雑誌 企業・経営
アスリートの気持ちを理解するには私自身もストイックに運動をしないといけない。そう考え、いまはトライアスロンを楽しんでいます。
エアウィーヴホールディングス 高岡本州

高反発マットレスパッド『エアウィーヴ』。「睡眠の質が高まる」とアスリートなどから認められ、テニスの錦織圭選手、フィギュアスケートの浅田真央選手などが愛用、人気に火がついた商品だ。エアウィーヴ ホールディングスの高岡本州社長(54歳)は元々、配電機器メーカーの経営者。伯父から機械の製造業を任されたことをきっかけに商品を開発したという。


たかおか・もとくに/'60年、愛知県生まれ。'83年に名古屋大学工学部を卒業し、'85年に慶應義塾大学大学院経営管理研究科を修了、同年、日本高圧電気へ入社。その後、'87年にスタンフォード大学大学院への留学などを経て、'98年、37歳のとき日本高圧電気の社長に就任し、'04年、中部化学機械製作所(現エアウィーヴ)社長へ就任 ※エアウィーヴのwebサイトはこちら

技術を活かす

伯父の会社を継いだ当初は、樹脂を成形し、ベッドのクッションや植木の下に敷く緩衝材を販売するBtoBの企業でした。自社で「エアウィーヴ」を開発したきっかけは、その技術を活かしたかったからです。我々は用途に応じて(マットの)最適な反発特性を実現する技術を持っていましたが、取引先からの要望は「特になし」。BtoBでは、技術はあっても、活用する場がなかったのです。

たとえば米国のアップル社は、世界中の企業の技術を結集し価値ある商品をデザインしていますが、既存のマットレス業界にこのような考え方はなかったから、新商品の開発に挑戦したのです。

目標

好きな言葉は「唯一無二」です。私は他人や他社と比較し「売り上げ1000億円を目指す!」などとは考えません。弊社が目指すものは、例えて言うと「世界の一流アスリートが試合の前日、使いたくなるようなマットレスパッド」です。売り上げでなく、自分たちにしかできない目標を立て、自分自身でゴールを設定しなければ、新しく価値あるものは創れません。

錦織選手 錦織選手は腰の持病があったが、調子がよくなったらしく、以来、同社のマットレスパッドを愛用し「海外に行くときも手放さない」とか

継承

出身は愛知県です。私が社長を兼ねている日本高圧電気は父が起業しました。大学卒業時、銀行系シンクタンクへ就職が決まっていたのですが、父が卒業寸前に会いに来て、喫茶店で、俯きながら「やめろ、やめろ(就職するのはやめ、会社を継いでほしい)」と言うのです。私もただ「わかった」と答えました。

のちに父の側近から『国が大きかろうが小さかろうが大名の子は大名だ』と言われ、納得しました。小さい企業でも社員がおり、地域で果たすべき役割がある。誰かが引き継がなければならないのです。思えば祖母もよく「あなたの祖父が会社をつぶしたときは、家族も社員も大変で」と私に語って聞かせてくれたものです。だから、私はいまも、経営とは「会社を永続させること」と思っています。

圧倒的

今でも覚えている失敗は、商品のよさにおぼれたことです。開発時に試作したマットレスパッドをモニターさんに渡すと「すっきり起きることができた」などと評価が高い。これが売れないわけがないと広告を打ち、コールセンターまで用意しました。ところが、電話は一日一件も鳴らず、全く売れませんでした。

のちに知人から「ポルシェ、フェラーリなどブランド力のある自動車は、皆さん試乗せずに買うよ」と言われました。マットレスパッドは、試さなければよさがわからない。しかし、全員に試していただくわけにはいきません。だから、試さなくてもよい圧倒的なブランド力を手に入れなければならなかったのです。