【復興 その1】 「職」「町」「人」の面で新たな東北復興ビジョンを描け!
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あの忌々しい東日本大震災の発生から3年半余りが経過した。被災地では、今でも25万人以上もの方々が、仮設住宅などでの生活を余儀なくされている。1日も早い復興に向けて、引き続き政府・民間を挙げた取り組みが必要である。

復興庁によるがれき処理、除染作業、社会インフラの再建などは徐々に成果を上げ、東北地方では数値上では雇用環境が改善されているとはいえ、依然として厳しい状況が続いているのが実態だ。

深刻なのは、被災地からの人口流出が止まらないという事実だ。被災した東北地方は、震災前から人口流出が続く地域であったが、2010年1月を1.00とした場合の被災3県の人口は0.93まで減っており、岩手県の沿岸部では0.91まで減少している。住民票ベースで人口の2割程度が減少している自治体もある。

なぜ人口流出が止まらないのか。それは、被災地に高付加価値産業が少なく、求人者が望む職業が少ないからだ。有効求人倍率こそ、全国で宮城が1位で福島が2位となっている。だが、職のミスマッチが発生しているのが実情だ。

今、求人が多い職種は、仙台等の都市部をのぞいては、主に復興に絡む建設業、除染作業(福島の場合)などが中心である。優秀な人材やUIターンで地元に戻りたいと考える人々も、東北に戻ることができず、そのために雇用が集まらず、地域の疲弊が止まらない。

震災以前から直面していたこの課題が、震災後、一層深刻さを増しているといえよう。

復興は、単に「震災前の町を元通りに作り直す」というようなインフラの再整備にとどまってはならない。被災地において、将来にわたって、持続可能な地域社会が構築されることこそが、真の復興である。そのカギは「職」「町」「人」だ。震災復興を、震災以前からの課題を解決するチャンスとしなければならない。

2020年には、東京オリンピック・パラリンピックが開催される。昭和30年の東京オリンピックで、我々の先人たちは、世界に向けて見事に戦後復興した新生日本を魅せつけた。我々も2020年、世界の人々に向けて、新しい東北・新しい日本を見せつけようではないか。

1. 【職】よそ者、若者、バカ者を活用し、規制緩和による楽市楽座を実現し、東北に産業を植生せよ!

持続可能な地域への復興に向けてカギとなるのは、産業・雇用の確立だ。経済の復興なくして真の復興はない。

現在、被災企業・事業者の7割以上の事業者が事業を再開し、鉱工業生産(IIP)や小売販売額もほぼ震災前の水準に回復した。農業では、津波被災農地の約7割で営農再開。漁業では水揚量が震災前の約7割まで回復。観光業では、震災前の8~9割程度まで回復している(東北地域への訪日外国人旅行については、震災前の5~6割程度)といった状況だ。回復がかなり進んだともいえるが、依然として厳しい環境下にあると評価するのが妥当だろう。

そもそも、被災地域は、震災以前から人口減少、過疎化、少子・高齢化が進んでいる地域だった。現在は、復興需要による雇用や消費が東北経済を後押ししているが、復興需要は当然ながら今後縮小していく。

復興需要縮小後も、東北発のビッグインダストリーを創出し、東北に産業集積と雇用を生み出すためには、以下の3つがカギとなる。

それは、

(1)よそ者、若者、バカ者の活用(ベンチャー・NPO)
(2)徹底的な規制緩和による楽市楽座(農林水産業)
(3)外部からの積極的な投資による産業の植生(工業)

である。順に説明していこう。

(1)よそ者、若者、バカ者の活用を!(ベンチャー・NPO)

地域や組織の成長に必要なのは、「よそ者、若者、バカ者」である、と言われる。このことは震災復興にもまさに当てはまる。

つまり、過去の成功体験やしがらみに固執しない「若者」。地域や業界の常識に捉われない「よそ者」。そして考え過ぎずとにかく行動する「バカ者」。地元の人だけが以前と変わらないやり方で取り組んでも、何も生まれない。「よそ者」と連携し、「若者」が参加し、「バカ者」がイノベーションを起こすのだ。

僕が立ち上げた復興支援プロジェクト「KIBOW」を機に行動を起こした多くは「若者」だったし、彼らの常識外れな発想は平時では「バカ者」扱いされるものだっただろう。さらにこれらの活動に多くの「よそ者」が加わった。女川にいる小松洋介氏(特定非営利活動法人 アスヘノキボウ 代表理事)は女川と縁もゆかりもない。また、南三陸町の厨勝義氏(イノベーション東北 コーディネーター)は、九州は太宰府の出身である。数多くの「よそ者」が、被災地で活躍していることが理解できる。

震災直後から宮城県山元町に入り、グロービス経営大学院の在校生・卒業生と復興活動を担うGRAを創設した岩佐大輝氏の事例は、100の行動44農林水産1(「農業を成長産業に」新規参入・大規模化・効率化を促せ!)で紹介した。地元住民との協働によって被災から1年弱で山元町の特産品イチゴの栽培をIT活用農法で復活させ、「ミガキイチゴ」というブランド化をした。このGRAには、数多くのよそ者が働いている。その他にも震災後東北に入った優秀な「よそ者」「若者」「バカ者」たちは数多くいる。

「よそ者」の参入は雇用を生み、テクノロジーやノウハウの伝播にもつながる。よそ者、若者、バカ者がうまく動ける環境を整え、新たな価値創造や販路開拓などのイノベーションを起こし、高付加価値産業を育てることが重要だ。彼らのバイタリティーによって、新たなベンチャーを創出し、新たな雇用を生み出すことが重要だ。

(2)徹底的な規制緩和による「楽市楽座」を!(農林水産業)

東北に新たな産業を集積するには、特区などの制度を活用して思い切った規制緩和を行うことが必要だ。これを、東北版「楽市楽座」と呼ぼう。

宮城県の村井嘉浩知事は、「水産業復興特区」構想を掲げた。漁業復興のために民間企業を参入しやすくし、漁港を5分の1まで統廃合することが目的だ。つまり、「選択と集中」をおこない、漁業権を撤廃しようという構想だ。

漁業組合は、事前に相談がなかったことに猛反発し特区構想の撤回を訴えているが、村井知事は撤回しない意思を明確にし、被災地の漁協幹部と対立している。是非ともやり遂げて欲しい。

漁業・水産業に関しては、復興事業の進展によって、ハード(施設)は復旧している。しかし、ソフト(販路開拓)が課題となっている。水産庁の調査では、震災前の水準まで水産加工業の売上げを戻せたのは、8%に過ぎないという。厳しい現実だ。一旦失った販路を元に戻せていないのが実情だ。

だからこそ楽市楽座が必要なのだ。

また、東北地方の主要産業であるもう一つの第一次産業の農業も特区による規制緩和が必要だ。震災復興4年目の現状では、施設の復旧は進み約7割が営農を再開している。復興の過程で、現在の復興交付金の活用などによって、農地の集積による経営規模拡大や農地の大区画化等が進められる事例も出てきている。だが、一部に過ぎない。

一方、林業に関しては、被災した製材工場等木材加工・流通施設のうち8割以上が操業を再開している。だが、東北地域は大規模な木材加工施設が集中する地域であり、復興を機に、林業の成長産業化を実現することが求められる。だが、現状ではそうなっていない。

総じて、施設の復旧は進んだものの、経営の規模化や新規参入は進んでおらず、高付加価値化は実現していないのが現状だ。今、岩手県の水産加工業の求人倍率は2.57倍という高水準だという。人員を募集しても集まらず、中国人実習生や、ようやく集まった地元従業員も60代が中心という状況だそうだ。求人倍率が高い原因は、一次産業が儲からないため、若い人は町を去って行くからだ。一次産業を成長産業化し、賃金を上げて若い人材が集まる産業に育てる必要がある。

広大な大地を有する東北地方の農業も、三陸沖という世界最高水準の海洋資源を持つ漁業も、森林率70%という広大な資源から良質な木材を産出する林業も、やり方次第で成長産業化することは可能なはずだ。そのためには、これらの産業への参入障壁となる規制を撤廃して「参入の自由」を担保し、外から人や資本を呼び込み、合従連衡で経営を「規模化」できる制度を整備する必要がある。

先に述べた山元町のいちご栽培の事例でも、土地の所有、株式会社の活用等で規制が多いため、資本の集約ができず苦労してきた。上場によるキャピタルゲインを享受できないために、資本が集まらないのだ。いまだに農業分野における上場企業は、存在しないのが実情である。被災地に大胆な特区を導入し、無数のアグリ・ベンチャーが立ち上がることを期待したい。

だからこそ、復興特区を活用し、復興のための「楽市楽座」として民間の力を徹底活用するのだ。

農業については、株式会社の農地所有の完全自由化、農地の集積・大区画化にかかる規制の撤廃と耕作放棄地の集約の加速化。漁業・林業についても、漁業権にかかる規制緩和による参入の自由化、生産基盤の集約化、経営の規模化などを行う。そうすることで、新規参入者を呼び込み、規模化とイノベーションで成長産業化することができよう。

(3)外部からの積極的な投資を呼び込み、産業の植生を!(工業)

東北経済の成長には、外部からの資本の投下を積極的に進める必要がある。外部から資本が入るということは、そこに雇用が生まれ、ノウハウと知恵が移管され、あらたな価値が生まれていくことを意味する。つまり、東北に工場を作ったり、事務所を開設したりすることにより、多くのカネを呼び込み、ヒトを招き、チエを外部から注入することが可能となるのだ。

日経新聞によると、震災後被災3県で工場立地が急増しているという。経済産業省の統計では、震災前の2010年に40件だった工場立地は12年に93件、13年には116件に増えた。投資の呼び水になっているのが補助金だ。特に最大で投資額の4分の3を補助する「ふくしま産業復興企業立地補助金」の効果が大きい。のべ約400社が採択され、補助予定額は2,000億円弱に上る。

東北への工場立地で目立つのが自動車関連企業だ。12年7月に発足したトヨタ自動車東日本(宮城県大衡村)を核に部品メーカーの集積が進む。デンソー福島(福島県田村市)は約87億円を投じ、カーエアコンなどの工場を拡張した。豊田合成は約29億円を投じ、宮城県栗原市にエアバッグなどの新工場を建設する。鋼材加工業のメルコジャパン(茨城県日立市)が宮城県山元町に22億円を投じ新工場を建設する。

福島でのもう一つのけん引役が医療産業だ。県は医療機器の開発・製造を産業復興の柱と位置付ける。これまでに「ふくしま産業復興企業立地補助金」の採択を受けた企業の1割にあたる41社が医療福祉機器関連だ。たとえば、オリンパスは会津若松市と西郷村に新工場棟を建設し、内視鏡などの生産能力を高める。東北ニプロ製薬(福島県鏡石町、現ニプロファーマ株式会社)も医薬品製造設備を増強する。

復興に一番重要なことは、東北以外の地域からヒト、カネ、チエが導入されることである。トヨタを核とした自動車産業、IHIを核とした航空機産業、さらには医療機産業、エネルギー関連産業等が、東北から多く輩出されることを願っている。

そのためにも、補助金以外にも、より大胆に、特別控除や無税化の適用条件・期間の拡大、地方税の減免・優遇措置によって、東北地方に投資を呼び込むことが必要だ。

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