研究者に憧れた私が、ケンブリッジ大学の博士課程で学んだ理由
Road to Oxbridge オックスブリッジにあこがれて~博士編~

「Road To Oxbridgeオックスブリッジに憧れて」シリーズでは、全4回(学士・修士・MBA・博士)に渡り、オックスブリッジを目指したキッカケから実際の入学後の話を、一人の実体験をもとに探求していきます。第4回目である今回は、博士編をお届けします。

同じ研究プロジェクトメンバーと研究室にて
越智崇(おちたかし)
1981年兵庫県神戸市生まれ。兵庫県立神戸高等学校、慶應大学理工学部物理学科、慶應大学基礎理工学専攻修士課程、ケンブリッジ大学生化学部PhDコース修了。ケンブリッジ大学生化学部ポスドクをし、DNA二重鎖切断の修復メカニズムについて研究を行っている。

ケンブリッジとの出会い

今考えると、高校で理系、物理を選択した私にとって、"ニュートン力学"こそがケンブリッジ大学との繋がりを感じる最初のきっかけだったもと言える。高校二年生の冬、放物線とエネルギー保存則が繋がったときにその面白さを知った。いや、もっと遡って、子どもの頃に読んだニュートンの伝記で、リンゴが落下するという万有引力の法則に触れたときだったかもしれない。

私がケンブリッジを初めて訪れたのは大学三年生の8月。私が所属していた大学のサマースクールがケンブリッジ大学のダウニングカレッジで行われたのだ。英語をそこまで話す機会こそなかったが、一ヵ月間ケンブリッジの中心部で生活し、十分に街の雰囲気を味わうことができた。そこを離れるとき、もう一度ここへ研究者として戻ってきたいと強く思ったことを覚えている。

今思うと、そのときの唯一の誤算は2003年8月のイギリスの天気が異常であったことである。あんなに太陽を見ることができ、暖かい8月をイギリスに来て7年、一度も過ごしたことがない。カーテンを開ければどんよりと曇りで、雨がふれば傘もささず、マウンテンパーカーを着て自転車にまたがる。夏の時期に太陽が照れば半袖で出かけるが、上着を必ず鞄に入れておく。そんな日常が待っていようとは当時は想像していなかった。

ケンブリッジ大学の博士課程に進んだ理由

そのサマースクール以降、ケンブリッジへの憧れこそ強かったものの、ケンブリッジ大学の進学を考えていたわけではなかった。実際にケンブリッジ大学の博士課程に進学するきっかけとなったのは、今の恩師であるTom Blundell卿に日本の学会で直接会ったことである。Blundell先生はタンパク質X線結晶構造解析をするものなら少なくとも一度は聞いたことがあるその分野の先駆者である。タンパク質X線結晶構造解析はケンブリッジ大学が発祥の地であり、有名なDNA二重螺旋構造の発見もそのテクニックによるものである。

Homerton CollegeでのSupervisor dinnerにてBlundell先生と

ちなみに、Blundell先生は高校物理でも習うブラッグの法則で有名なWilliam Laurence Bragg卿直属の弟子(John Bernal)の弟子(Dorothy Hodgkin)の弟子なので、私はBragg卿の弟子の弟子の弟子の弟子にあたる。私は修士でその学問を専門とする研究室に行ったため、Blundell先生の名前は知っていた。当時の私はタンパク質をどのようにすればより副作用の少ない薬を効率よく開発できるかに興味があった。Blundell先生は学会の講演の中で、X線結晶構造解析応用した創薬手段を説明し、その話に共感した私は先生の研究室で博士課程を行いたいと思った。たまたまBlundell先生がケンブリッジ大学に所属していたため、そこに行くことになったが、先生が違う場所にいればそこに行っていただろう。