北朝鮮に拉致調査の迅速化を迫る安倍政権の「アメ」と「ムチ」
〔PHOTO〕gettyimages

北朝鮮の特別調査委員会(委員長・徐大河国家安全保衛部副部長)による再調査の迅速化を促す目的で訪朝した日本政府代表団は、「拉致問題が最重要課題だ」との安倍晋三首相の強い意欲を伝えた。

徐委員長は、「朝日合意を履行しようとする意思の表れ」と、政府訪朝団の意向を前向きに評価しつつも、安倍首相が望むような回答を用意してはいなかった。

「日朝合意」に基づく「すべての日本人の再調査」のなかでも、横田めぐみさんら12名の拉致被害者の安否確認を日本政府が最優先課題としていることは、北朝鮮側もわかっている。また、日本側に「満足のいく回答」をもたらせば、前回の日朝合意後の制裁解除のように、北朝鮮側に優位な状況を作り出すこともわかっていよう。

だが、複雑な北朝鮮の権力機構のなかにいて、秘密警察として党幹部らから反発されることも多い国家安全保衛部は、日本政府に簡単にカードを切るわけにはいかないというジレンマを抱えている。

カギを握るのは「京都駅前の3300坪」

そんな北朝鮮の"揺らぎ"を見透かしたように、日本の警察による捜査が、絶妙なタイミングで始まった。

京都府警は、10月23日、大阪国税局伏見税務署の上席国税徴収官、佐土原桜茂容疑者(48)を、国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで逮捕した。

「捜査関係者によると、(佐土原容疑者が情報を漏らした)団体役員は60代で、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)傘下団体の在日本朝鮮京都府商工会の支部幹部。佐土原容疑者とは、10年前ぐらいに仕事を通じて知り合ったとみられ、一緒に韓国旅行へ行くなど親密な仲だった」(『日本経済新聞』10月24日付)

マスコミが連日、トップニュースで扱う北朝鮮との拉致問題を巡る交渉と、京都府警の国税徴収官逮捕が、どうして結びつくのか。

それには、日本政府が何度も交渉カードに使ってきた総連本部ビル問題を振り返る必要がある。

北朝鮮の事実上の大使館である総連本部ビルは、整理回収機構(RCC)によって競売に出され、曲折の末、四国の不動産会社・マルナカホールディングスが落札したものの、最高裁が売却手続きを停止する執行停止決定を出し、宙に浮いた状態だ。

一連の過程を、私は本コラム(『最高裁が朝鮮総連中央本部ビルの売却中断決定の裏側』2014年6月26日付)で書いたことがある。その際、カギを握る土地が「京都駅前の3300坪」であることについて触れた。当時、土地を所有する総連系企業が、土地売却代金で総連本部ビルを買収する、という情報が流されていた。

実は、その「懸案の土地」の代理人として、不動産業者などと接触していたのが、問題となっている「商工会の支店幹部」だった。京都では、大物として知られる。

「総連系企業の経営者などから『先生』と呼ばれて頼りにされていました。彼が得意なのは税務相談。税務相談を業務とする一般社団法人の事務局長を務め、国税局が商工会の関連企業に税務調査を入れる際、日程が分かれば教え、調査にも立ち会っていました」(朝鮮総連事情に詳しい人物)

そのために佐土原容疑者など国税幹部と親しくしていたわけで、京都府警は情報漏洩の次に、贈収賄での立件を目指している。そうなれば、佐土原容疑者が「収」なら、この商工会支店幹部は「贈」の容疑者である。

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