読書人の雑誌『本』より
2014年11月14日(金) 半田滋

若者たちが戦場に行かされる日---『僕たちの国の自衛隊に21の質問』著・半田滋

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防衛省・自衛隊の取材を始めて四半世紀。実にさまざまな人に出会います。将来の陸上自衛官を目指す若者たちもその一例です。取材に行ったのは、相模湾に臨む三浦半島の陸上自衛隊高等工科学校(神奈川県横須賀市)。生徒は中学を卒業して入ってきた15歳から18歳までの男子。少年の面影を残しています。

約960人が学ぶ同校の倍率は実に15倍。公立・私立の有名校との掛け持ち受験も多い、隠れた難関校のひとつです。卒業と同時に陸士長となり、約1年後には三等陸曹。20歳を前にして中堅陸上自衛官になるのです。

入校して最初に教えられるのはアイロンがけとボタン付け。生活指導は厳しく、全寮制です。教室の移動は毎回、整列します。一年生は携帯電話を持つことも許されません。二年生から射撃や戦闘訓練が始まり、三年生になると演習場に泊まり込んで本格的な演習を体験します。体育クラブはほぼ必修なので、卒業して陸上自衛官になるころには、礼儀正しくて筋骨隆々の若者に育つことになります。

一年生から三年生までの10人が集められ、取材に答えてくれました。東日本大震災で家を流された岩手県出身の三年生は、自衛隊の献身的な救援活動を目の当たりにして自衛官にあこがれたそうです。一人ひとり聞いていくと、8人が災害派遣で自衛隊のことを知り、受験したと答えました。

残り二人は国連平和維持活動(PKO)が志望動機でした。戦争や紛争の後に国連が各国の軍隊や文民を派遣して平和を取り戻す活動がPKOです。自衛隊本来の任務である「他国の侵略から日本を守るため」と答えた生徒は一人もいませんでした。同席していた陸上自衛隊の二等陸佐は、ちょっと慌てて「今ではみんな国防の意欲を十分、持っています」と付け加えました。

7月1日、自衛隊のあり方を根底から覆す閣議決定がありました。安倍晋三政権は憲法解釈を変更して、禁止されてきた集団的自衛権の行使を容認したのです。日本が攻められてもいないのに外国へ行って戦争しても良いことにしたのですから、「専守防衛」の看板は外さなくてはなりません。

変わってしまう自衛隊に、この学校に来るような良質な若者が集まるのだろうか、そんな心配をしていると、自衛隊の募集案内が7月上旬、全国の高校三年生宛てに一斉に送付されたという記事が新聞に載りました。このタイミングで自衛官募集のダイレクトメールとは、とちょっとびっくりです。

インターネットを利用したツイッター上では「赤紙が来た」「召集令状だ」といったつぶやきがあふれました。防衛省に取材すると、国は地方自治体が持つ住民基本台帳から適齢者の住所、名前などの個人情報を入手できるとのことでした。自衛隊に入ってほしいと考えた適齢者へ、いつでも募集案内を送付できるのです。

7月と8月の上旬には、AKB48の「ぱるる」こと島崎遥香さんが登場するテレビCMがオンエアされました。「自衛官という仕事、そこには大地や海や空のように果てしない夢がひろがっています」。自衛官募集の大がかりなCMでした。

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