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nanapi古川健介【第4回】たまたま過渡期だっただけで、メディアはこれからもっとやりようがある

佐々木俊尚氏と古川健介氏
KDDIにHow toサイト「nanapi」を売却した(10月16日発表)ことで話題となっている株式会社nanapi代表取締役の古川健介氏。nanapiをUU(ユニークユーザー)月間2500万人までに育て上げ、海外向け情報サイト「IGNITION」やQ&Aアプリ「アンサー」を次々にリリースし、常に新しいアイデアを世に問うている。ジャーナリスト・佐々木俊尚氏がnanapiの目指す場所、海外進出、Web2.0、そして古川氏ならではのコンテンツ論について切り込んだ(8月18日収録)。<構成/田中裕子>

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欧米だけが特殊? アジア進出の可能性

佐々木 進出するのは英語圏だけですか? アジアはいかがですか?

古川 ありだと思っています。他社を見ていると、インドネシアや台湾への進出はスムーズにいっていますね。いわゆる「日本像」がそんなにブレないんです。インドネシアは文化基盤がまだそこまで豊かでないので、日本が魅力的に映りやすいみたいですし。Togetterも、インドネシアのほうが日本よりアクセス数が多いんですよ。あちらはほぼ政治ネタみたいですが、インドネシアの佐々木俊尚さん的な人が使ったことでブレイクして。pixivも新規会員は半分くらい海外の人で、しかも海外版ではなく日本版のごちゃっとしたほうに登録しているそうです。

佐々木 萌え文化とかカワイイ文化、ゆるキャラはアジアにウケるんですよ。ゆるキャラなんて欧米に行ったら気持ち悪がられるだけです(笑)。僕は最近、世界の中で「欧米」だけが特殊なんじゃないか、と思っていて。

古川 あ、わかります、それ。

佐々木 LINEだって日本、アジア、南米、中東にまで広がっているのに、「欧米のみ」広がってないわけでしょう。

古川 アメリカだけ必ずスタンプに文字が書いてあると聞いたことがあります。説明文がないといまいちわからないそうです。他の国の人はイラストだけで理解できるんですが

佐々木 あれを見ても、歴史の中で欧米人が作ったものは特殊だったんだとわかりますよね。中世まで辺境だったわけですから。

古川 構造物を作るのが得意なんでしょうね。左右対象に計算しつくされた庭を作って中心に噴水を配置する、というような。効率化に強いので、プラットフォームやアルゴリズムとなるとシリコンバレーに負けてしまうのは仕方ないのかもしれません。

佐々木 アジア人はもう少しエモーショナルですよね。そういう意味で、コンテンツには強い。

古川 庭の花を1本だけ残してあとは全部抜いて、その1本の美しさを際立たせる――なんて意味がわからないじゃないですか。ハイコンテキストすぎて。でも、そこがコンテンツなんだろうと思います。

佐々木 あはは、そうですね。プラットフォームはGoogleにお任せしてエモーショナルなコンテンツに回帰する、という時代の流れですよね。いよいよ日本の強さが発揮できるときにきているとも言えるでしょう。

ただ、コンテンツ回帰の話を受けて「今までどおり、いいコンテンツを作ればそれでいいんだな」と安心する人もいるかもしれませんが、コンテンツメイク自体が今までのやり方でいいわけではありません。これからは、スマホとソーシャルに特化するという戦略がないとだめでしょう。

古川 佐々木さんのおっしゃる3C、「コンテンツ」「コンテナ(媒体)」「コンベア(場所)」ですよね。コンテンツはコンベアとコンテナにかなり左右されるので、そこにあわせてつくらないと普及しないと思います。紙とPCは違うし、PCとスマホも全然違います。

佐々木 前述した文字の長さの話も同じです。経済誌の6000字もある論文をスマホで読むかというと、なかなか難しいですから。

古川 ヤフートピックの見出しの13字も、スマートウォッチで見ると気持ち悪かったりするんです。となると、スマートウォッチ用のトピックは全然違う形になるでしょう。

佐々木 読んでいて気持ちのいいサイトを見ていると、快感じゃないですか。『メディアはマッサージである』というマクルーハンの言葉がありますが、まさに、という感じですね。

古川 海外のニュースを英語で音読してくれるUmamoというアプリがウケていますが、これはなかなか気持ちがいいサービスですよ。音読と言えば、アンサーも音声の投稿が多いんです。会話したり歌ったり。

佐々木 へえ。音声だけでやりとりするんですか?

古川 情報のやりとりはテキストで、コメントは音声で、という形が多いです。たとえば、手相をアップしてもらって診断結果を長文テキストで投稿したあと、「あー、疲れた」と音声で投稿する、という使い方です。「疲れた」は文字にすると冷たいけれど、肉声だとニュアンスが伝わるからでしょう。

佐々木 うーん、まどろっこしいような気もするけど(笑)。人間にはいろんなコミュニケーションの形態があるんだなあ。

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