特集 安倍「長期」戦略
命運を左右する 消費増税の決断、地方創生の成果、地方選の行方……。

内閣改造で入閣した女性閣僚らに囲まれ記念撮影に臨む安倍晋三首相=首相官邸で9月3日

内閣改造、自民党役員人事を断行した安倍晋三首相は「長期政権」に向けて順調に滑り出したかに映る。自民党1強の強固な政権基盤で、金融、財政、安全保障など重要政策を推し進め一定の世論支持を保っている。当面のライバルと目された石破茂前幹事長を新たな金看板である「地方創生」の担当相として内閣に押し込めるなど人事を通じて求心力を高めた。しかし経済政策「アベノミクス」の限界が露呈し、看板の地方創生の成果は未知数だ。12月には消費税を10%に再引き上げするか否かの重大な決断が控える。地方選挙の不振も気がかりだ。政権の命運を左右する不安材料は少なくない。

人事の効果は読み切れない。ときに薬になるが、毒にもなる。佐藤栄作元首相は在職中、「総理の権力は衆院解散をするほどアップするが、内閣改造をするほど下がる」と語ったという。「人事の佐藤」も苦労した。だが、今回の安倍首相は別。どうやら薬とすることに成功したようである。

安倍改造内閣が順調だ。改造直後の9月にメディア各社が行った世論調査によると、内閣支持率は改造前に比べ、毎日新聞だけが横ばいで、残る調査はいずれも上昇した。中には10ポイント以上急回復したところもあった。

内閣改造を行う最大の狙いは政権浮揚だ。ただ、必ずしも結果が伴うとは限らない。野田佳彦前首相は改造を3回行ったが、内閣支持率に顕著な回復はなく、逆に下がることさえあった。その前の菅直人元首相の11年改造も支持率回復にはほとんど寄与せず、不発に終わった。最大の失敗例とされるのは橋本龍太郎元首相の1997年改造で、ロッキード事件で有罪判決を受けた佐藤孝行氏を総務庁長官に起用したことが批判を浴びて、支持率が急落。以後、橋本人気は落ちていき、翌年の参院選惨敗で政権を手放さざるを得なくなった。

「純ちゃん以来の人事の冴えだ」

内閣改造をうまく使ったのは小泉純一郎元首相だ。官房副長官だった安倍氏を自民党幹事長に抜擢するなどのサプライズ人事を常に仕込んで効果を上げた。今回の安倍人事に対しては「純ちゃん(元首相)以来の人事の冴えだ」(自民党長老)との評価も聞かれる。

ただ、人気ほどもろいものはない。支持率回復も、世論調査が内閣改造の直後に実施されたものであることを考えると、新内閣の顔ぶれを国民がどの程度認識しているか疑わしさは残る。「支持する」と答えた人の中には、「内閣改造があったことは知っています」とか、「女性が増えたらしいね」という程度の人も含まれているだろう。堅固な支持者ではけっしてない。新内閣になってよかったと実感してもらえる成果が支持率持続のカギを握るわけである。

成果は主要政策でなければならないが、実は言うはやすしである。対応次第では、どれも落とし穴になり得る。どう難しいのか、以下で点検してみたい。

まずは「地方創生」である。説明は今更必要がないだろう。安倍政権の新看板だ。

「人口減少や超高齢化といった地方が直面する構造的な問題に真正面から取り組み、若者が将来に夢や希望を持てる、魅力ある地方を作り上げていく」

改造内閣の発足を受け行った記者会見で、安倍首相はこう宣言したが、話の順番は「景気」に次いで2番目。首相がこだわりを見せる「女性が輝く社会」や「外交・安保」といったテーマよりも先に持ってきたあたりに、首相の「本気」を強く感じさせた。

動きも速い。会見の翌々日には、司令塔となる「まち・ひと・しごと創生本部」を本格的に始動させた。「各府省の縦割りを断固排除し、バラマキを絶対にしないように」。間を置かず、石破地方創生担当相に7項目の指示を出した。すべての閣僚が参加した創生本部の初会合では「異次元の大胆な政策」をまとめるよう号令をかけ、知恵袋となる有識者会議もスタートさせた。9月末に召集された臨時国会では地方創生基本法を成立させ、創生本部主導の政策づくりを加速させる算段だ。

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