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[野球]
上田哲之「常識の罠――広島カープとヤンキースの試合から」

2014年10月08日(水) スポーツコミュニケーションズ

 確かにセ・リーグもパ・リーグも、ペナントレースの最後の最後まで面白い展開だった。パ・リーグは福岡ソフトバンクが今季最終戦でオリックスをくだして優勝を飾った。ソフトバンク対オリックスは、正真正銘のペナント争いだったが、セ・リーグの広島、阪神は、2位争いである。クライマックスシリーズ・ファーストステージをどちらが本拠地で開催できるか、という争いだ。それも広島が5日の最終戦に勝つか引き分ければ広島、負ければ阪神が甲子園で開催できる、というところまでもつれた。現行のクライマックスシリーズという制度ならではの盛り上がりである。ただねぇ、結果的にそうなったのであって、今のプレーオフのシステムがベストだとは、とうてい思えないのだが。

 それはさておき、いまだにひっかかっている試合がある。9月27日の中日-広島である。ちなみに、広島は10月1日の阪神との直接対決で2-4と負けたため、5日の最終戦に運命を託すことになった。逆に言えば、ペナントレースのどこかであと1勝できていれば、ぐっと楽に2位を確定できていたはずなのである。

 9月27日の中日戦はエース前田健太が先発。絶好調には見えなかったけれども、それでも8回を7安打10奪三振、2失点の好投。8回表を無失点に抑えて3-2と1点リードを保ったところで、8回裏に代打を送られ降板した。ひっかかるのはここだ。当然、9回表はクローザーのキャム・ミコライオなのだが、正直いって、この1点は守れないだろうと覚悟した。「同点にはなるな。下手すりゃ逆転だな」。ここ数試合のミコライオの出来を見れば、この予想は決して奇抜ではない。むしろ、穏当というべきだ。今のミコライオが9回の1点差を逃げ切れるとしたら、それは運のいい日だけである。

 現実は想像以上に悲惨であった。ミコライオはまったくコントロールが定まらず、2連続四球に、高橋周平の同点二塁打を浴び、一死もとれずに降板。急遽、リリーフに立った中崎翔太も1失点して逆転を許す。広島は9回裏、根性で1点とって追いついたが、さらに10回表に2点失って勝負あり。マエケンに9回続投という選択肢はなかったのだろうか。

 かつての大エースで20勝も経験のあるような投手出身評論家の方々は、よくペナントレースの前半戦でも、9回完投して勝つのが真のエースだ、とおっしゃる。マエケンは、この「古い」考え方には与しないエースである。だからシーズンを通して、基本的には8回、100球を過ぎたあたりで降板する。個人的には、むしろこの考え方を支持する。別に、アメリカかぶれなわけではありませんよ。1シーズン通してローテーションを守るのが、まずは最低限のエースの務めだからだ。春から130球投げて9回完投を繰り返していたら、とうてい秋までもたないだろう。仮に1シーズンはもったとしても、投手生命は確実に短くなる(現ニューヨーク・メッツ松坂大輔の全盛期がなぜ短くなったのか、と考えてみてもいい。西武時代に130球以上投げた完投があまりに多かったのも一因、というのが私見です)。

 だけど、27日はどうなのだろう。ミコライオの調子が万全ならばいい。たとえば、全盛期の岩瀬仁紀(中日)や佐々木主浩のような状態ならば。しかし、今は誰が見ても不安定な状態にある。この1勝さえ確実にとっておけば、ほぼ2位は見えてくる。8回まで118球。次の登板は、10月5日の巨人戦と考えるのが順当だろうから、中7日ある。1年間でもし無理をするなら、ここしかないという条件だったのではないか。もちろん、9回も投げれば130球を越えただろうし、1、2点取られてしまったかもしれない。しかし、それでもベンチが選択すべき戦略は、続投だったのではあるまいか。

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