「世界一住みやすい国」日本を旅した次女の変貌

2014年10月10日(金) 川口マーン惠美
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それに比べて、ドイツでは電車も町も汚い。個人宅や会社など、プライベートの空間はかぎりなく清潔だが、公共の場がひどい。特に昨今、自治体がお金を切り詰めているため、多くは人々のモラルに託されているところがあり、それが機能しない。長距離列車も、料金だけは新幹線並みだが、おおむね汚いというか、最近ますます汚くなった。ゴミ箱は座席ごとにあるが、皆がいろいろなものを突っ込むので、たいてい溢れているし、座席の上にゴミを置いたまま降りる人も後を絶たない。

マシなのは1等車だが、もちろん料金はさらに高くなるので、果たしてその金額を支払う価値があるかどうかを考えてしまう。ただ、日本人である私はそう考えるが、世界にはもっと汚い国がたくさんあるため、ドイツ人が自分たちの列車を汚いと感じているとはかぎらない。どちらかというと、とてもきれいだと思っているだろう。すべては比較の問題、上には上がある。

日本は実態の方がイメージよりも良い唯一の国

拙著『住んでみたヨーロッパ 9勝1敗で日本の勝ち』が、9月23日より店頭に並んでいる。前作『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』に続いて、さらに好戦的なタイトルになったが、どちらも私が付けたわけではない。タイトルだけは編集者を信頼して、お任せすることにしている。

ただ、好戦的であれ、何であれ、このタイトルは「日本は世界一住みやすい国である」という私の確信だけは正確に表している。日本人が当たり前だと思っていることが、他国では、いかに当たり前ではないか、日本人は、いかに快適な空間で暮らしているかということに、気づいてもらいたい。日本人が、自分たちは世界一幸せだと思っているかどうかは疑問だが、私は、日本が世界一住みやすい国であることだけは自信を持って言える。

前著では、「世界の多くの国が、イメージのほうが実態よりも良いなかで、日本は、実態の方がイメージよりも良い唯一の国」と書いた。これはもちろん、国としての広報活動が稚拙ということなので、反省すべきところだ。とはいえ、日本人は奥ゆかしいので、自分の自慢などあまり大声ではできない。ましてや、「どこに種を蒔けば、それがどのように実を付けて、いつごろ日本の役に立ってくれるかというような長期的作戦」など、まったくないのである。

新著のほうは、ドイツだけでなく、ヨーロッパのいろいろな話を書いた。30年間、ヨーロッパの真ん中のドイツという国で、定点観測をしてきたようなものなので、題材には事欠かない。思い返せば、ドイツに行った当初は、西ドイツと東ドイツが一つの国になるとは思いもよらなかった。その後、壁が崩れ、統一後のごたごたが続き、今ではドイツはEUの盟主。ドイツが、ヨーロッパを観察するに、極めてエキサイティングな場所となって久しい。

ドイツにいる利点の一つは、日本を客観的に見られることだ。日本に住んでいると全く気付かない長所と短所がつぶさに見える。最近は特に、ドイツの報道の反日性が目に付くのに、なぜか日本人は、「ドイツ人と日本人は気が合う」と思い込んでいるのが気になる。実態は、日本の片思いだ。

そもそも、日本と関係のあるドイツ人たちは、日本を正確に把握しているが、一般の人々はかなり偏った日本像を植え付けられている。早急に誤解を取り除く努力をしないと、誤ったイメージが定着してしまう。アジアを侵略した残酷な国民だとか、真珠湾を奇襲した卑怯な国といった局面だけが強調されるようなドキュメンタリー番組が、事あるごとに茶の間に流されているのは、大変遺憾だ。日本からの、積極的な情報発信が必要だと思う。

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