[アジアパラ競技大会]
車椅子バスケ男子、劇的逆転に導いた残り34秒での戦略

土壇場の同点ゴールで延長へ

 ピッ。香西宏昭のシュートが決まった瞬間、鋭い笛の音がコートに鳴り響いた。相手ディフェンダーのファウルでバスケットカウントとなったのだ。電光掲示板を見ると、残り時間は34秒3。スコアは65-64と、イランのリードはわずか1点となっていた。

 緊迫した空気がコート中に広がる。すべての視線が注がれる中、香西の手から放たれたボールは美しい弧を描いて、ゴールへと吸い込まれた。65-65。試合はそのまま延長戦へと持ち込まれた。劇的な展開に、会場には異様な空気が流れていた――。

 22日、アジアパラ競技大会5日目。予選リーグを2位通過した車椅子バスケットボール男子は、準決勝でイランと対戦した。その大一番の直前、及川晋平ヘッドコーチ(HC)にコメントを求めると、「そろそろ強い姿を見せられると思っています」という言葉が返ってきた。

「これまでなかなか勝つことができなかったチームに勝てるかなと」
 表情も声も落ち着いてはいたが、コートに視線を送るその目は鋭かった。そして、「じゃ、また後で」と指揮官は笑顔でコートへと向かって行った。その笑顔に何かが起きる予感がした。