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山口高志×江夏豊「史上最速の投手は誰か、今日こそ決めようやないか」
プロ野球スペシャル対談『君は山口高志を見たか』刊行記念 

2014年11月06日(木) 週刊現代
週刊現代

山口 はい。テレビで見たんです。ただ、プロに入ってベンチから見ると、より「凄み」を感じました。マウンドからホームベースまでの18・44メートルが、短く見えるんです。これは今まで、江夏さんだけにしか感じませんでした。

江夏 俺は投球の「間」を大事にしていた。言葉で説明するのは難しいんやが、リリースまでできるだけ長くボールを持ってから、一気に投げ込むというのかな。長くボールを持った分だけ打者はタイミングが取りにくく、身体が前に突っ込む。距離が近く見えたのも、その「間」のおかげだと思うわ。

わかっていても打てない

『君は山口高志を見たか』(鎮勝也著・講談社刊)

山口 球筋も美しかったですよね。ボールが、キャッチャーミットへ吸い込まれていくんです。まるで、指先からキャッチャーミットまで、一本の糸がつながっているようでした。糸をひくとは、まさにあれです。コントロールも抜群で、同じ速球投手といっても、僕とは全くタイプが違いました(笑)。

江夏 高志のイメージは、まさしく「剛」だろうね。同じタイプを探すと、東映の尾崎行雄さんもそうだったな。

山口 尾崎さんと戦った選手は、「最速だった」と言う人も多いですよね。

江夏 高志と同世代には「剛」のタイプの選手はいないかもな。巨人の堀内恒夫、大洋の平松政次、近鉄の鈴木啓示らも、確かに速かった。だが、ボールの威力という点では、高志の直球のほうが上だった。

山口 僕には、直球しかありませんでしたから。

江夏 絶対に真っ直ぐだとわかっていて、真っ直ぐで打ち取る。それが「剛速球」であり、それを投げられるピッチャーが「怪物」なんだ。俺が「怪物」だと思ったのは、高志以外だと、江川卓やな。巨人へ入団した頃の江川も、真っ直ぐしかない場面で平然と直球を放って空振りをさせていた。あれは全てのピッチャーにとって憧れだよ。

山口 江夏さんはほめてくれますが、僕は直球にこだわりがあったというより、本当にそれだけしか頼れるボールがなかったんです。一応カーブもありましたが、入団後すぐに、僕のカーブがプロの世界では通用しないことがわかった。そこで、直球でプロに入ったのだから、行きつくところまで行こう、と覚悟を決めたんです。

江夏 実はな、俺もプロ入りしたときは、ストレートしか投げられなかったんや。「一応」のカーブもなく、本当に直球だけ。長いプロ野球の歴史のなかでも、ストレートしか放れなかったのは俺ぐらいやろう。

山口 それで1年目に12勝したんですから、すごいですよね。カーブを投げ出したのは、いつからですか。

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