雑誌
あの時代の本物、レプリカを追う
甦る戦闘車両

旧日本軍 九五式軽戦車1936年に試作車が完成。戦場では主に偵察や連絡用に使われた戦車。生産台数は2378台で最多。全長:4.3m、全高:2.28m、出力:120hp、最高速度:40㎞/h、37㎜砲× 1 ほか

いつの時代も第二次世界大戦時の戦闘車両は注目されるが、上のメイン写真の九五式軽戦車、レプリカだが完成度に驚く。それをはじめ甦る戦闘車両を追う。まずは当企画の発端となった人の登場!

「軍事技術の保存こそが今大切です」

「防衛技術博物館、わかりやすくいうと戦車博物館を地元の御殿場市に作りたいと3年前から考えています」。自動車整備や新車販売などの会社、(株)カマドの小林雅彦社長はこう切り出してきたが、興味半分の夢物語を語っているわけではない。

「職業柄機械やエンジンのことはわかっているので、技術の側面から戦車を見ると、歴史的背景などいろんなことがわかってくる。これが大切ですね」

こう狙いを話す小林さんこそが、上写真の旧日本陸軍、九五式軽戦車のレプリカを完成させ、走行させた人だ。まずは、小林さんの〝戦う車両にかける情熱〟に迫ってみたい。

(左)この九五式軽戦車のレプリカをオーストラリアから運んできた時はサスペンションも可動。履帯(いわゆるキャタピラ)はリアル感を出すために鋳物で
(右)もともとフォード社製V8 5000㏄と3 速ATを積んでいたので、現在もそのまま流用。今でも定期的に動かすのでエンジン作動は問題なしという。

■目的を伴う戦車の技術

話を少し聞いただけで、小林さんから〝戦車や陸軍車両熱〟が放たれていることがわかる。それもそのはず、生まれも現在も陸上自衛隊の東富士演習場がある静岡県御殿場市が生活の拠点。地元の祭りには戦車が置かれるなど戦車は身近な存在で、「子どもの頃、将来の夢は自衛隊に入り戦車に乗るか、三菱に入社して戦車を作るか」というほどの戦車好きに。そして、実家が自動車整備工場という環境により、メカの魅力にも惹かれていく。昔から世界を見ても、自動車メーカーが戦車を作っていることもあり、車両としての戦車に深く興味が沸いてきたという。

「ひとつの戦車には独自技術が満載です。その技術の重要性や技術開発を系統だてて紹介する施設が日本にはない。だから、自分で技術で見る戦車博物館を作ろうと思っています」

この戦車と技術の話はなかなか興味深い。戦車設計は相手を壊すための武器を載せるプラットフォーム作りが基本にあるが、どんな状況で何を壊すのか、速く動く必要性があるのかなど、戦車により目的も違う。「クルマも家族で出かけたいからミニバンがあるなど目的に即した車両があり、そのための技術があるけど戦車も同じ。戦車の中にある目的を伴う技術を見てもらいたいんです」と、明確な理由を話す小林さん。

(左)戦車に備わる機関銃の防弾カバーはFRPで当時を再現している。リアルだ
(右)1930年代当時の"九五"を再現するために約3 カ月間費やして足まわりやボディなどを修復。写真のように迷彩模様も忠実に再現した

■迷彩模様も忠実に再現。まるで本物のような九五式軽戦車

さて、上写真の九五式軽戦車。戦車博物館の大きな一歩としての車両だが、原型はアメリカのドラマ『ザ・パシフィック』の撮影のために製作された実物大レプリカ。オーストラリア人のコレクターから330万円で購入し、日本に〝里帰りさせた〟後、仲間と3カ月かけて復元したという。照明弾やスコップなどの装備品を付け、迷彩模様も当時の資料を見ながら再現。履帯はひとつひとつ鋳物で製作。当時の〝新車〟並みに仕上がっている。

(左)オーストラリアから運んできた直後、現状確認のために試験走行した時の様子。
(右)1930年代と思われる一枚。愛知県豊橋市内を走る

エンジンはフォード社製V85000㏄が載っており、3速AT。もともとサスペンションも可動したので今でも走行する(ちなみに最速は30㎞/h)。

このレプリカをオーストラリアから運び込む時、税関で「硝煙反応が出た!」などのちょっとしたハプニングもあったが(ドラマ撮影で使われたから当たり前だが……)、現在九五式軽戦車が展示される「社長の小部屋」(数台のミリタリー車両が並ぶ博物館)に入れる時がけっこう苦労したそうだ。

「社長の小部屋はコンビニ跡地で、車両などが簡単に入らない。なので大家さんに許可をもらって前面サッシを大改造しました。戦車の出し入れも苦労しますね。戦車の運転手は左右と後方が見えないので3名の誘導員の指示で少しずつ動かす。出し入れの時はいつもドキドキもんです」と小林さんは苦笑い。

戦車博物館を作るPR活動のために、これからも九五式軽戦車を動かせていくという。

「くろがね四起」(正式名称:九五式小型乗用車)1936~1939年にかけて生産された四輪駆動乗用車。すべて陸・海軍へ納車。全長3550×全幅1550×全高1700㎜、重量:1000 ㎏、エンジン:V21400㏄、最高出力:33ps/3300rpm
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