オックスブリッジの高等教育の強み~考えて、調べて、書いて、論じる「スーパービジョン」
オックスブリッジの学部教育Ⅱ
生徒の論文指導をするスーパーバイザーの様子1対1に近い少人数の「家庭教師」制度はオックスブリッジ特有の教育システムである
大久保郁子
1991年生まれ。ケンブリッジ大学音楽教育学部専攻、同大学院教育心理学修士課程を修了。ホマトンカレッジに所属。修士論文では日英の大学生の比較を通して、環境が個人の社会的アイデンティティに与える影響についての研究を行った。2012-13年度の日英会(AJS)会長。趣味はカメラとバスケットボールとバイオリン。大学の公式交響楽団に3年間所属し、カルテット活動(ラヴェルの弦楽四重奏)にも励んだ。

" Tutorial/Supervision"とは

連載第一回(徹底的な個人指導〈チュートリアル〉 ) で紹介したように、オックスブリッジのスーパービジョン(チュートリアル)は、オックスブリッジの高等教育の最大の強みと考えられている。オックスフォードではチュートリアルと呼ぶが、筆者がケンブリッジ大学出身であることもあり、以下、「スーパービジョン」と呼ばせていただければと思う。

Tutor(家庭教師)を意味するこのシステムは、「チューター」(オックスフォード大学での呼び方)や「スーパーバイザー」(ケンブリッジ大学での呼び方。「チューター」は、生徒の学業面以外の面倒をみる教員を指す)が、1〜4人という少人数の学生を対象におこなう。

このクラスは、選択した講義に必ずついてくるものなので、例えば、週5コマ講義をとると、5コマのスーパービジョンを取らなければならない。それぞれの講義で学んだことをもとに、さらに専門分野について、徹底的に議論する。そのため、その分野の知識を深く学ぶことができるだけでなく、各自発言をせざるを得ない。そういう意味では、議論の力を鍛えることにもなる。

何よりも、年度末の試験対策にもなるので、学生も真剣そのものである。オックスブリッジの成績は年度末の試験だけで評価されるので、日常のスーパービジョンで書いた論文やレポートは、成績の対象にはならない。しかし、学生は手を抜かない。なぜなら、年度末の試験で落第点がつけば、留年や追試はなく、退学につながるからである。日常の論文やレポートに対するアドバイスをもとに、合格できる論文やレポートの書き方を学ぶ。

スーパーバイザーは主に教授だが、博士課程在学の学生である場合もある。スーパービジョンは、大概ごく普通の小さな教室や教授の部屋で行われるが、ここで行うの? と思わず疑ってしまうような場所で行われることもある。例えばパンティング(写真参照)をしながら、教会で、パブで何杯も飲みながら……。場所よりも内容が大切ということか。

パンティング〜ここでスーパービジョンが行われた例あり