干場の究極ワードローブ! キーワードは"エコラグ"
第10回 バランタインのカシミアニット

ユナイテッドアローズ別注 バランタインのカシミアニット

数々の男性誌に携わりながら、編集者として、ファッションディレクターとして、さまざまなアイテムを見てきた編集長の干場義雅が、40代の男性のライフスタイルを豊かにする厳選したワードローブをご紹介。腕時計や靴・鞄、スーツのように長い年月使えるものは減価償却できるので高額でも良い、しかし白シャツや白い無地のTシャツのように常に白いまま着たい消耗品は、高額なものよりコストパフォーマンスを重視した方が経済的だと言います。「多くの粗悪なものより少しの良い物を」「移り変わる流行よりも普遍的で美しいものを」。干場が掲げる哲学を突き詰めていくと……、ブルース・リーが提唱した無駄を排した最短の動き(エコノミック・モーション)で相手を倒すジークンドーのように、経済的かつ無駄のない、シンプルで美しいスタイルが浮かび上がってきます。足ることを知れば、自ずと本質的なワードローブが揃うのです。第9回はコチラ

着るだけなく、腰に巻いても肩に掛けても様になるバランタインのカシミアニット

大人の男性にとって、カジュアルなスタイルときに1枚持っていると重宝するのがカシミア素材のニット。数あるニットの素材の中でも、軽くて暖かく、大人が満足出来る心地よさを実感できるのがカシミア素材だからです。希少素材なため多少高額にはなりますが、ベーシックな色で、無地を選べば、流行に関係なく長年着続けることができます。

所有しているブランドは、ロロ・ピアーナエルメスブルネロ・クチネリキートン、バランタイン、クリスチアーノ・フィッソーレ、レ・コパン、ジョン・スメドレークルチアーニラルフ ローレンとまちまちですが、デザインは、丸首、Vネックなど、首回りのデザインの違いはあれ、どれも極めて普通のものばかりです。流行のデザインは一切着ませんし、柄物もほとんど着ません。

なかでも、今回ご紹介しているカシミアのニットは、1921年にスコットランドで創立した老舗ニットウェアブランドであるバランタインにユナイテッドアローズが別注したもの。バランタインは、特級から4級までの5段階に分けられるカシミヤ原毛の中でも特級のみ、最高ランクのものを使用し、高級メゾンにもカシミアを提供していたファクトリーブランドです。最近よく「カシミアの流通量は、その生産量の数倍」という素材偽装のニュースを耳にしますが、そんな問題ともまったく無縁な信頼できるブランドなのです。

ニットには、編み目を荒めに仕上げるローゲージや、細糸を使用して編み目を細かく仕上げるハイゲージがあります。ローゲージは手編みを起源としておりアウター的に着るもの。ハイゲージは技術の発達によって後に誕生したため薄くて使いやすいのですが、着られる時期が限られてしまいます。ですので、インナーとしても上に羽織るアウターとしても利用できるミドルゲージが汎用性も高く、とにかく使い勝手が良いのでお勧めです。

ビジネスシーンだけを考えますと、最近はスーツがより身体にフィットし、腕も細身なシルエットが主流になっているため、前身をボタンにしたハイゲージのベストが流行していますが……。ミドルゲージのカシミアニットを重ねるのを前提にしてフラノのジャケットを購入するというのも風格を感じさせて、格好良いと思います。イタリアの伊達男として知られるジャンニ・アニエッリなんかは、まさにそんな着こなしをしていました。

一方、カジュアルシーンでは、先日紹介したヘインズのTシャツの上にサラッと羽織ってブルージーンズを合わせても良いですし、着るだけではなくて腰に巻いたり、肩に掛けたり、とにかくさまざまな使い方ができ、様になりますので、出張や旅行の際にも重宝します。

小物は別ですが、ニットというのは男性のファッションアイテムの中で数少ない“色”を楽しめるアイテムです。僕自身も、ニット以外のアイテムに関しては、基本的にベーシックな色しか着ないんですが……、意外にもニットに関してだけは綺麗な色も好きなんです。ですから、何年もかけて1枚ずつ増やし、ずっと集め続けています。白、黒、ライトグレー、ミディアムグレー、チャコールグレー、ネイビーなどの、“干場8色”と呼んでいる基本色はもちろん、オフホワイト、ミルクティ、ベージュ、キャメル、モカ、ピスタチオグリーン、ベビーピンク、ピンク、サックスブルー、オーシャンブルー、オリーブまで、いろいろと集めています。最初の1枚は汎用性の高い色を購入し、余裕があればグラデーションで揃えていくのも素敵です。

安価なニットを毎年のように買い替えて、毛玉ができては処分してを繰り返すのはまったく経済的ではありません。多少高額でも、長く楽しめるカシミアニットを、色を楽しみながら増やしてみてはいかがでしょうか? 大切に扱えば10年以上は余裕で持ちます。こういうアイテムにこそ投資して、良いものを揃えていくのが「エコラグ」の考え方なのです。

Photo:Yasuhisa Takenouchi
Text:FORZA STYLE

エコラグ-Hoshipedia
「エコラグ」とは、エコノミック・ラグジュアリーの略。economic luxury。極めて経済的だが、上質さやエレガンスは失わないスタイルの意味。「多くの粗悪なものより少しの良い物を」という干場の哲学により生まれた造語。腕時計や靴・鞄、スーツのように長い年月使えるものは高額でも、白シャツや白無地のTシャツのように常に白いまま清潔に着たい消耗品は、高額なものよりもコストパフォーマンスを重視するというスタイル。パテック・フィリップの腕時計やジョン・ロブの靴と、カミチャニスタやデッコーロの白シャツ、GAPの白無地のTシャツは干場にとっては同じ。一点豪華主義とも違う。干場が敬愛するブルース・リー先生が提唱した無駄を排した最短の動き(エコノミック モーション)で相手を倒すジークンドーのように、経済的で盛り過ぎない、かつ無駄のないシンプルで上質なスタイルを指す。

干場義雅
FORZA STYLE編集長

数々の男性誌に携わりながら、編集者として、ファッションディレクターとして活動。2010年に独立後は、新聞、テレビ、雑誌、ラジオなどメディアの枠を超えて多方面で活躍中。