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フランシス・フクヤマ(『歴史の終わり』著者)「世界の知性」に独占インタビュー60分世界の「新しいルール」について話そう

冷戦終結直後、民主主義の優位を宣言してベストセラーとなった『歴史の終わり』の著者が、現代国際社会の難題に答える。傲慢な隣国、中東で燻る紛争の火種—。激動のなか、日本が生き残る術を聞いた。

中国は挫折を経験する

ここ20年を振り返って、世界に最も大きな変動をもたらしている存在が、中国であることは間違いありません。共産党による一党独裁の大国である中国の台頭が、民主主義と自由な市場経済で反映してきた欧米、東アジア諸国の人々の目に、脅威に映っています。

そして、ますます過激化するイスラム国に、欧米は恐れ慄いています。9月に出版した〝Political Order and Political Decay(政治の秩序と政治の劣化)〟でも書いたことですが、産業革命以後は、民主主義という政治システムが国境を超えて広がっていった時代であるとともに、それに対抗する存在との軋轢の時代でした。近年、新勢力の勃興によって、それが次のフェーズ(局面)に入ったと言えます。

ただし、「中国が覇権国家となり、かつてのソ連のようにアメリカと2国間で競う世界が訪れる」「イスラム国が国境を超えて勢力を拡大する」という不安については、私はノーだと考えます。新しい勢力の台頭の先には、そのような危うい予測とは異なる「新しいルール」で動く世界が待っているのです。

まずは、中国についてお話ししましょう。中国についてポジティブな面をあげるとすれば、経済の成長はしばらく続くということです。たしかに、インフラの整備を支えた高利回りの不動産開発投資は、どんな問題を引き起こすか分かりません。しかし、たとえ成長率が4~5%まで落ちたとしても、日本をはじめとした周辺国よりも上回っている。非常にパワフルです。

国内に政情不安を抱えてはいますが、すぐに「アラブの春」のような大規模な抗議活動が起こるとは思えません。習近平の中国はアラブ諸国に比べ、よりデモに強い。それは、指導者の10年という任期制限など、過度の権力集中を避ける政治制度がしっかりとしていて、いまのところ経済運営も上手くいっているからです。共産党は、国民のニーズにも敏感です。

一方で、現在の中国は建国から65年の歴史しかなく、まだ「若い」。目の前の成長だけで、彼らが「真の成功」を得ているか、すぐに結論は出せません。

中国のネガティブな面が、長期的に見た場合の、経済と政治の不安です。ここ10年で目覚ましい成長を遂げた中国も、次の10年では危機を迎え、環境問題をはじめ、多くの挫折を経験する過程にある。特に、次の世代の就職難は、大きな不満を生むでしょう。

社会が成熟するにつれて、中間層がぶ厚くなり、教育を受けた国民は政治参加を欲します。その教育を受けた層の働き口が足りないのです。彼らは、政府により高いパフォーマンスを求めるようになり、社会運動は活発化します。

香港での民主化デモは、かつてイギリスの統治下であった香港が民主的な社会だったところに、中国の統治下になったために発生した、先行的な事例と言えます。共産党は国民に突き上げられ、統治の正統性の問題に必ずや直面します。

グローバル化のなかで、責任ある政府と、政治の透明性、個人の自由というルールを他国と共有する。何よりそれを国民から迫られるのです。つまり、共産党独裁の中国は崩壊します。その後には、民主化した新たな中国が現れるでしょう。そして、『歴史の終わり』('92年刊行)で書いた世界が訪れるのです。

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