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「木村伊量社長が握り潰した」朝日新聞 幻の『吉田調書』検証記事を公開する すでに記事は完成し、掲載寸前だった

「謝罪は最初が肝心」とよく言われるが、その最初を間違え、謝り続ける朝日新聞。嬉々として叩くライバル紙もどうかと思うが、過剰に謝る朝日新聞は、自分たちの大切なものまで売り渡してしまった。

1面ぶち抜きの予定だった

「社長を出せ!」

10月6日、午後2時から東京・築地の朝日新聞社15階レセプションルームで開かれた社員集会は、大荒れに荒れた。

中堅社員が、立ち上がって発言する。

「(吉田調書の)取材班はこれまで4度にわたり、検証記事を出そうとした。7月上旬、8月31日、9月2日、4日と、組日(掲載日)まで決まっていた。誰がなぜ止めたのか。取り消しについていつ誰が判断したのか。取締役会、局長会、デスク会に諮ったのか」

壇上でこれに答えたのは、先日、編集担当役員の職を解かれたばかりの杉浦信之氏だ。

「私どもにあがってきた紙面は検証というよりは、命令違反で撤退ということは説明ができるという紙面、記事だった。しかしファクトでおさえる部分が結果として非常にもろかったというふうに判断して、最後の9月の頃は池上問題が非常に大きくなっていたので、はっきりいってこのタイミングで吉田調書について、ある意味反論に近い原稿だったので、非常にリスクをはらむと。そういう判断の中で見送った」

歯切れの悪い発言をくり返す杉浦元役員らに、この後も社員からの罵声に近い質問が飛び続けた—。

いま、朝日新聞社内で、一本の記事が波紋を呼んでいる。いや、正確には、完成はしているが紙面に掲載されなかったので、「幻の記事」と呼んだほうがいいかもしれない。

その、朝日新聞社内で封印された記事の全貌を、本誌はつかんだ。

記事の大きさは、新聞の1面丸ごとぶち抜き。右上には「福島第一原発事故吉田調書を読み解く」と、黒地に白抜きで総タイトルが打たれている。

長年、朝日新聞に勤める現役幹部記者が、この記事について解説する。

「朝日新聞は5月20日付の朝刊で、『吉田調書』をスクープしました。政府事故調が生前の吉田昌郎・福島第一原発所長に聴き取りをした記録です。その記事に『間違い』があったとして、木村伊量社長が9月11日に謝罪会見を開き、記事を取り消したのはご存じの通りです」

5月20日の記事は、所長命令に違反 原発撤退という大見出しで、福島第一原発2号機の爆発が疑われた際、所員の9割にあたる約650人が吉田所長の待機命令に違反し、福島第二原発に撤退したと報じた。

だが、吉田所長は「よく考えれば2F(第二原発)に行った方がはるかに正しいと思った」とも語っており、「命令違反という表現は間違いだった」と木村社長が会見で認めたのだ。

幹部記者が続ける。

「たしかに、見出しに行き過ぎはあった。だが、『吉田調書』をスクープした担当記者グループはもちろん、社内の心ある記者たちの間では、『なぜ訂正・修正ではなく取り消しなんだ』という声が、あの謝罪会見以降どんどん高まっている。

そうした声に拍車をかけたのが、この『幻の記事』の存在でした。記事は特別報道部の記者たちが、初報に足りなかったものを補完するために作成した『検証記事』だったんです。

記事は完成し、一度は掲載日を8月31日と決めて、ゲラにまでした。それなのに掲載直前に、木村伊量社長を含めた経営トップの手で握り潰されてしまったのです。その横暴に対する怒りが爆発したのが、10月6日の社員集会でした」

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