創価学会は日本の政治・社会情勢を分析するうえで無視できない役割を果たしている。佐藤優・著『創価学会と平和主義』

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」 読書ノートより

◆佐藤優『創価学会と平和主義』朝日新書、2014年10月

『創価学会と平和主義』
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日本の政治・社会情勢を分析するうえで、創価学会の役割を無視することはできない。それにもかかわらず、この問題に踏み込んだ書籍がほとんどないので、私自身が書くことにした。本書のあとがきを抜粋しておく。

<本書を書いた動機は、創価学会について知っておくことが、現在と将来の日本と世界を知るために不可欠と私が確信しているからだ。

今年は第一次世界大戦が勃発してから100年にあたる。ウクライナにおける内戦、シリアとイラクにおけるイスラーム過激派「イスラーム国」(IS)によって引き起こされている騒擾などは、大規模な戦争に発展する危険がある。わが国を取り巻く情勢も緊迫している。特に沖縄県の尖閣諸島をめぐっては、ちょっとした挑発や誤解から、日中戦争に発展する危険がある。このような状況で、平和を維持することが焦眉の課題だ。

創価学会とこの宗教団体を支持母体とする公明党が、日本の平和を維持する上で重要な役割を果たしているにもかかわらず、そのことがなかなか理解されない。創価学会に反感を覚える人、宗教に無関心な人、熱心な創価学会員、両親が創価学会員である関係で自分も学会員になっているが活動には熱心でない人、恋人が創価学会員であるために両親から交際をやめろと言われている人などを頭に浮かべながらこの本を書いた。創価学会に対する好き、嫌いといった感情をひとまず脇に置いて、現実に存在する創価学会を等身大で見てほしいのである。

本書でも何回か言及したが、私はプロテスタントのキリスト教徒である。日本のプロテスタント最大教派である日本基督教団に籍を置いている。同志社大学神学部と大学院神学研究科でプロテスタント神学を専攻した。神学部1回生のクリスマス礼拝で洗礼を受けた19歳のときから、私のキリスト教信仰が揺らいだことは一度もない。神学生時代から、外交官だったときを含め、私の鞄にはいつも聖書が入っている。2002年5月、鈴木宗男事件に連座して、東京地方検察庁特別捜査部に逮捕され、東京拘置所に勾留されたときも、接見した弁護士に開口一番、「銀座教文館3階のキリスト教図書売り場で、日本聖書協会が刊行する新共同訳聖書(旧約続編、引照つき)を手に入れて、差し入れてほしい」と頼んだ。聖書を読まない日、神に祈らない日は、文字通り1日もない。キリスト教徒は、同時に他の宗教を信じることが認められていない。従って、私は、当然、創価学会員ではない。また、創価学会になる必要もない。

しかし、同時に私は、偏見を極力排除し、創価学会を等身大で理解し、そこから学びたいと思っている。それは、私の理解では、創価学会が生きている、ほんものの宗教だからである。

近現代で宗教を信じている人には大雑把にいって2つの類型がある。第1は、宗教を年中儀式(慣習)の一部、あるいは個人の内面の問題ととらえる類型だ。こういう人は、宗教が政治に関与することを嫌う傾向が強い。そして、此岸(この世)よりも彼岸(あの世)を重視する。

これに対して、宗教は、人間生活の中心であり、宗教を中心に据えた価値観、世界観、人間観で行動すべきと考える人たちがいる。この類型に属する人たちは、近現代の世俗化を正面から受けとめ、此岸性を重視する。この世の中で起きる現実的問題を解決することを通じて、目に見えない超越的な世界をつかもうとする。此岸性に彼岸性を包み込んでいくのだ。キリスト教にもさまざまな潮流があるが、筆者が信じる宗教改革者カルバンの伝統を引くプロテスタンティズムはこのような宗教だ。創価学会も此岸性に彼岸性を包み込んでいく宗教だ。この点で、創価学会員の生き方に、信じている宗教は異なるにもかかわらず、私は共感を覚える。

ところで、大多数の日本人は、「自分は宗教を信じていない」と考えている。しかし、客観的に見て、それは事実でない。宗教とは、合理性で理解できる枠組みを超えて何かを信じることによって成り立つ。ロシアの宗教哲学者ニコライ・ベルジャーエフ(1874~1948年)は、宗教を信じていない人は一人もいない、無神論者や無宗教者は、無神論、無宗教という名の宗教を信じていると指摘したが、その通りと思う。

近現代人が無意識のうちに信じている宗教が3つある。

第1は拝金教だ。貨幣は商品交換、すなわち人間と人間の関係から生まれるにもかかわらず、人間は貨幣自体に価値や力があると思ってしまう。1万円札を作製するのに必要とされる原価は20円に過ぎない。それで1万円分の商品やサービスが購入できるという常識が宗教なのである(貨幣の宗教性に関心があるか方は、拙著『いま生きる「資本論」』〔新潮社、2014年〕に目を通してほしい)。

第2が出世教だ。資本主義の競争原理がそのまま人生観になってしまっている。子どもの「お受験」から始まり、出世だけを目的にして、人間としての価値を見失っている人が多いのは残念だ。

第3がナショナリズム(国家主義)だ。自らの生命を国家や民族のために捧げるというのは、世俗的に変容した宗教である。しかし、人間が国家を作ったのであり、国家が人間を作ったのではない。人間が国家や民族を崇拝するのは、まさに疎外である。

この3つの宗教は、いずれも人間が作り出したものだ。それにもかかわらずこの人造宗教に人間は振り回されている。戦争が勃発するときには、資本の利益、将軍や政治家の出世欲、ナショナリズムが例外なく機能している。これらの転倒した、禍をもたらす宗教からどのように解放されるかが、21世紀のわれわれが直面する重要な課題と思う。・・・・・・(以下略)

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol046(2014年10月8日配信)より

このテーマについて深く知るための「連読」3冊
佐藤優『地球時代の哲学 池田・トインビー対談を読み解く』潮出版社、2014年2月
松岡幹夫『平和を創る宗教 日蓮仏法と創価学会』第三文明社、2014年2月
島田裕巳『創価学会』新潮新書、2004年6月

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