究センター草津白根火山観測所によると、草津白根山の湯釜付近では、半年ほど前から高圧の熱水が地下にたまったことにより、ゆるやかに膨張が続いているという。観測機器が御嶽山よりも火口近くに設置されており、観測網は充実しているが、同センターは「何が引き金になって噴火するかは分からない」と警鐘を鳴らす。

04年の中爆発で噴石が山の中腹まで飛んだ群馬県と長野県にまたがる浅間山は1だが、山頂部の釜山は現在も活動中だ。これまでに10回余りの大規模な噴火と中小規模噴火を繰り返してきた。有史以降の活動はすべて山頂噴火で、山頂火口は常時噴気しており、釜山西山腹の地獄谷にも噴気孔がある。気象庁によると、噴火の際には火砕流が発生しやすく、1108年と1783年には溶岩流も発生している。噴火の前兆現象として、火口直下に浅い地震が頻発することがあるという。

今年8月には、浅間山の噴火に備えて関係機関が対応を検討する「浅間山火山防災協議会」が、長野・群馬両県と関係8市町村、国の機関などの約100人が出席して長野県小諸市で開かれた。

浅間山は、火口から市町村まで距離があることから、避難準備が求められる4以上の段階で佐久合同庁舎に国が現地本部を置き、関係機関の合同会議で調整と合意形成を図る。入山規制の3の段階では軽井沢町に国が現地連絡調整室を置くことも決めた。協議会ではこの他に、噴火時の降灰への対応や融雪型火山泥流に対する避難計画案などが示された。同協議会は07年から浅間山噴火の「融雪型泥流」を想定した防災訓練を実施しており、今年は2月に渋川市で行われた。また、御嶽山災害直後の9月29日には、群馬県の嬬恋村運動公園陸上競技場で火山被害を想定した山岳遭難救助訓練を実施した。

観光客が多い神奈川県の箱根火山も、昨年1月中旬から1カ月間に1700回を超える地震を観測したが、多くは体に感じることがない無感地震で噴火の兆候はなかった。箱根町などによると、この時の震源域は駒ケ岳から仙石原付近で、深さは駒ケ岳で1キロよりも浅く、仙石原では5キロより浅い場所だった。昨年2月10日には噴煙地のある大涌谷で、同16日には湖尻付近で、震度1から3に相当するやや規模の大きな揺れが連続して発生した。箱根火山では01年の6月から10月にかけて地震が多発し、山体の膨張を示す変化がみられ、噴気活動が活発化した。レベルは現在1だが、気象庁と神奈川県温泉地学研究所(小田原市)が注意深く観測を続けている。

伊豆大島や三宅島も活火山がある。レベル1の伊豆大島火山の三原山はカルデラ内にできた中央火口丘で、最近では1912~14年、50~51年、86年に中規模以上の噴火があり、86年の噴火では全島民が避難した。00年の噴火で大量の火山ガスが発生し、全島民が長期にわたって避難した三宅島は、山頂の火口付近で噴火が予想されるとしてレベルは2となっている。両島では定期的に総合防災訓練を実施されている。

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