読書人の雑誌『本』
「自殺したら、『負け組』として片づけられるのが悔しい」伝説の編集者が自殺をテーマに描いた異色エッセイ 講談社エッセイ賞受賞!

第30回 講談社エッセイ賞受賞

末井昭・著 『自殺』
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世の中、自殺について醒めているような気がします。おおかたの人は自分とは関係ない話だと思ってるんでしょう。もしくは自殺の話題なんか、縁起悪いし、嫌だと目を背けてる。
結局ね、自殺する人のこと、競争社会の「負け組」として片づけてるんですよ。
死者を心から悼んで、見て見ぬふりをしないで欲しいと思います。
どうしても死にたいと思う人は、まじめで優しい人たちなんです。
(「まえがき」より)

* * *

――〔編集担当・鈴木〕末井さんにお手紙して初めてお会いしたのは、2010年3月でした。お互い人見知りで私が話下手なので、末井さんの目線はずっと下で・・・・・・。

末井 変なのが来たというのが手紙を読んだ時の第一印象ですね。

――あれ? 真面目な手紙でしたよね。

末井 真面目だからこそ、変なものが来ちゃったなって・・・・・・。まったくイメージできなかったんです、自殺の本っていうものが。編集者として考えても、そんな無謀なことをなぜやるのかって。

――でも末井さんが自殺について話した朝日新聞のインタビュー(2009年10月8日、聞き手・秋山惣一郎氏)は反響ありましたよね。

末井 「私のように、この文章で救われる人がいるかもしれない」ってブログで紹介してくれる人もいたんですけど、あの記事で人が救われるとか、まったく思わなかったですね。母親がダイナマイト心中している話と、自殺者のことを見て見ぬふりしないでほしいと言ってるだけで、メッセージ性がないと思ったんです。あやふやなものだから、人が読んでもぴんとこないんじゃないかって。

――記事を読んだ編集長〔赤井茂樹氏〕が、「絶対向いてるから、やれば」と言ってきたんです。私も、末井さんの自殺の本なら作りたいと思いました。「自殺する人のことを競争社会の『負け組』として片づけている」という言葉が自分に突き刺さってくるようで。

末井 今の競争社会というものがどれだけ人を歪ませているか、そこからこぼれ落ちる人のほうがまともじゃないかと思っていたんです。それで自殺したら、「負け組」として片づけられるのが悔しいんですね。

――それから時々お会いするようになって、八ヵ月後も「僕に自殺の本を書く資格はない」と。でも最初から「死ぬのがバカバカしくなる本がいい」とはおっしゃっていましたね。

末井 笑ってもらえれば本望、というのが何を書く時でもあるんですけど、自殺も笑ってもらえるような書き方だったらと思ったんです。じゃあ何を笑ってもらうかというと、自分のどうしようもない部分を書くしかないんですよ。「人間として最低だ」という声も読者からたまにありますが、そんな人間でものうのうと生きていると思ってもらえれば、死ぬのがバカバカしくなる人もいるかなと。

東日本大震災が最後の後押しになって書き出したのですが、震災の日のどうしようもない自分のことを書いたらわりとスラスラ書けて、ひょっとしたら続けられるかもしれないと思いました。