日本政府がついた「普天間飛行場の2019年2月までの運用停止」というウソ

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」 文化放送「くにまるジャパン」発言録より

沖縄の普天間飛行場---〔PHOTO〕gettyimages

伊藤: 朝日新聞1面です。「普天間飛行場の2019年2月までの運用停止 アメリカは拒否の構え」

アメリカ国防総省の当局者は今月15日、日本政府が目指すアメリカ軍普天間飛行場の2019年2月までの運用停止について、「日米が合意した22年度以降の返還が唯一の方策だ。日本政府から正式な要請はない」と述べ、アメリカ政府として受け入れる考えがないことを明らかにしました。

国防総省の当局者は朝日新聞の取材に対し、「19年2月の運用停止についてアメリカ政府は同意していない」と明言。「日米間でそうした話が出たとしても、日本側からの一方的な打診であり、正式な要請はない」と説明しました。アメリカ政府は、日本政府から正式な要請は受けていないとの立場を示すこうした説明で、日本の打診を事実上拒否する意向を明確にしたと言えると、記事では伝えています。

邦丸: もう沖縄県知事選挙が近づいてきました。そのなかで、安倍内閣の菅官房長官が2019年――今からおよそ5年弱後には普天間飛行場は閉鎖して日本に返還してもらうということを今、やっているんだという。ところが、アメリカ側にしてみれば、「いろんなこと言っているみたいだけど、オレたちはちゃんと聞いていないからね」ということのようですが、これはどういうことですか。

佐藤: ウソをついているということですよね。沖縄と日本国内には、「2019年2月までに閉鎖する」と言って、アメリカには言わない。あっちにはこう言い、こっちには何も言わないというのは、ウソをついているということですよね。

邦丸: アメリカ側からすると、完璧に返還できるのは代替施設である辺野古沖の海兵隊施設がすべて完成して運用できるような状況、これが2022年ですか、それまでは普天間は運用停止しないという。

佐藤: 2022年にしてもたぶん、なかなかできないと思うんですよね。海兵隊ありきということで考えているというところに、そもそもの問題があるんですけれど、それについては脇に置いておいて、とにかくすぐに露見するウソをついてはダメですよ。

邦丸: これ、ウソって言えますか。

佐藤: 明らかにウソです。


伊藤: 日本政府がウソをついたということですよね。

佐藤: そういうことです。最初から、つまり去年の12月に「2019年までの閉鎖」ということを菅(官房長官)さんと仲井眞(沖縄県知事)さんとでやっているときから、プロの人たちは、これはできない、ウソだろうとわかっていた。それが今回のアメリカ国防総省高官の発言によって可視化した。

どうして今、国防総省の人がこんなことを言うのか。それは、沖縄県知事選が近づいてきた。アメリカにとって都合のいい人が必ずしも当選するとは限らない。そのときに、「2019年までの閉鎖について、われわれは同意していないんだよ」ということを言っておけば、少なくともアメリカはウソつきにはならないでしょ。

邦丸: ああ、はいはい。

佐藤: だから、自分の身を護り始めているんです。今まではあ・うんの呼吸で、アメリカは日本の言っていることは聞き流しておいて、特に否定することもなかったんだけれど、「そろそろまずいぞ。オレたちにも火の粉がかかってくる可能性がある」ということで、「われわれはそんなことに合意していない」と言ったわけです。

「合意していない」と「合意したことを反故にする」では違いますからね。日本さんは何を言っているか知らないけれど、われわれは合意していないしー。知ーらないよ、と。

邦丸: これは基地を置いているアメリカ側の都合ですよね。

佐藤: そうです。アメリカがいちばん恐れているのは、「アメリカがウソをついた。そういうことなら、普天間だけでなく辺野古も嘉手納も全部、出て行ってもらおう」ということになること。こうなるのがイヤなんですよ。アメリカの防衛線は、嘉手納基地なんです。辺野古は、できればいただきましょう。でも、それで面倒臭いことになるんだったら、要りません――これぐらいの感じですよ。

邦丸: はあ~~。嘉手納には巨大な空軍基地があります。普天間はあくまでもアメリカ海兵隊の飛行場で、嘉手納に比べればスペースはそうとう小さいんですけれど、ただ、町のど真ん中にあるということで、移転してくれと日本は言っているわけなんですけど、これはみなさんもご存じのことと思います。

菅官房長官が「19年までに運用停止」と言っちゃって、「やっぱりムリでした~。でも知事選があったから」っていうのは、おかしいいですよね。

佐藤: おかしいですよ。でも、おかしいことって、世の中ではときどきありますからね。こういうことをやって、ただでさえ難しい沖縄の情勢をいっそう難しくするようなことをどうしてやるのか。もっと正直かつ誠実にやればいいというのが、率直な思いです。

邦丸: この朝日新聞の報道については、菅官房長官の記者会見で質問が出ると思うんですけれど、どう答えるんでしょう。

佐藤: 「日本としては全力を尽くす」とか、そう答えるんでしょう。「全力を尽くす」ことを約束したのであって、結果について約束したわけではないと後で言えますから。

邦丸: われわれのイメージからすると、2019年にはもう普天間は返ってくるんだと思っちゃいましたけどね。

佐藤: そりゃそうです。そういうふうに誘導したわけですから。

邦丸: うーむ。

佐藤: よくないですよね。

邦丸: もし2019年に閉鎖されないのなら、罪は深いですね。

佐藤: これで不信感が非常に強くなるんです。そうなると、スコットランドと同じようになってくるんですよ。自己決定権を確保しようということで、私が以前からこの番組で強調しているとおり、やはり分離傾向が出てきますからね。だから、沖縄というのは本当に慎重なうえにも慎重を重ねて扱わなくてはいけない。

そもそも、どんな理屈でいっても、日本の陸地面積の0.6%しかないところに日本の米軍基地の74%があるということ、海兵隊だってもともとは岐阜、山梨にいたということを考えれば、沖縄県民を納得させるのはムリなんですよね。だから、海兵隊は出て行ってもらうという方向でやらないと。

だって、出て行っても抑止力には影響ないんですもの。どうしてかというと、海兵隊は基本的にオーストラリアやモンゴルの砂漠で訓練していますから。べつに、台湾海峡の有事や朝鮮半島の有事のためにいるわけじゃないんですから。しかも、現在の展開でしたら、グアムまで下がってもぜんぜん問題ないですからね。ただ、日本がおカネを出してくれるし、環境がいいから沖縄にいるんですから。・・・・・・(以下略)

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol.047(2014年10月22日配信)より

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