「文章力は、伝達力の基本」
【第5回】文章を書く前に、知っておくべきこと

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【第4回】はこちらをご覧ください。

前回解説した「文章を書く前に自分で明確にしておくべきこと」とは別に、「事前に知っておくべきこと」があります。

じつは、文章力がない人は、この「事前に知っておくべきこと」を知らないからこそ文章が下手、といえるほど重要なものです。

では、何について事前に知らなければいけないのか? それは「読み手」についてです。

率直にいうと、これを知らずにうまい文章を書くことはできません。表現力や"うまい言い回し"などに気を使う前に、まず「この文章を読むのは誰なのか? どんな人なのか?」を知らなければいけません。

読み手はいったい誰なのか?

文章を書き始める前に、みなさんが知っておかなければならないことがあります。それは、「読み手は誰なのか?」ということです。みなさんが書こうとしている文章は、いったい誰が読むのか、ここをしっかりと意識しなければいけません。さらには、自分が直接送る/渡す人以外に、他の誰かが読む可能性はあるのかどうかも考えなければいけません。そこまでが「読み手が誰なのかを知るプロセス」に含まれます。

「課長への報告書」であれば、読むのは「課長」です。でも直属の課長だけでなく、「部課長会に出席しているメンバー」もみなさんが書いた報告書を読むかもしれません。

「クライアント向けの提案書」であれば、普段やり取りしているクライアント担当者意外にも、先方社内での検討会議に出席している方々も「読み手」となる可能性があります。
なぜ読み手を明確に意識しなければいけないのか? それは、読み手によって書き方、書くべき情報を変えるべきだからです。これはとても簡単そうですが、なかなか簡単にはできません。少し気を使う必要があります。

たとえばこういうことです。直属の課長であれば、みなさんが手掛けている業務について、ほぼ理解しています。当然「自社商品」についての知識もあり、どういう戦略で売ろうとしているのか、みなさんがどのクライアントに売り込みにいているのか、といったことも知っているはずです。

そのため、課長に対する報告書には、「わたしは、××という画期的特徴の商品○○を担当しており・・・」という前提情報は不要です。むしろ、こういう基本的すぎる情報は邪魔です。こんな情報を入れ込んでしまうと、文章が長くなり本当に伝えたいことが伝わらなく恐れがあります。よって書くべきではありません。

また、その報告書を読む可能性がある部課長陣も、同じ会社内の人間ですから基本的なことは知っているでしょう。ただし、みなさんが担当している個別の企業までは知らないかもしれません。ここでクライアント名を略語で記載してしまったり、「暗黙の了解」と考えて必要な情報を省略してしまうと、読み手は「これはどこの企業?」「なぜA社への売上予測がこんなに高いのか?」と疑問を感じ、みなさんの文章を理解できなくなるでしょう。

口頭で補足する場が与えられていればそれでもいいかもしれません。しかし、書いた文章は「単体」で読まれる可能性もあります。むしろ単体で読まれることのほうが多いかもしれません。そのため、口頭で補足しなくても読み手が理解できるように書かなければいけないのです。

クライアント向けの提案書も同様です。提案書を書いている営業担当者(みなさん)より、クライアントの方が商品知識がないのが通例です。そのため、書き手にとっては当たり前の内容でも、「相手は知らないだろう」と考えて書くべきなのです。

さらに、クライアントはみなさんから受け取った提案書を上司に見せ、部内で検討します。その「上司」「部内の他の方々」は、みなさんの商品について、ほとんど知らないでしょう。「初めて知る」という人もいると思います。その方々にも分かるように書かなければいけません。つまり、みなさんが普段話をしている担当者以外が読むことも想定して書くべきなのです。そこまでを含めて「読み手が誰なのか?」を考えなければいけません。

「誰が読むのか」を全く考えずに書くと、「読み手が理解できない文章」になってしまう恐れがあります。また、文書・提案書を直接渡す相手だけを想定して「これについては、先日お伝えした内容と同様です」などと書いてしまうと、その他の人には伝わらない文章になってしまいます。これではその文章の目的は達成されませんね。

「こんなことぐらいできている」とないがしろにせずに、いったん立ち止まって、「誰が読むのか?」「誰が読む可能性があるのか?」を考えてみてください。

もし分からなければ、「この文章は、他にどなたが目を通されますか?」と相手に聞いてみればいいのです。さらに「その方々は、弊社商品や、わたしが普段お伝えしている情報のうち、どのくらい情報をお持ちでしょうか?」と聞いてみればいいのです。

ここで「ほとんど知らないと思う」「報告はしているけど、深くは知らない」という返答であれば、「全く知らない人」でも理解できるような書き方にすべきです。

反対に「商品知識や技術知識を豊富に持っている人」しか読まないということであれば、「初心者向けの説明」はかえって邪魔になります。要点だけを並べたほうが「伝わる文章」になるのです。

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