官々愕々 宮沢経産相は「官僚の守護神」

本コラム(10月11日号)で、安倍改造内閣の目玉として経産相に就任した小渕優子氏に関連して、「従順な大臣に暴走する官僚。最悪の組み合わせになってしまったようだ」と書いたのだが、その小渕大臣があっという間に辞任してしまった。

安倍総理が後任として投入したのが宮沢洋一経産相だが、この人もまた、就任直後からSMバーへの政治資金支出問題、外国人株主が過半を占める企業からの献金を受けた件などで追及を受けている。

一方、安倍政権や自民党はもとより、マスコミ政治部の記者たちの中に、こんな下らないことにエネルギーを割かないで政策論議をするべきだ、という声も出ている。ところが、安倍内閣の最大の問題は、カネの問題ではなく、実は、行政を適正に執行する能力に大きな疑いのある閣僚が多数いるという点にある。

経産相の前後任二人の「能力」を比較してみよう。小渕氏の能力のなさは、国会答弁や記者会見のやり取りなどでマスコミや霞が関官僚の間では評判で、経産相という重責が担えないことは既にはっきりしていた。早めにクビにできたことは安倍政権にとっては不幸中の幸いだったかもしれない。

では、財務官僚OBで、永田町で「政策通」と言われる宮沢氏が進めるであろう政策は信頼できるのであろうか。

まず、心配になるのは宮沢氏が東電株を保有していることだ。福島の大事故の後、まじめな政治家なら、東電との癒着を疑われないように株を売却するものだ。しかし、氏の東電株は含み損状態なので、持ち続けて東電株が上がるのを待っていたらしい。そんな人が経産相をやるというのでは完全な利益相反だ。株式を信託して売却できないようにしたと言い訳しているが何の意味もない。売却しなくても、東電に都合の良い政策を連発して東電株が値上がりすれば宮沢氏にとっては万々歳だからだ。

宮沢氏のもう一つの問題は、福島に行ったことがなかったことだ。菅官房長官は、宮沢氏が復興支援に尽力したというが、震災からすでに3年半。一回も行っていなかったというのは驚きだ。何故だろう。

官僚だった私にはわかる。氏は、財務官僚の典型なのだろう。現場は見ずに、机の後ろにふんぞり返って、国民からの陳情に答えてやっているという上から目線。こんな人に住民目線の政策は期待できない。

しかし、宮沢氏の最大の問題は、これまで述べたことではない。何かというと、それは氏が「官僚の守護神」だということだ。私はその実態を見たことがある。私が公務員改革事務局の審議官をやっていたとき、彼はせっかく作った我々の公務員改革法案を徹底的に骨抜きにしようと画策した。彼は「過去官僚」として、つまり官僚にとって何が重要か最もよくわかっている政治家の一人として、官僚を守るために必死に働いたのだ。

宮沢氏は、今後、原発再稼動も含め、経産省が抱える数々の問題の処理に当たって、経産官僚の利権をうまく温存することによって彼らに大きな恩を売れば、それを自らの利権につなぐことができる。そして、経産省の官僚から見れば、官僚の利害を熟知した大臣であれば、修羅場で想定外の事態になっても応用動作が可能で、その場で官僚をうまく守る振る舞いができると期待する。それこそが、霞が関でいう「政策通」である。

小渕氏のスキャンダル辞任で暗雲が垂れ込めたかに見えた原発再稼動。宮沢経産相がスキャンダルをうまく乗り切ってくれれば・・・・・・。経産官僚たちはそう願っているのではないだろうか。

『週刊現代』2014年11月15日号より

 

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