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日本経済「隠された真実」ゴマかす、誇張する、知らんぷりする 安倍官邸と大新聞「景気は順調」詐欺の全手口

「消費税10%」のために、そこまでやるか!
〔PHOTO〕gettyimages

日々、買い物をしていれば、誰もが感じるだろう。景気回復なんて大嘘で、むしろ悪くなっているのではないか、と。だが、政府と大手紙は「景気は順調」と強弁する。国家的詐欺の内実を暴く。

どこの国の話ですか?

〈失業率改善3・5% 雇用は底堅く〉(9月30日夕刊)〈景況感小幅な改善 大企業製造業プラス13〉(10月1日夕刊)〈機械受注8月4・7%増 投資「緩やかな持ち直し」判断上方修正〉(10月9日夕刊)〈高島屋、営業益10%増 今期 高額品好調、外国客も増加〉(10月11日朝刊)

ここ1ヵ月、日経新聞の1面あるいは経済面に躍った見出しだ。日経新聞は、読者にこう思ってほしいのかもしれない。今月に入ってから、日本の景気は緩やかながらも確実に回復している。事実、失業率は低下し、高額商品の売れ行きも堅調ではないか。だから日本経済の見通しは明るいのだ、と—。

この論調、どこかで聞いたことはないだろうか。そう、これらは安倍官邸がアナウンスする経済見通しと完全に一致するのだ。甘利明経済再生担当相は10月14日の会見でこう述べた。

「世界経済に不確実性が広がり、日本経済はこのあおりを受けている。ただ、個人消費は弱含んでいるが、企業収益は過去最高で雇用情勢の改善は堅調、設備投資意欲も旺盛。個々の要素はいい」

だが、世界経済はそんな楽観論の入る余地がないほど、危機的状況を迎えている。10月15日、先行きへの不透明感からNYダウ平均株価が一時460㌦も暴落。それを受けて翌16日の日経平均株価も335円安となり、1万5000円台をいとも簡単に割り込んだ。

大新聞と安倍官邸が熱心に吹聴する「楽観論」は、世界経済の実態や我々の生活実感から、あまりにもかけ離れている。

たとえば、こんな記事がある。日経新聞10月10日夕刊は、10月20日に発表される9月の全国百貨店売上高の低迷が予想される原因をこう書いた。

〈昨年9月に比べ休日が1日少なかったことなどを受け、売り上げは前年同月を下回った可能性が高い。(中略)9月は休日減に加え、下旬に首都圏で気温が下がらず、秋冬衣料品の販売が伸び悩んだことも響いたとみられる。消費増税前の駆け込み需要の反動減については「特に都市部でほぼなくなってきている」(大手百貨店)との見方が多い〉

景気の不調は、アベノミクスの失敗が原因ではなく、天候や休日の数の問題だというのだ。そして9月以降、消費増税の悪影響は都市部で解消されていく、との見立てを示している。

だが、消費税アップによって物やサービスの値段が強制的に3%も上がり、しかも円安効果によってガソリンや食料品の値段も上がっている。気候や休日の影響ではなく、全般的な値上がりによって買い控えが生じ、それが今も続いていると考えるのが当然ではないのか。

経済評論家の山崎元氏も「大手紙の態度は誠実ではない」と批判する。

「天気や休日の数も影響がないとは言えませんが、それだけでは説明できない落ち込みなので、まずは景気の悪さを率直に伝えるべきでしょう。むしろ、そうした細かい原因を持ち出して説明せざるを得ないこと自体が事態の深刻さを物語ります。景気が悪くなったために経済指標も悪くなっているわけですから、新聞にはそれを素直に受け入れる真摯さがほしい」

また、9月30日には読売、毎日、日経の各紙夕刊が、総務省の発表を受けて〈失業率は改善〉〈8月失業率0・3ポイントの低下 女性の改善進む〉〈雇用は底堅く〉などと報じた。

しかし、実態は「改善」とは程遠いものだ。若者が正社員として就職することは依然として厳しく、就職先は非正規の職場ばかり。彼らの労働環境が「いかにブラックか」という話はいくらでも出てくるが、給料が上がったなどという話は聞いたことがない。

「確かに建設業や介護の分野は人手不足で雇用が増えていますが、大半は非正規社員の求人です。正社員だけ取ってみると、有効求人倍率は0・68倍と1倍を大きく割り込んでいます。しかし、この点については言及がなかった。意図的に無視をしていると指摘されても仕方がないでしょう」(全国紙経済部キャップ)

政権に対して最も距離を置く朝日新聞ですら、こんな記事を載せている。同紙は内閣府が発表した9月の景気ウォッチャー調査の発表を受け、10月9日付朝刊でこう書いた。

〈大雨や低温の影響は一段落したようだ。夏物商品が売れなかったコンビニや家電量販店では、景気の見方が好転した〉

実際は家電量販店大手4社の9月の売上高はすべて前年同期比割れ。ローソンの玉塚元一社長が「消費が好転するような材料は今のところない」と述べるなど、コンビニ業界も先行きは暗い。

本当は景気が良くないとわかっているのに、紙面ではゴマかす、誇張する、知らんぷりをする—。これではもはや、安倍官邸と大新聞による「景気は順調」詐欺ではないか。

日本総研副理事長の湯元健治氏は「景気は悪くなっている」と喝破する。

「たとえば今年上半期の新車販売台数は前年同期比2・8%減で、10月に入ってもプラス転化はできそうもありません。家電販売も9月前半まで2桁のマイナスが続きました。百貨店やスーパーなどの売上高も、前年割れを脱することができません。自動車や電機、IT機器を中心に在庫の積み上がりが見られるため、今後は生産調整によって在庫を減らす『在庫調整局面』に入ります。要するに景気は少しも良くないのです」

にもかかわらず、政府と大新聞が景気後退に警鐘を鳴らすことができないのはなぜか。湯元氏が続ける。

「そう言ってしまうと、年末に決定する来年10月からの消費再増税ができなくなってしまうからです。さらに今回延期すると、将来的にも『景気が悪いので難しい』という状況が続いて、いつまでも再増税できない可能性もあります。そういう事情もあって、『景気は弱含みで推移』と報じられるのでしょう」

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