ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝を描いた『マッサン』は、
ビジネスマンにも届くNHK朝ドラの決定版

NHK「マッサン」公式ページより

60代以上の方にとって一番印象深い国内での五輪というと、1964年の東京五輪だろうが、50代は72年の札幌冬季五輪に違いない。40代以下は98年の長野冬季五輪だろう。

札幌冬季五輪のとき、今の50代は8歳から17歳。もっとも多感な時期に、70m級ジャンプにおける日本選手勢の大活躍を目の当たりにした。国旗掲揚台のポールに3棹の日の丸が揚がってゆく歴史的光景を見た。街にはトワ・エ・モワの「虹と雪のバラード」が流れていた。

当時は高度経済成長期。数値的なデータなど関係なく、成長期のピークもあのころだった気がする。大半の人は胸に希望を抱き、「頑張れば、明日は今日より、きっと良くなる」と信じていた。そんな成長期下独特の思想を、身をもって実現させたのが、笠谷幸生氏である。不断の努力の末、体格や競技の歴史で格上の海外勢を打ち破り、70m級ジャンプで金メダルを得た。冬季五輪における日本人初の栄冠だった。

傑出した日本人だった笠谷氏は北海道立余市高校(統合により、現在は余市紅志高)から明大に入り、卒業後は余市に蒸溜所を置くニッカウヰスキーに入社。その5年後の五輪にもニッカ社員として出場した。笠谷氏を支え続けたのは同社の創業者・竹鶴政孝である。彼もまた秀出した日本人で、ドラマチックな人生を送っている。

仲睦まじく微笑ましい主演2人の演技

その竹鶴をモデルにした人物を主人公にして、連続テレビ小説を作ったのだから、面白くないはずがない。NHKの朝ドラの新作『マッサン』が好評である。9月29日の初回視聴率は21.8%。その後も失速する気配がない。

制作は「BK」こと大阪放送局。お膝元である関西地区での視聴率は19.8%で、過去10年の朝ドラの中で最高だ。序盤の舞台である広島地区では、それを超える25.8%。絶好の滑り出しである。

竹鶴をモデルにした主人公・亀山政春に、玉山鉄二(34)が扮している。政春は誠実でエネルギッシュな男で、玉山にはハマリ役だ。玉山は眉目秀麗ながら、三枚目的な役柄も巧みにこなす器用な役者だが、大河ドラマ『八重の桜』における会津藩士・山川浩役が評判高かったように、誠実で力強い男のほうが似合う。

竹鶴は1918年、ウィスキーづくりを学ぶため、スコットランドに留学する。2年後に帰国するときには、青い瞳の妻を伴っていた。名前はジェシー・ロバータ・カウン。通称・リタ。竹鶴が有機化学などを学んだ名門・グラスゴー大学の学友の姉だ。この筋書きを『マッサン』も踏襲している。

ドラマではリタの名前がエリーに。演じているのはアメリカ人女優のシャーロット・ケイト・フォックス(29)。日本の映像作品に登場するのは初めての人だが、不思議なくらい朝ドラの画面に溶け込んでいて、違和感はない。実生活では既婚者らしいが、初々しく、新妻役がハマっている。

劇中、エリーは政春のことを"マッサン"と呼ぶ。リタも政孝をそう呼んでいた。政春とエリーはいつも仲睦まじく、朝から思わず微笑んでしまう。