保証人保護など約200項目を大改正
法制審議会が大筋了承 来年国会に法案提出へ[民法]

民法のうち、消費者や企業の契約ルールを定めた部分の大幅改正に向けて議論していた法制審議会(法相の諮問機関)の部会は8月26日、部会の事務局である法務省が取りまとめた最終案を大筋で了承した。債権の消滅時効の期間見直しや法定利率の引き下げ、保証人保護など約200項目が盛り込まれた。同省は来年の通常国会への民法改正案提出を目指す。成立すれば制定以来120年ぶりの大改正で、市民の暮らしに影響を及ぼすとともに、事業者も対応が求められることになりそうだ。

民法が制定されたのは明治時代の1896年。総則、物権、債権、親族、相続の5編で構成され、条文は約1000条にのぼる。親族編を中心とした家族関係の規定が終戦後の1947年に見直されたほか、2004年にはそれまでの文語体(書き言葉)を口語体(話し言葉)とし、カタカナ表記だった送り仮名なども平仮名に改められる改正もあった。ところが、今回の議論の主な対象である債権編については、企業間の取引から個人の売買にいたる多くのルールが定められているにもかかわらず抜本的な改正はなく、「社会や経済情勢の変化に対応していない」との指摘があった。

その一つが債権の消滅時効だ。現在は原則である「権利行使できる時から10年」のほか、職業別に定められた1~3年の「短期消滅時効」がある。飲食店のツケなら1年、弁護士費用だと2年、病院の診療費は3年といった具合だが、合理的根拠がないと言われ、例えば、税理士や司法書士の費用のように規定がない場合は原則が適用されるというアンバランスさも生じていた。

最終案によると、短期消滅時効は廃止され、「権利行使できると知った時から5年」と現行の原則に統一し、いずれかが経過した時点で時効とする。また、生命や身体の侵害に対する賠償請求権については「知った時から5年」「権利行使できる時から20年」とする。20年は判例上、時効のように停止や延長がない「除斥期間」と解釈されてきたが、消滅時効であることが明記される。

損害賠償金の支払いが遅れたような場合の利息に適用される法定利率も改められる。長引く低金利を受け「市中金利とかけ離れている」との批判があった現行の5%(固定制)を3%に引き下げ、3年に1度見直す機会を設ける。交通事故被害者らの逸失利益算定時に差し引かれる「中間利息」の利率も同じだ。変動制への移行については「事務的な負担が増える」として日本損害保険協会が難色を示していたが、利率の見直しは、過去5年間の貸出金利の平均を比較して1%を超えた場合に限られ、頻繁な変動は考えにくく、最終的に受け入れたとみられる。

最終案には保証人保護の方策も盛り込まれた。個人保証を巡っては、知人や親戚などから「名前を借りるだけ」と言われて保証人になった結果、債務者の事業者の破綻で高額の請求を受け、自己破産や自殺に追い込まれるケースもあり、社会問題化してきた。そのため、中小企業が融資を受ける際に求められる第三者による個人保証は原則禁止とする。ただし、例外として、中小企業の経営者や過半数の株式を持つ株主らのほか、第三者でも「公証人の前で『保証人になる意思がある』と宣言して公正証書を作成した人」は例外として認められることになった。

この例外は、昨年2月に示された中間試案にはなかった。しかし、金融庁は現在、金融機関向けの監督指針で、第三者の個人保証を原則禁止としつつ、自発的な意思に基づく場合は認めており、部会では、日本商工会議所の委員が「起業家のために金融庁の指針の内容を維持することが必要だ」と主張。銀行の委員も「有望な企業の資金調達の道を閉ざしかねない」と訴えた。これを受けた法務省が公正証書を利用した例外を認める案を示すと、支持する委員が大勢を占めた。だが、中間試案になかった「抜け穴」が追加された形になったとも言え、保証被害の撲滅を訴える弁護士らからは「大きな後退だ」と批判の声があがる。