沼口麻子の「サメに恋して」
2014年10月26日(日) 沼口 麻子

本当にコワいのはサメではない! まるで映画『ジョーズ』のようなシャチVS漁師の実話

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シャチの逆襲

「昔はね、シャチが近海マグロはえ縄船でかかったサメを食べることはほとんどなかったんだけどね、10年ほど前から、シャチやゴンドウイルカが、かかったサメをとりにくるようになった。シャチはヨシキリザメの胸びれの下の柔らかい部分を知っているんだなぁ。そこに噛み付いて、内蔵だけを食い散らかしていくんだ。船が一旦、シャチやゴンドウの群れに狙われたら、それはもう恐ろしい……」

近海マグロはえ縄漁 イラスト:村上智勝

そう語るのは、気仙沼漁撈通信協会会長の吉田義弘さん。ヨシキリザメやメカジキを狙う近海マグロはえ縄船に50年も乗っていたベテラン漁師だ。吉田さんが乗船していた近海マグロはえ縄船では、総延長123kmの幹縄に4000~4400本の針をつけて流す。一回の操業で縄をあげる作業時間は、通常11~12時間。これだけでも重労働だが、縄がもつれたり、幹縄が切断されたりするなどの予期せぬハプニングがあれば、連続作業は24~48時間にもなるという。

そんな近海マグロはえ縄船の操業中において、一番怖いのはサメではなく、シャチだというから驚いた。

また、かれらの本当の怖さは漁獲物をとっていくだけではない。吉田さんは話を続けた。

「(サメやメカジキがかかった)縄をひっぱっているときにシャチがサメを襲うと、その反動でひっぱる人が海に引きずりこまれる危険性がある。俺はシャチを見つけるたびにマイクで叫ぶんだ。」

シャチやゴンドウの仲間は水族館のイルカショーでも愛嬌のある人気者。信じられないかもしれないが、野生下では容赦のないプレデター(捕食者)で、ときに漁師を死に至らしめる可能性もあるという。吉田さんは船員の命を守るために、操業中は海上を常に確認し、シャチの出現状況の周知徹底をはかっていたそうだ。

「シャチは復讐心が恐ろしく強い」

吉田さんは漁師経験の中でも忘れられないエピソードをため息まじりに語ってくれた。

大目流し網漁イラスト:村上智勝

「大目流し網漁船に乗っていたときのことなんだけどね」

 大目流し網漁とは、15~18cmの比較的大きい網目の網を使い、マグロ・カジキ・サメ類を狙う漁のこと。網に突っ込み、逃れられなくなった魚を漁獲する。

「たまたまシャチの子どもが網にかかってしまった。」

 大目流し網漁船は、左舷側から網をあげるのだが、その反対の右舷側の海から、強い視線を感じたのだという。

「船の右舷側からシャチが立ち上がって船の中を覗き込んでいたんだ。あわててその漁場を逃げた記憶がある。」

シャチが水面から垂直に身体を突き出し、背筋も凍るほどの気迫で船の中の船員たちを睨みつけていたそうだ。シャチは大変復讐心が強く、自分の親兄弟を一頭でもいたずらしようものなら、1週間でも船についてきて、いつまでもいつまでも漁を妨害してくるのだという。

まるで小説の「白鯨」か、映画の「ジョーズ」を髣髴とさせるシャチと可哀そうなサメのことで話は盛り上がったが、次に、私は、「サメは臭いか、美味しいか」問題について尋ねてみた。そうしたら、腰を据えて話したいということになり、急遽、吉田さんのご自宅へお伺いさせてもらうことになった。

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