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消費増税の裏で財務省が動く「利権温存」

2014年10月05日(日) ドクターZ
週刊現代
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安倍政権が、政府系金融機関・政策投資銀行の完全民営化を先送りするとの報道が出始めている。これは何を意味するのか。これまでの経緯を踏まえれば、財務省の思惑が見えてくる。

かつて政策金融改革が行われたのは、小泉純一郎政権下でのこと。公的金融システムにおける資金調達と運用、つまりコインの裏表をともに改革するという中身であった。具体的には、調達部門の郵政(郵貯と簡保)を完全民営化すると同時に、運用部門の政府系金融もスリム化する。日本政策投資銀行(政投銀)と商工中金は完全民営化し、その他の各省ごとに存在していた政府系金融機関は、国際協力銀行(JBIC)を含めて日本政策金融公庫一つに統合する方針が示された。同時に、それぞれのトップは各省次官の天下り先になっていたものを民間人にすることとなった。

この改革方針を決定づけた経済財政諮問会議における小泉首相の迫力は今でも語り草だ。机を叩いて、「官僚のいいなりになるな」と、改革に後ろ向きだった谷垣禎一財務相と中川昭一経産相を叱責した。ちょうど内閣改造の時期に重なっていたので、効果は抜群だった。

しかし、民主党に政権交代すると、郵政民営化については、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の完全民営化が後退。事実上、再国有化させたばかりか、当初は'15年10月までに政府の保有株をすべて売却して完全民営化する予定だった日本政策投資銀行と商工中金についても、完全民営化を先送りした。東日本大震災があった'11年にも再度延期を決めた。

つまり、民営化先送りは今回で3度目。三度目の正直ではなく、二度あることは三度あったわけだ。しかも、自民党への政権交代後、商工中金社長に杉山秀二氏(元経済産業次官)、日本政策金融公庫総裁に細川興一氏(元財務次官)、JBIC総裁に渡辺博史氏(元財務官)が就任。天下りも復活している。

官僚、とりわけ財務省がどうしても政投銀を手放したくない理由は、ただひたすらに天下り先の確保である。財務省は、諸先輩の覚えがめでたくないと出世できない。事務次官も事務次官OBが推してくれるから事務次官になれるわけで、それら事務次官OBの関心事と言えば「どこに天下るか」。特に政投銀とJBICは、事務次官OBにとって気がかりな天下り先だった。

政投銀とJBICは特別な天下り先で、それはともに「銀行」という名前が付いていることからわかる。他の政策金融機関は「公庫」などの名前だが、公的機関で「銀行」とは日本銀行と並んで格が高い。実際、政投銀とJBICには事務次官OBの中でも切れ者といわれる人が天下ってきた。小泉政権下で、政投銀の完全民営化とJBICの統合が決定されると、「戦艦大和と武蔵を同時に失った」といわれたほどである。

そこで、財務省はまずは民主党政権下で、一つになっていた日本政策金融公庫からJBICを分離させるのに成功。そしていま、政投銀の完全民営化の撤回さえできれば、小泉時代の悪夢から復権できるという思いがあるというわけだ。

もちろん、こんな天下り機関がなくても、政策融資は、今の天下り先に投入している公的支援を民間金融機関に与えればできる。その方が民業圧迫にもならない。ただし、官僚は、自分たちの天下り先確保のためには政府方針も簡単に葬り去る。そして、国民の生活を守るための「消費増税の見送り」は頑としてやらない。こうした身勝手な人々をのさばらせてはいけない。

『週刊現代』2014年10月11日号より

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