新たな家族を作ることから始まる!? ケンブリッジ大学のカレッジペアレンツ制度

<現地レポ>入学式後の「Freshers’ Week」

2014年10月28日(火) オックスブリッジ卒業生100人委員会

「現地レポ」シリーズでは、そのときのタイムリーな話、まさにいま、オックスブリッジで起こっている話を、臨場感をもって、読者のみなさまにお届けしていきます。

筆者が住んでいるKing’s College のチャペルと共に
柴田智仁(しばた・ともひと)
ケンブリッジ大学 学士課程 自然地理学専攻3年

1993年スイス・ジュネーブ生まれ。ジュネーブ・インターナショナルスクールにて国際バカロレア(IB)を取得し卒業。2012年よりキングズカレッジで自然地理学を専攻中。主に気象学・火山学・氷河学といった自然環境科学を専門とする。大学では学生自治会にあたるInternational Cambridge University Students’ Union  と Kings College Student Unionで活動しながら、現在はケンブリッジ日本人会 (Cambridge University Anglo-Japanese Society)の会長も務める。旅行が趣味で、インドやケニアでボランティア活動の経験を持つ。

Freshers’ Weekで始まる大学生活

紅葉が黄金色の絨毯に変わりゆくこの時期、長い夏休みを終えた学生が一斉に大学に帰ってくると同時に新入生もやって来る。そう、オックスブリッジの一年の始まりは、10月前半とイギリスの他の大学と比べて若干遅めの始まりなのだ。今回は前回の入学式の話に引き続き、入学式のあと何が起こるのか、ケンブリッジ大学の学生生活の始まりを紹介しようと思う。

カレッジごとに特有の入学式(Matriculation)が終わると、Freshers’ Weekなるものが待っている。授業が本格化する前に、新入生が大いに楽しめる一週間だ。これはオックスブリッジ特有のものではなく、イギリスでは広く一般的に行われているものだ。この期間、新入生達は身の回りの整理はもちろん、様々なクラブに入会したり、学生自治会(Cambridge University Students’ Union等)主催のイベントに参加したりと、楽しく忙しい日々を過ごす。

ケンブリッジの新生活:出迎える新しい家族

Freshers’ Weekの始まりは、「新たな親」との対面で始まる。入学式を終えると、新入生は見送りに来てくれていた実の親に別れを告げ、「新たな親」との生活を始めるのだ。これこそが、他の大学ではまずないであろうオックスブリッジ特有のCollege Parents(カレッジペアレンツ)制度と呼ばれるものだ。完全寮制のオックスブリッジでのこのシステムは専攻科目や所属学部を超えて多くの学生が共に営むカレッジ生活の重要な一部となっている。

新しい親との出会い・新入生の名前を紙に書き待つ「親」達

カレッジペアレンツは同じカレッジ内の先輩が務め、通常は自分と同じ科目を専攻している先輩が親となる。そして、各「夫婦」の元には新入生2人、即ち子どもが2人できるため、兄弟姉妹関係もできる。私は地理学を専攻しているため、母は地理学専攻し「弟」(同期の新入生)が化学工学を専攻のため、父は化学工学専攻の先輩だ。親元を離れ、独り立ちした新入生全員にこうして新しい「家族」が出来る。この制度は、オックスブリッジが誇る、充実した学生サポートシステムの一つであろう。入学決定時に「あなたの新しいパパとママです」といった面白い手紙が家に届き、この「家族」とのつながりは始まる。先輩、後輩というよりもまさに「家族」といった温かな関係で、カレッジペアレンツは新入生の相談にのったり、授業内容や試験勉強のアドバイスをしたりする。おふざけかのようにみえるカレッジペアレンツというシステムだが、学期が本格化すると待ち受けている過酷な勉学環境や独特な伝統・文化に慣れるのには欠かせないものだとも言える。

このCollege Family結成は、現実世界と同じように、「夫婦」から始まる。入学して間もない学生は少しずつ結婚相手を探す事になる。相手は自由に選ぶことが出来るが、できれば自分と違う学科を専攻している相手を選ぶよう勧められる。何故なら、自分の子どもは自分と同じ科目を専攻する新入生となるため、夫婦そろって同じ専攻だと、家族そろって同じ専攻になってしまうからだ。プロポーズの方法は自由で、花束を持って「結婚して下さい。」と求婚する人もいれば、大学のオーケストラと組んでプロポーズ大作戦に挑む生徒もいる。ある生徒は女性へのプレゼントの指輪をフクロウに届けさせ、フォーマルディナーの席で、マイクを持ち、大勢の生徒達の前で求婚した。

こうして、プロポーズを終えたカップル達はバレンタインの日あたりに合同結婚式(フォーマル食事会・パーティー)を行い、そこで正式な「夫婦」となり、新入生が決まり次第、専攻科目ごとに振り分けられる。こうして、1年目は子ども、2年目は父母、3年目は祖父母と毎年自分の家族での位置づけもかわる。「家族」揃っての食事会といった光景もよく見られる。また、プロポーズ時期に自分の子ども達から婚約のお知らせを受けると、意外にもリアルに寂しくなったり嬉しくなったりして面白い。「昨日、妻と一緒に息子たちのために夕食を作った」などと聞くとビックリするが、オックスブリッジではよくある会話だ。「親」の話をすると’College or real ?(カレッジの親の話?それとも実の親の話?)’と聞かれることは珍しくない。こうして「新しい家族」と共に大学生活は始まる。




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オックスブリッジ卒業生100人委員会

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