「畑を守りたくて」ハーブで起業した農家・長男のお嫁さん---数々の困難を乗り越えた準備期間20年の軌跡

一口飲むだけで、ガツンとくる香りが広がる。カモミール、レモンバーベナなどハーブの新鮮な味に、これまで飲んできたハーブティーとは全然違うことが分かる。お土産にもらったこのハーブティーを自分でも注文したくなり、同封されていたチラシに書かれていた番号に電話をしてみた。

「美味しかったです、ありがとうございます、5袋買いたいのですが・・・」と切り出すと、受話器の向こうから、お辞儀している姿が見えるくらい嬉しそうな声が聞こえてきた。送付先住所を伝えるべく「東京都・・・」と言ったとたん「そんな遠くから! ありがとうございます」という言葉に、商売というより心から、本気で、客が喜ぶのが嬉しいんだな、と思った。

トウモロコシ畑がハーブ園に変わった

数ヵ月後、そのハーブティーの作り手、古舘富士子さんにお会いした。岩手県宮古市の自宅は大きな一軒家で、一面、50アール(約5000平方メートル)の畑に囲まれている。そのほとんどすべてを使い、ハーブを育てている。3人の子ども達は学校を卒業し、高校や幼稚園の先生、看護師として働く。古舘さんは朝8時から夕方6時まで、ハーブ畑で一心に汗を流す。 

古舘さんとハーブ園

宮古は漁業のイメージが強い。3年半前の東日本大震災の津波で、沿岸部は町ごと流されている。漁村とハーブ。当初はミスマッチに思えたが、現地に行ってみて納得した。古舘さんが住む地域は海から4km離れていて、山に囲まれている。海は見えないが、海からの風がよく通る。「浜風のおかげで、ハーブが綺麗に乾きます」。古舘さんのハーブティーは「潮風のハーブ」と名付けられ、商標登録もしてある。

古舘家の農地は、つい最近まで、お米とトウモロコシがメインだった。古舘さんは、姑のトウモロコシ畑を手伝ってきた。毎朝4時に起きてトウモロコシを茹でて訪問販売の準備をする。それは重労働だが、あまり大きな売り上げには、ならなかった。

ハーブとの出会いは20年前に遡る。古舘さんが35歳くらい、ちょうど子どもが幼稚園の頃、岩手県の農政部でハーブ講座を受けたことがきっかけだった。

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