天才・中島みゆきから最強の主題歌を得た朝ドラ『マッサン』はどこまで支持を伸ばすのか
NHK『マッサン』HPより

不世出の天才歌姫・中島みゆき

「天才」という言葉は本来、軽々しく使うべきではない。自戒を込めて書くが、この言葉をテレビをはじめとしたマスコミは好み、安易に使い過ぎる。「天才子役」「天才少年棋士」「天才少女ゴルファー」---。しかし、天才とは類い稀なる能力を持つ超人であり、そう簡単には現れない。天才が5年後、10年後に普通の人に戻ってしまうこともない。

けれど、シンガーソングライター・中島みゆき(62)は数少ない本物の天才の一人に違いない。仕事柄、音楽記者はもちろん、音楽関係者との付き合いもあるが、彼女の図抜けた才能を否定する人と出会ったことがない。誰もが賞賛する。不世出の歌姫だ。

デビューは1975年で、二枚目のシングルは「時代」。当時の中島はまだ23歳でありながら、この1曲に、諸行無常や輪廻など人間の営みの真理を凝縮することに成功した。どんなに言葉を並べても、簡単には説明できないことを易々と言い表してしまったのだ。この1曲だけで早々と天才であることを世に知らしめた。

しかし、「時代」は当時、約16万枚しか売れていない。ヒットチャート(オリコン)の最高順位も14位。天才は周囲から簡単には理解されないが、この曲も昭和元禄に浮かれていた世間にはピンと来なかったらしい。正直なところ、凡人の筆者にも当時はよく分からなかった。

ところが、この曲は世間がどう移り変わろうが、色褪せることなく、聴き続けられ、歌い継がれ、幾多の人の心を癒やした。日々が順調で浮かれているときには忘れてしまいがちな曲だが、挫折や深い悲しみに直面すると聴きたくなり、耳にすることで救われる。誰にでもこの曲の意味が分かる日が来る。3.11で列島が絶望感に包まれたときにも大勢の人々に聴かれ、歌われた。

流行歌は世間を写す鏡だが、「時代」の場合、世間が後から追いついてきた気がする。文化庁などが「日本の歌百選」に選んだのは2007年になってからのことだった。

同業者も不朽の名作と認めているようで、カバーした歌手は数え切れない。岩崎宏美、工藤静香、薬師丸ひろ子、徳永英明、八神純子、大橋純子、一青窈---。

教科書にも載り、小中学校の卒業式でもよく歌われるらしいが、これは教育委員会や教師の後押しに過ぎないだろう。

♪だから 今日は くよくよしないで 今日の風に吹かれましょう

こんな一節に涙する老成された小中学生がいたら、ちょっと気持ち悪い。この曲は蹉跌をいくつか経験しなければ、その意味が分からない気がする。逆に一青窈を知らない80代、90代が聴いたら胸を突かれるに違いない。