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[虎四ミーティング~限界への挑戦記~]
田淵幸一さん(野球解説者)<前編>「江夏に鍛えられたキャッチング」

2014年11月14日(金) スポーツコミュニケーションズ

優勝した巨人と2位・阪神の差

二宮: 今シーズンのプロ野球は福岡ソフトバンクの3年ぶりの日本一で幕を閉じました。一方で昨シーズンの日本一チームだった東北楽天は、一転して最下位に終わりました。田淵さんにとっては、2012年までの2年間、コーチを務めていた球団でもあります。敗因はどこにあったのでしょう?
田淵: プロ野球は、いかにいい戦力を集められるかにかかっていると思うんですよね。その点でいえば、今年の楽天は田中将大とケーシー・マギーという投打の柱を失ったのが非常に大きかったと思います。戦力ダウンでしたね。

二宮: 特に田中投手は、昨シーズン24勝0敗1セーブと大車輪の活躍でした。予想されたこととはいえ、この穴は大き過ぎましたね。
田淵: 大きいなんてもんじゃないでしょ。ひとりでチームの貯金を作っていたわけですから。マギーの代わりとしては、メジャーでの実績もあるケビン・ユーキリスが来ましたが、残念な結果でしたから、外国人の当たり外れは宝クジのようなもの。もし、外国人がひとりふたりと活躍していれば、順位もひとつふたつと、上がっていたでしょう。

二宮: セ・リーグでは、田淵さんの古巣である阪神が9年ぶりに日本シリーズに進出しました。CSで負けなしの快進撃を見せましたが、レギュラーシーズンは2位です。3連覇を果たした巨人とは7ゲームと大きく離されましたね。
田淵: 今シーズンの原(辰徳)監督の采配を見ていて感心したのは、あれだけ個人成績が、低いという選手ばかりで優勝した。巨人にあって、阪神になかったもの、それは、どの選手にもバントをさせる徹底ぶりです。名のある外国人バッターでも、悪ければスタメンから外し、代打を送ることもいとわない。ピッチャーもダメならすぐに2軍へ落としました。

二宮: 確かに今シーズンの巨人は打撃ベスト10にひとりも入っておらず、主要タイトルは菅野智之投手の最優秀防御率だけでした。シーズンのMVPを予想するのも難しいほど、際立った結果を残した選手はいませんでした。
田淵: 今までの巨人は、“これだけのメンバーがいたら、負けないだろう”という戦力だった。ですが、今年は山口(鉄也)、(スコット・)マシソン、西村(健太朗)らリリーフ陣も盤石じゃなかった。チーム状態にも波があり、圧倒的な強さを感じませんでしたからね。ただ、終盤になって帳尻を合わせてきた。8月5日、新潟で横浜DeNAにサヨナラ負けを喫した試合で、私はラジオの解説をしていました。巨人は連敗中でしたが、私は中継の最後にこう言いました。「今が最悪の状態。下がり目はこれ以上ない。これからは上がっていくだけだ」と。

二宮: チーム状態が早く底に来たことで、9月の勝負どころでは逆に良くなっていると予想したわけですね。
田淵: それまでは選手も調子が悪ければファームに落として調整させていました。8月の終わりから9月、つまり競馬でいえば、ホームストレッチでムチを打つ時期に選手がバーッと戻ってくるわけです。一方の阪神は、主力選手を外したかというと、外せなかったんです。たとえば6番バッターの福留(孝介)に最初、バントを指示しながら、追い込まれるとサインを撤回したことがありました。1点をとるためには、彼をバントの巧い選手と交代させてもいい。そういう采配の差が巨人と阪神の差だと思う。非情といえば非情ですが、勝つためには、みんなが同じ目線で考えないといけない。

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