FOOTBALL STANDARD

二宮寿朗「大学サッカー組が輝く理由」

2014年10月01日(水) 二宮 寿朗

 9月のベネズエラ戦でアギーレジャパンのチーム初ゴールをマークしてブレイク中のFW武藤嘉紀は現役の“慶応ボーイ”だ。所属するFC東京ではDF長友佑都(現インテル)以来、ルーキーでは6年ぶりとなる開幕先発を果たし、第26節終了時点までリーグ3位の11得点を叩き出している。

 彼は大学2年まで慶応大学ソッカー部で活躍してきた。元々、FC東京の下部組織を歩み、ユースからトップチームに昇格できる選択肢があるなかで、あえて大学進学の道に進んだ。3年時に退部して2014年、今季FC東京に加入している。プロでプレーしながら学業にも励み、来春の卒業を目指しているという。文武両道、そしてイケメンの好青年。今、最も注目を集めている日本サッカー界の新たなスター候補だ。

Jクラブより多い実戦機会

 つい最近まで大学卒または大学出身のサッカー選手は、どちらかと言うと「非エリート」の印象が拭えなかった。大学サッカーは、Jクラブのユースからトップに昇格できない、また、高校からプロの世界に進めない選手たちが集う場所だという見方が強かったように思う。しかし、今やJリーグの「大卒、大学出身者」は主流であり、大学時代に力をつけてプロの世界に飛び込んでくる流れが一般化している。武藤のようにトップチーム昇格より進学の道を選択する選手も出てきているとなれば、「非エリート」のイメージもなくなってくる。

 9月のウルグアイ、ベネズエラ戦で日本代表初招集となったサンフレッチェ広島のFW皆川佑介は中大卒、サガン鳥栖のDF坂井達弥は鹿屋体育大卒である。代表初招集5人中3人が「大学組」だった。

 廻り道ではなく、プロで通用するための近道。
 大学に進む大きな利点は何よりも、数多く実戦経験を積めることだろう。関東、関西など地域の大学リーグ戦に加えて、総理大臣杯やインカレ、天皇杯、各地域の選抜、全日本大学選抜……と公式戦に明け暮れることができる。“一軍”でなくとも、インディペンデンスリーグ(Iリーグ)もある。3年前、関東大学リーグ1部の強豪校・流通経済大学を取材した際、200人の部員が6チームに分かれ、合計で年300試合をこなしていると聞いた。

 一方、今のJリーグはサテライトリーグが09年限りで廃止されて以降、トップチームの試合に出られない選手たちの実戦機会数が絶対的に足りていない。その問題を解消するために、関西ではガンバ大阪、セレッソ大阪、ヴィッセル神戸、京都サンガF.C.、関西学生選抜の参加する「関西ステップアップリーグ」が創設されるなど、地域やクラブの工夫を見ることはできる。J1のクラブであれば、出場数を増やすためにJ2のクラブにレンタル移籍させることもよくある話だ。ただいずれにせよ、根本的な解決策になっているとは言い難い。

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