The New York Times

シニア世代の健康への不安はもう要らない!?

『現代ビジネスブレイブ グローバルマガジン』---「ニューヨークタイムズ・セレクション」より

2014年11月01日(土)
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エドワード・コーエンは昨年、80歳になったらまたタバコをはじめると発表した---〔PHOTO〕gettyimages

何歳に達したら、残された人生を無視できるのか?

シンガーソング・ライターのレオナード・コーエンは、タバコを片手に今週末の誕生日を祝う。彼は昨年、80歳になったら喫煙を再開すると発表したのだ。「タバコをはじめるには、ちょうどいい歳だ」と彼は説明している。

何歳であっても喫煙の再開が賢いとは言えない。喫煙者にとっても、受動喫煙となる周囲の人間にとっても、喫煙は長期にわたる健康上の問題だけではなく、感染症やぜんそくなどの、急性的な症状においても苦しむことになりかねないからだ。しかし、コーエン氏のこの計画は、いまの楽しみを満喫するために、一体、何歳から自分の先の人生を無視すべきなのか、という挑発的な問題を投げかけている。

20世紀初頭のアメリカでは、80歳以上の人口はわずか0.5パーセントだった。当時の先進工業国の主要な問題は、結核やポリオ(急性灰白髄炎)などの感染症であって、骨粗しょう症などの老化に伴う疾病の多くは、病とすら考えられていなかったのだ。

しかし、いまやアメリカの3.6パーセントが80歳以上となり、回避すべき行動や、服用すべき薬によって人々の生活は厳しく規定されている。65歳以上の半数以上が、5種類以上の処方薬や市販薬、またはサプリメントを服用しており、その多くが急性症状を治療する目的ではなく、将来、病気になるリスクを緩和するための薬なのだ。その対象は脳卒中、心臓発作、心不全、腎不全、股関節骨折と多岐にわたっており、米国保健社会福祉省による2025年までのアルツハイマー予防計画がこれに加われば、この傾向にさらに拍車がかかることになる。

21世紀における高齢化とは、つまるところリスクの軽減化を意味する。保険会社は、定期的にジムに通う顧客に対してはご褒美を与え、タバコの喫煙者に対しては罰を与える。医師が心臓疾患のリスクを軽減する薬を処方したあとでも製薬会社が「残存リスク」を警告し、さらなる薬を処方する。「あなたの健康があなたの資産! 長寿バンザイ!」という、とあるフィットネス商品のキャッチフレーズは、現代の精神をうまく表現していると言える。

しかし、健康貯金をやめて、元本の一部を切り崩すタイミングは、一体いつなのだろうか。仮に自分はもうすぐ死ぬだろうと思えば、タバコに火をつけ、アスピリンやスタチン、血圧降下剤の日常的な服用はやめるだろう。お金は将来の不安のためではなく、友人と食事に行くといった、現在の楽しみのために使うだろう。

寿命が予測できてしまうサービスの出現

予防に関しては“やり過ぎ”ということもあり得る。米国予防医学専門委員会(USPSTF)は、予防ガイドラインの裏づけとなる証拠を定期的に見直し、予防のメリットは、一定の年齢を過ぎれば、検査や手術、薬に伴うリスクや煩わしさに見合わないことを明らかにした。

たとえば、最近の米国心臓病学会と米国心臓協会による、コレステロール治療に関するガイドラインでは、向こう10年間に心臓発作や脳卒中、または心臓病を患い、それが原因で死亡するリスクを計算する年齢の上限を79歳と設定した。また75歳以上の心臓病ではない人がスタチンの服用をはじめるメリットはおそらくないであろうとした。しかし、誰もがこういったアドバイスに従うとは限らない。

さらに、75歳という年齢は、現在では65歳くらいに相当するのではないだろうか?健康貯金をいつやめるのかという問題の基準を年齢に置くのは大雑把すぎる。コーエン氏の80歳は、本当に80歳なのだろうか。彼は70代なかばでも、次から次へとステージをこなし、厳しい巡業のスケジュールも維持してきたのだから、喫煙の再開はおそらく早すぎるだろうと思う。

次ページ 予想科学の進歩がこれらの質問に…
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