1日200件発生する「心停止」の課題解決へ---共助社会の実現を目指すアプリ「AED SOS」

佐藤 慶一 プロフィール
コエイドが制作した心停止に関するインフォグラフィック

AEDの情報の正確性を追求していく

ハッカソンで評価を受ける一方、課題もある。日本にはAEDが35万台*設置されているが、設置の義務はもちろん、登録の義務もない。また、登録情報の定期更新がされていないものも多く、データの正確性の把握が非常に難しい。このままではAEDの場所が分かったとしても、緊急時に行ったらなかった、という問題が起こりうる。

このようにAEDの情報がオープンで正確でないことも社会問題として捉え、企業や自治体と協力しながら情報の正確性を追求していくという。日本は世界有数のAED普及国であり、普通救命講習の受講者は年間で335万人以上もいる一方で、心停止者の救命時に活用できていないという現状なのだ。

幸いなことに、オープンデータに積極的な一部の自治体ではAEDのデータを出している。鯖江市がオープンデータの動きを牽引する福井県に加え、関東では東京都板橋区、千葉県流山市などもデータを公開。しかし、前述の通り、登録データのアップデートやメンテナンスが必要なため、乗り越えるハードルがまだまだある。

そのほか、課題を把握するために、家族を突然死で亡くした方や救った経験をもつ方に対してヒアリングをおこない、アプリの問題点や要望なども調査。「新しいサービスには失敗リスクがつきものです。ヒアリングを実施することで、ユーザーの課題解決になっているのかを何度も検証し、成功確率を高めることができます」と玄正氏は語る。

病死とは違って心の準備がないため、心停止で家族を亡くした方はキズが大きいという印象的を受けたという。「心停止が起きた場面に居合わせた方は、その10分間でなにかできることはなかったのか、一方で心停止で家族を亡くされた方は、そのときその場にいた人は最善をつくしてくれたのか、といったことがずっと心に残っていました」(玄正氏)。

取締役の小野氏も、高校3年生のときに一緒に住んでいた祖父を突然死で亡くしている。小野氏とその家族は心肺蘇生の知識は知っていたものの、祖父への呼びかけや救急車を呼ぶことしかできなかった。玄正氏から話を聞いたときに、「AED SOSのような仕組みがあれば、祖父を救えたかもしれない」と思い、開発に参画している。

一方で、救った経験をもつ方に話を聞くと、「緊急救助はひとりでは難しい」ということが分かったという。救命講習を受けていても、その場ではパニックになって手順を思い出すことができないケースがある。そのため、AEDの早い到着はもちろん、緊急時に知識をもつ人を複数人呼び寄せることが重要になるのだ。

*厚生労働科学研究 AEDの普及状況に係わる研究 平成23年度