「国際金融センター」構想に注目
具体化に向け年度内に工程表策定の方針[東京]

東京国際金融センター構想推進会議であいさつする東京都の舛添要一知事(中央)=都庁で9月1日

「東京を世界一の都市にする」。そう公約に掲げ、今年2月に就任した東京都の舛添要一知事。就任から半年余りがたった今、最も力を入れる施策の一つが「東京国際金融センター」構想と言えるだろう。金融業界や関係省庁の幹部らをメンバーに加えた会議を発足させ、政府と連携して、ニューヨークのウォール・ストリート、ロンドンのシティーに並ぶ金融拠点に押し上げようと意気込む。その展望と課題を探った。

「20年ものデフレが続くうちに、東京の国際的地位は低下し、今やシンガポール、香港、そして上海にすら先を越されるような事態となっている。2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会を機会に、何としても、東京をアジアの、そして世界の金融中心地にしなければならない」。舛添知事はウェブマガジンの自身のコラムで、こう強調している。

6年後の東京五輪を起爆剤に、経済の「血液」とされる金融部門を強化し、日本の経済を活性化させる――。そんなシナリオを実現させるため、都は5月、前田信弘副知事を座長とするタスクフォース会議を庁内に立ち上げ、銀行や証券会社の役員らの意見を聞き、7月には「『東京国際金融センター』構想に向けた取り組み」を取りまとめた。

そこには、(1)海外の企業・人材がビジネスをしやすい環境づくり(2)国内外からの資金を、国内で成長が見込まれる分野へ呼び込む仕組みづくり(3)国内の金融資産を、預金中心から、その他の金融商品への運用に広げるための仕組みづくり・商品開発(4)人材の育成――という四つの課題が示された。

これらを解決するため、▽ビジネスマンらが暮らしやすい生活環境の整備▽国際金融会議の開催・誘致▽都の施策に資する官民連携ファンドの推進▽起業・創業の支援(ベンチャー企業の育成)▽グローバル人材の育成――など20の取り組みを提示。それぞれ、▽都の独自施策で実現する▽国に実現を促す▽国、都、民間の協働で実現する――の三つに整理した。その上で、国や民間との連携強化を図るための「推進会議」を設置することを提案した。

都は、急ピッチで議論を加速させる。9月1日、財務、外務、経済産業、国土交通各省と金融庁、業界団体の幹部ら約30人をメンバーとする推進会議の初会合を開催。「経済の活性化に向けた都の資産活用」など四つのテーマで分科会を設置し、構想の具体化に向け年度内には工程表を策定する方針を決めた。

こうした中、安倍晋三首相は9月23日、ニューヨーク市内で米国のシンクタンク・外交問題評議会との懇談会に出席した際、地域限定で規制緩和を進める国家戦略特区に関し「東京では金融における特区が可能かどうか検討していきたい」と表明。都の構想を後押しする姿勢を示した。特区制度をめぐっては、都が3月、多国籍企業の日本法人に対する法人税の減免措置などを政府に提案しており、首相の念頭には、こうした税制優遇策の導入があるとみられる。

東京を国際的な金融の拠点にすべきだという声は、かねてから根強くあった。森ビル社長だった故・森稔氏は08年、毎日新聞のインタビューで「金融を育てないとこれからの時代、世界都市とは言えない。国際金融都市になったからロンドンは技術も料理もよくなった。だが、東京は外国人に対する包容力に欠ける」(08年7月11日「直Q変化Q」)と指摘。増田寛也元総務相も毎日新聞のコラムで「私は、今後東京がアジアの金融センターの役割を果たすことが国際通貨体制の安定化に資すると思っている」(今年2月23日「時代の風」)との見解を示している。舛添知事のスタンスについて、政府関係者は「国の成長戦略と同じ方向性であり、一緒に結果を出せれば」と語り、「外資系金融機関を誘致するインフラ整備を東京都がやってくれれば助かる。そこで働く人だけでなく、その家族に、医療や保育について、英語が通じて、安く提供するような環境整備を東京でやってもらいたい」と訴える。

こうした指摘の背景にあるのは、香港やシンガポールが、アジアの金融拠点となっているとの現状認識だ。大都市としての魅力や、民主主義の成熟度では両者に勝る東京だが、逆に大きく差を付けられているのが、英語によるコミュニケーションであることは論を待たない。英語や仏語など語学に堪能な舛添知事も、20年の東京五輪のボランティア育成などとも絡めて、都民に語学習得を促す発言を繰り返している。都として、教育環境の更なる整備が求められる。

都の株式運用には法の壁も

金融センター構想の中で、舛添知事が強い意欲を示しているのが、現在は認められていない、都による株式の運用だ。地方自治法は、自治体の現金や有価証券の保管について「最も確実かつ有利な方法」(235条の4)で取り扱うよう規定しており、国は、元本が保証されない株式を自治体が持つことを認めない立場だ。

これに対し、舛添知事は「都民のお金を、じっと眠らせているのではなくて、そこから富を生み出せば良いに決まっている」と反論。10月2日には公認会計士や金融関係者らによる「東京都資金管理・活用アドバイザリーボード」の初会合を開いて専門家の意見を聞き、今後、国に法解釈の変更を求めていく考えを示している。

だが、最高裁の判例こそないものの、地裁レベルでは「最も確実」との条文を踏まえ、自治体が「現金を有価証券に代えて運用するようなことは違法」(01年4月の千葉地裁判決)と断じた司法判断も示されている。都庁内でも「知事は法解釈で可能と言うが、難しい。新たな立法措置が必要だろう」(幹部)との声が支配的だ。

舛添知事は、運用対象となり得る「底だまり」している公金について、職員の退職金のための引当金を例示するが、そもそも都には、民間企業のような退職金に備えた基金があるわけではない。年度ごとに編成する予算に基づき、一般財源で賄われているものである。自治体が「税金による資産運用」をするとなれば、納税者から「それなら減税しろ」との反発の声が上がる可能性もある。都には、丁寧な説明が求められる。

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