官々愕々 御嶽山と「地震・火山ムラ」
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御嶽山の水蒸気噴火で多くの死傷者が出た。気象庁は、今回は明確な前兆が観測されておらず予知は困難であったというが、その言葉を鵜呑みにしていては重要な教訓を得る機会を逃してしまう。注目すべき事実を並べてみよう。

まず、山頂に一番近い長野県の地震計が1年以上壊れたまま放置されていたと聞いて驚いた。しかし、もっと驚いたのは、東海大学地震予知研究センター長の長尾年恭教授の指摘だ。9月中旬に山頂付近で火山性の地震がかなりの数観測されていたことは報道されているが、実はそのような現象は非常に珍しく、少なくともその時点で登山者などには周知徹底しておくべきだったというのだ。この情報は火山学者の間で共有されていたが、一般の登山者には知らされなかった。

また、気象庁によれば噴火の10分ほど前から火山性微動が続いていたのだが、これも山小屋などには伝えられていなかった。これらの事実に対して以下の疑問が湧く。

9月中旬に異常が見られた時に、何故周知徹底しなかったのか。御嶽山の観光サイトに関係機関のデータをリアルタイムでリンクして一般の登山者に提供することなど簡単なことだ。さらに言えば、火山性微動が増加した時点で、緊急地震速報のように「緊急噴火情報」を山頂付近の登山客に届ける仕組みなども全国で整備しようと思えば技術的には十分可能だ。

それを阻んだ理由としては、噴火情報を流すと登山客が減少して地元経済に悪影響があるという経済優先の考え方が、挙げられる。

しかし、そこには、より歪んだ原因がある。

その第一は、噴火や地震の予知対策がハード偏重になっている点だ。全国に110の活火山があり、特に観測監視体制を強化しているものだけでも47もある。御嶽山はその一つに過ぎないが、その山頂付近だけで12の地震計が設置されている。他方、気象庁には気象の専門家はいても、火山の専門家は非常に少ない。今回のような異常データが入ったとしても、十分な分析をしている余裕も能力もないのだ。もし十分な数の火山の専門家がいれば、少なくとも、異常な地震があった事実は周知徹底していたはずだ。観測機器ばかり増やして、データ解析などの人員と維持管理経費は十分に増やさなかったことが命取りになった。

そこには、政治家の都合と官僚と学者の利権がある。

計測機器を増やすことは、災害対策のアリバイ作りとしてわかりやすく、政治家には都合が良い。一方、「地震・火山ムラ」の官僚や学者は、計測機器メーカーと癒着している。官僚は天下り先確保のため、学者も研究費の寄付や学生の就職などのために、メーカーからの機器購入を優先する。

さらに、もう一つ原因がある。それは縦割り行政だ。前述した12の地震計は、気象庁、長野・岐阜両県、名古屋大、防災科学技術研究所などが設置したものだ。これらを一つの機関に集約し、専門家も集めることができれば、国土交通省、文部科学省、総務省などの予算が一本化され、効率化されるし、責任体制も明確になるはずだ。しかし、予算と権限の縮小に反対する官僚の抵抗でそんなことはできない。その結果、「機器の故障は放置、データ利用はバラバラ、市民に重要な情報が伝わらない」という現状を生み出した。

今回の災害で命を落とした方々に報いるためにも、「地震・火山ムラ」のハード予算獲得運動を拒絶し、ソフト面の予算を充実させるとともに、地震・噴火の予知と情報提供に一元的に責任を持つ機関を作る。そんな抜本策を目指すべきだ。

『週刊現代』2014年10月18日号より

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