ジビエ料理に食中毒防止の指針
地域振興で人気高まる 厚労省が11月めどに策定[野生鳥獣]

ジビエ料理を楽しむ客でにぎわう「焼ジビエ罠」=東京都港区で8月11日

シカやイノシシなど野生鳥獣の肉を食材にする「ジビエ料理」の食中毒を防ぐため、厚生労働省が衛生管理の指針づくりを進めている。ジビエ料理を巡っては、地域振興に役立てる取り組みが各地に広がり、メニューに取り入れる飲食店も増加。国内で開催するフランス料理のコンクールでも課題料理として取り上げられ始めた。これらの動きを受け、厚労省は食の安全を確保するため国の基準が必要と判断。狩猟シーズンが本格化する11月ごろまでに指針を示す方針だ。

指針の作成を進めているのは今年7月に厚労省に設置された専門家の検討会。国立医薬品食品衛生研究所の研究者や大学教授、自治体職員、日本猟友会の会長ら10人が参加している。

検討会では「衛生に関する知識が不足しているため、誤った肉の解体手順が狩猟者にまん延している恐れがある」「金属探知機を導入している食肉処理施設は少ないが、銃弾が残されていないか確認するために必要だ」など、専門家から相次いで意見が飛び出す。食肉処理施設を監視指導する自治体側からは「シカやイノシシの病気や異常についての知識が少ないため、衛生面で事業者に積極的な啓発活動ができない」との本音が漏れる。

「ジビエ」は狩猟で捕獲した野生鳥獣の肉を意味するフランス語。ジビエ料理はヨーロッパでは貴族の伝統料理として古くから発展してきた食文化だ。国内でジビエ料理に注目が集まるようになった背景には、野生鳥獣による農作物被害の広がりがある。

背景に増える農作物被害

全国の農作物被害は2009年度以降年間200億円を超え、12年度は約230億円に上る。ニホンジカなどの増加が大きな要因で、環境省の推計によると、11年度のニホンジカ(北海道を除く)の個体数は約261万頭で20年前の約7倍。イノシシは約88万頭で約3倍に達している。

これに伴い有害駆除する頭数も増え、07年度にシカとイノシシを合わせ約44万頭だった捕獲数は、12年度には約87万頭になった。環境省は今年5月、企業の参入を促すなどして野生鳥獣の捕獲事業をさらに強化するため鳥獣保護法を改正し、10年以内にシカやイノシシの個体数を半減させる目標を掲げている。

こうした対策によってジビエ料理の材料が入手しやすくなり、地域振興に活用する取り組みが始まった。長野県は今年4月、「野生鳥獣対策室」を「鳥獣対策・ジビエ振興室」に改編。地元の観光団体が参加する研究会を設置し、ブランド作りを目指している。三重県も5月から「みえジビエ登録制度」を開始し、参加する飲食店や販売店をホームページなどで紹介。千葉県内には12年3月以降、野生鳥獣の食肉処理施設が2カ所新設され、東京都内の飲食店に出荷を始めている。

国内のフランス料理界でも国内産のジビエを積極的に取り入れる動きが広がる。フランス料理のシェフが日本一を目指して腕を競う「エスコフィエ・フランス料理コンクール」(日本エスコフィエ協会主催)では、今年の予選にジビエ料理が初めて課題として設定された。シカ肉をパイで包んで焼くなど古典レシピを現代風にアレンジした料理が並び、堀田大副会長は「猟師の捕った肉が安定的に売れるようにするためにも、フランス料理界がジビエのおいしさを発信したいと思った」と話す。

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