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「普通のサラリーマン」だった私は、定年からたった10年で破産した

16人に1人が直面する老後破産
週刊現代 プロフィール

「孫に『おじいちゃん!ファミレスに連れて行って』とせがまれても、『いいよ』とはなかなか言えない。貴重な生活費が何日分か飛んでしまいますからね。『外食は身体によくないからね』と適当な言い訳をして、なるべく断っています。本当に情けなくなります。これで持ち家でなかったら、さらに悲惨な状況になっていたと考えると、本当に恐ろしい……」

息子の会社が倒産して

小野さんのように持ち家が命綱になる場合もあれば、逆に持ち家が大きな足かせになる場合もある。

都内に土地と家をもっていた大木ハルさん(仮名/85歳)は、介護が必要な上、持病の心臓病の不安もあり、40代の息子夫婦と同居することに決めて、千葉の高級住宅地に2世帯住宅を購入した。息子と大木さんの二人の名義で住宅ローンを組み、子どもに見守られながら老後を過ごすはずだった。だが、これが破産への引き金となった。

 

大木さん一家の相談を受けた、ケアマネージャーオフィス「ぽけっと」代表の上田浩美氏が語る。

「毎月20万円のローンを組んだのですが、息子さんの勤めている会社が不況のあおりを受け倒産するという不運に見舞われたんです。大木さんの預貯金をローンの返済に充てたのですが、おかげで老後のために取っておいたおカネはゼロに。それでも足りずに、お嫁さんも働きに出ています。

大木さんはひと月10万円近くかかる介護サービスを受けています。心臓病だけでなく、認知症もあるので、もっとサービスも必要なのですが、家計の都合もあって、満足に受けられない。生活保護を受けてもいいくらいの水準です」

意外に知られていないことだが、住宅ローンがあると生活保護を受けることができない。というのも、その状態で生活保護を受けると税金で個人の資産を形成していることになってしまうからだ。上田氏が続ける。

「生活保護を受けるために世帯分離という方法もあるのですが、この歳で家族と離れて暮らすのも厳しいでしょうし、ご本人も『お上の世話にはならない』と言っています。大木さんのようにプライドがあって『施しは受けない』『世間様に申し訳が立たない』という人は多いですね」

前述の香川さんたちのように、誰にも頼れず、自らカネに困っていることを声に出せない人だけではない。大木さんのように、家族と同居していてさえ、破産の危険と無縁というわけにはいかないのだ。

大木さんは別れ際、大きなため息をつきながら次のように答えた。

「こんなに長生きするなんて思ってもみなかった。もっと早くコロリと逝くはずだったのに。85歳にもなって、こんなに苦労する目に遭うなんて……」

これが、老後破産に陥った多くの人の本音だろう。超高齢社会が生んだ厳しい現実は、あなたのすぐそばにまで迫っている。

第2部【破産する人・しない人の分かれ目】はこちら

「週刊現代」2014年10月11日号より