スゴ本の広場
2014年10月18日(土) 西岡研介

公安警察&同業者震撼の諜報ミステリー小説
『背乗り』のリアルな魅力

upperline

文/ 西岡研介

名の知られた「ハム担」が初めて書いた諜報ミステリー小説

捜査当局、特に警察庁警備局や警視庁公安部を中心とした「公安警察」の捜査員の中で密かに話題になっているミステリー小説がある。

『背乗り(ハイノリ)――警視庁公安部外事二課(ソトニ)』(竹内明著)。

「背乗り」とは、〈北朝鮮やロシアの情報機関のイリーガル=非合法機関員が諜報対象国の市民を装うために、身寄りのない人物の戸籍を乗っ取る手口〉だ(本書より)。そして外事二課は、北朝鮮や中国の工作員による諜報事件の捜査と情報収集を担当している。

著者の竹内氏は、TBSのニュース番組『Nスタ』の〝顔〟ともいえるニュースキャスターだ。が、実は彼は記者時代、同業他社だけでなく、捜査員の間でも名の知られた「ハム担」(公安担当記者)だった。

1991年にTBSに入社した竹内氏は社会部を経て、特派員としてニューヨーク支局に勤務。帰国後は政治部などを経て、Nスタのキャスターとなった。

社会部時代は警視庁、東京地検などを担当し、1995年に國松孝次・警察庁長官(当時)が何者かによって狙撃された「警察庁長官狙撃事件」や、ロシア海軍大佐武官で、情報機関「ロシア連邦軍参謀本部情報部(GRU)」の工作員だったビクトル・ボガチョンコフが、日本の海上自衛隊三佐に対しスパイ工作を行った「ボガチョンコフ事件」(2000年)などを取材。

それらの事件を基にして2009年に『ドキュメント秘匿捜査――警視庁公安部スパイハンターの344日』、2010年には『時効捜査――警察庁長官狙撃事件の深層』などのノンフィクション作品を次々と発表した。日本の公安・外事警察の捜査の実態を詳らかにし、その内幕をも暴いたこれらの作品は、公安当局を震撼させ、内部で熾烈な〝犯人(情報提供者)探し〟が行われたほどだった。

またニューヨーク特派員時代も、CIAやFBIなどアメリカのインテリジェンス機関やATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)などの捜査機関を取材し、アメリカが抱える様々な犯罪や、その捜査の実態をリポート。イラク戦争の最中には、キューバの「グァンタナモ収容所」での、米軍による捕虜虐待問題を現地から伝えた。

本書は、その竹内氏が初めて手がけた本格派諜報ミステリー小説だ。

次ページ 物語は9月、ニューヨーク・マン…
1 2 次へ

このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
関連記事


underline
アクセスランキング
1時間
24時間
トレンドウォッチ
編集部お薦め記事